理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-KS-17-5
会議情報

口述演題
無血清培地を使用したヒト頭蓋骨由来間葉系幹細胞の樹立および培養方法の検討
猪村 剛史中川 慧大塚 貴志Looniva Shresta品川 勝弘城戸 皓輝河原 裕美長谷川 森一高橋 信也末田 泰二郎栗栖 薫弓削 類
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】

中枢神経疾患に対する再生医療への期待が膨らんでおり,そのなかで,移植に用いられる細胞の有力な候補として間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells:MSCs)が知られている。MSCsは,由来する組織によって分化能や増殖能が異なることが報告されている。我々は,神経系疾患に対する細胞治療の新たな細胞ソースとして,神経堤由来のヒト頭蓋骨から間葉系幹細胞(cranial bone marrow derived MSCs:cMSCs)の樹立に成功し,その神経分化特性について報告してきた。従来の培養方法では,動物由来成分である血清を使用するのが一般的であり,これまでに樹立したcMSCsにおいてもウシ胎仔由来の血清を使用した培養を行ってきた。しかし,臨床応用を考慮するとアニマルフリー状態での培養が強く望まれる。そこで本研究では,cMSCsの臨床応用を見据え,有血清のみでなく無血清培地でのcMSCsの樹立を試み,樹立された細胞の特性について解析することを目的とした。

【方法】

cMSCsの樹立は,脳神経外科手術時に得られる頭蓋骨片を有血清もしくは無血清培地で培養容器に播種することで行った。各条件で樹立されたcMSCsの多分化能評価として,骨・脂肪・神経細胞への分化誘導を行った。骨・脂肪分化では,cMSCsをコンフルエントまで培養した後に,骨分化誘導培地または脂肪分化誘導培地に交換することで分化誘導を行った。神経分化は,70%コンフルエントの時点で,神経分化誘導培地に交換し分化誘導を行った。分化後の解析には,位相差顕微鏡を用いた形態学的解析に加えて,アリザリンレッドS染色,オイルレッドO染色,Neurofilamentの免疫染色を行った。また,細胞の連続継代を実施し,各条件で樹立された細胞の増殖能を評価した。

【結果】

有血清培地または無血清培地で培養容器に播種した結果,播種7~10日後付近で接着細胞が出現し,継代培養を経て細胞の樹立が可能であった。分化誘導を行った結果,両条件で樹立された細胞ともに,骨芽細胞・脂肪細胞様の形態となり,アリザリンレッドS染色・オイルレッドO染色にて陽性細胞が観察された。神経分化においても,両条件ともにNeurofilament陽性の細胞が確認された。連続継代の結果,両条件ともに増殖能が確認された。

【結論】

本研究の結果,血清を用いない培養条件であっても,有血清培養と同様にcMSCsの樹立・培養が可能であることが示された。今後は,臨床応用に向け,無血清で培養したcMSCsの神経疾患に対する移植効果についても検討する必要がある。さらに,MSCs移植後に理学療法を実施することで機能回復に与える影響について検討し,神経再生医療分野における理学療法の効果およびその作用機序についても検討したい。

著者関連情報
© 2017 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top