理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-06-3
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経頭蓋陰極直流電流刺激後の末梢神経電気刺激が皮質脊髄路の興奮性に与える影響
立木 翔太佐々木 亮樹中川 昌樹宮口 翔太小島 翔齊藤 慧犬飼 康人正木 光裕大鶴 直史大西 秀明
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抄録

【はじめに,目的】

経頭蓋直流電流刺激(tDCS)は,大脳皮質の興奮性を変調させることが可能な非侵襲的脳刺激法の一つである(Nitsche, et al., 2000)。また,末梢神経電気刺激も皮質の興奮性を変化させることが可能である。Ziemannら(2004)は,皮質の興奮性が低下している際には,その後に皮質の興奮性が高まりやすい状態となることを報告している。そのため我々は,皮質興奮性を低下させる陰極tDCSを行った後に,皮質興奮性を高めるPESを行うことで,皮質脊髄路の興奮性がより増大するのではないかと考えた。そこで,本研究では陰極tDCS後のPESが皮質脊髄路興奮性に与える影響について明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は健常成人8名であった。皮質脊髄路の興奮性評価には,経頭蓋磁気刺激によって誘発される運動誘発電位(MEP)を使用した。刺激部位は左一次運動野(M1)手指領域とし,右第一背側骨間筋からMEPを導出した。磁気刺激の強度は,介入前に約1 mVのMEP振幅値を導出する強度とした。MEPは介入前の2区間(pre1,pre2)と,介入終了直後から20分後まで5分毎に各15回計測した(post0,post5,post10,post15,post20)。介入は陰極tDCS(c-tDCS)のみの条件,PESのみの条件,c-tDCS終了直後にPES(c-tDCS+PES)を行う条件の合計3条件を設定した。c-tDCSは左M1に陰極電極,右眼窩上に陽極電極を貼付し,1 mAで10分間実施した。PESは右尺骨神経に対して刺激頻度を30 Hz,強度を110%運動閾値,4秒on 6秒offのduty cycleで実施した。解析対象は,MEP振幅値とし,各区間で得られたMEP振幅の加算平均値を算出し,pre1を基準としてMEP ratioを求めた。統計解析には,反復測定二元配置分散分析を用い,事後検定にはFisher's LSD法を用いた。有意水準は5%とした。

【結果】

MEP ratioにおいて,時間の主効果(F=2.99,p=0.02)と交互作用(F=2.25,p=0.02が認められた。c-tDCS条件ではpre(104.7±7.8%)と比較してpost0(50.4±0.11%),post5(76.2±13.6%)でMEPの有意な低下を認めた。また,PES条件ではpre(90.6±6.2%)と比較しpost5(122.7±16.0%),post10(131.3±20.9%),post15(122.6±11.6%)でMEPの有意な増大を認めた。一方,c-tDCS+PES条件では,MEPの有意な変化を認めなかった。

【結論】

陰極tDCS直後のPES介入は,皮質脊髄路の興奮性を増大させないことが明らかになった。

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© 2017 日本理学療法士協会
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