理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-KS-11-3
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口述演題
脳出血モデルラットにおけるトレッドミル走行の実施時期の違いが運動機能回復および組織傷害に与える影響
玉越 敬悟石田 和人高松 泰行中川 弘毅早尾 啓志田巻 弘之
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抄録

【はじめに】

脳卒中後の早期リハビリテーションは,臨床研究や基礎研究で有効性が示されており,多くの医療機関で積極的に実施されている。しかし,動物実験を用いた基礎研究の中には,脳卒中後の早期リハビリテーションが傷害領域を増悪させることが報告されており,一定の見解が得られているとは言えない。本研究は,脳出血モデルラットにおけるトレッドミル走行の実施時期の違いが運動機能回復および組織傷害に与える影響について比較検証することを目的とした。

【方法】

実験動物にはWistar系雄性ラットを用いた。対象を無作為に偽手術群(SHAM群:n=6),脳出血+非運動群(ICH+Cont群:n=6),脳出血+早期トレッドミル群(ICH+ET群:n=7),脳出血+後期トレッドミル群(ICH+LT群:n=7)の4群に分けた。脳出血モデルは,左方3.0mm,前方0.5mm,深度4.0mmの位置にカニューレを挿入し,コラゲナーゼ・Type IV(200 U/ml,1.2 ul)を一定流速で注入して作製した。トレッドミル走行条件は,11m/minの速度で60分間とし,ICH+ET群は術後2日目から8日目まで,ICH+LT群は術後9日目から15日目まで実施した。運動機能評価にはForelimb placing testとHorizontal ladder testを用いた。Horizontal ladder testでは,麻痺側前後肢のCorrect率とError率を解析した。各評価を術前,術後1日目,8日目,15日目に行った。脳出血後16日目に脳組織を採取し,凍結切片を作製後,ニッスル染色を行った。出血による組織傷害の軽減効果を検証するために損傷体積を解析した。さらに,大脳皮質萎縮の抑制効果について検証するために大脳皮質感覚運動野における皮質全体と第V層の厚さを解析した。

【結果】

Forelimb placing testによる運動機能評価では,ICH+ET群はICH+Cont群とICH+LT群より有意な改善を示した。Horizontal ladder testにおいて,ICH+ET群のError率がICH+Cont群より有意に低値を示した。また,ICH+Cont群とICH+LT群のError率は,SHAM群より有意に高値を示した。損傷体積は,ICH+Cont群,ICH+ET群,ICH+LT群の間に有意差はなかった。大脳皮質における全層および第V層の厚さの解析で,ICH+ET群はICH+Cont群およびICH+LT群と比較して有意に高値を示した。

【結論】

本研究から,脳出血後の早期トレッドミル走行は後期トレッドミル走行より大脳皮質の萎縮を抑制する効果があり,運動機能回復を促進させることが分かった。

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© 2017 日本理学療法士協会
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