理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-20-1
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非荷重位での股関節外旋・内旋角度と荷重位での骨盤傾斜角の関係性
福田 政輝梅野 瑞季石崎 仁弥松岡 健
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抄録

【はじめに,目的】

石井らによると,骨盤と下肢との間で3軸運動が組み合わさった規則性のある運動が波及する背景には,下肢の回旋運動が深く関わっているとされている。荷重位において骨盤から下肢へ波及する下行性運動連鎖では,骨盤が後傾すると伸展・外転に加え,骨頭は臼蓋の関節面に押し出されるように前方へ変位し,大腿骨頚部のレバーアームが大腿を外旋させる。このように下行性運動連鎖は骨盤から足部に向かって生じる運動連鎖を指している。同様に非荷重位においても運動連鎖が多数報告されており,臨床上,股関節機能を用いた骨盤帯の評価が応用されている。そこで今回,非荷重位での股関節機能と荷重位の骨盤傾斜角の関係について検証した。

【方法】

対象は上下肢・体幹機能・脚長差に問題のない男女30名(男性15名,女性15名:身長164.04±9.95cm,体重57.393±13.3kg,年齢24.867±2.33歳)を対象とした。股関節外内旋角度の測定は,日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会の定めた関節可動域測定法を用い,股関節外内旋を自動・他動運動で左右測定を行った。骨盤の前後傾にはX線での前額断での骨盤腔を利用,骨盤腔の計測には,土井口らのX線学的測定法(骨盤腔の縦径/横径=L/T)を用いた。また,骨盤傾斜角には近似式(男性=-67×L/T+55.7,女性=-69×L/T+61.6)を用いた。1つの画像につき3回ずつ測定した。検者内信頼性として,Shroutらの級内相関係数ICC(1,1)を求め,各回の検者間信頼性としてICC(2,8)をそれぞれ求めた。統計処理はSPSSを用い,左右股関節内外旋角度(自動・他動)と骨盤傾斜角の関係にPearsonの相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。結果は平均±標準偏差で表記した。

【結果】

右股関節自動内旋可動域と骨盤傾斜角に正の相関を認めた(r=0.412,p=0.024)。左股関節自動内旋可動域と骨盤傾斜角に正の相関を認めた(r=0.428,p=0.018)。左右股関節他動内旋可動域と骨盤傾斜角には相関を認めなかった。左右股関節自動・他動外旋可動域と骨盤傾斜角には相関を認めなかった。

【結論】

非荷重時での股関節外旋の自動・他動運動では,骨盤傾斜角と相関を認めなかったことより,骨盤帯への影響が少ないと考える。一方,非荷重時の股関節自動内旋と骨盤傾斜角に相関を認めたことより,股関節内旋における努力性筋収縮は,骨盤帯に影響を与えることが示唆され,さらに荷重時の骨盤傾斜角にも影響が及ぶことが示された。今回の研究では骨盤腔と骨盤傾斜角に対象に行ったが,骨盤の回旋については行っていないため,骨盤の左右差を出すためにも今後の課題となる。

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