理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-21-2
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フリーウェアによる立ち上がり動作時の下肢体幹の運動分析
山中 悠紀山本 洋之水野 智仁村上 仁之永禮 敏江石井 禎基
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抄録

【目的】近年,安価に定量的な運動分析を行う手段としてデジタルカメラと無償の画像解析ソフトウェアを組み合わせた方法が提案されている。ただ,関節角度などの時系列データを運動パターンの分析などに利用するにはデータの妥当性や適応範囲など更に検討が必要である。本研究では端座位からの立ち上がり動作を課題として画像上で選択した箇所の座標値を取得できるフリーウェアを用いて体幹および下肢関節角度を算出し,3次元動作解析装置で計測したデータとの比較からその利用可能性について考察した。

【方法】健常男性7名(年齢21.9±1.4歳)を対象として,左右の肩峰,鎖骨頭,上後腸骨棘(PSIS),上前腸骨棘(ASIS),大転子,大腿骨の内側上顆,外側上顆,内果,外果,踵骨,第2・3中足骨頭に赤外線反射マーカーを貼付し,40cm腰掛け台から立ち上がりを行わせた。対象者の右側160cm,高さ70cmの位置にデジタルカメラEX-ZR1000(CASIO社)を設置しサンプリング周波数120Hzで動作を撮影するとともに赤外線カメラ(nac Image Technology社)8台と床反力計(AMTI社)2基で構成された光学式3次元動作解析装置MAC 3D system(Motion Analysis社)を用いて200Hzで身体標点座標および床反力データを記録した。2次元動作解析(2D解析)にはフリーウェアBMP_measureを用い,40Hzに間引きした画像の肩峰,PSISとASISを結ぶ線分に大転子からの垂線が交わる点,大転子,外側上顆,外果の座標値間距離から三角関数にて矢状面での体幹傾斜,骨盤に対する胸腰部と股関節,膝関節,足関節角度を算出した。3次元動作解析(3D解析)にはEVaRT5(Motion Analysis社)を使用し,Davisの推定式と倉林らの推定値から求めた関節中心位置を用いてSkeleton Builder(Motion Analysis社)で体幹,骨盤,大腿部,下腿部,足部セグメントを設定し各セグメント間の角度を求めた。得られた時系列データは自然な3次スプライン補間で200データに正規化し,決定係数(CMD)を用いて波形の類似性を検討した。データ解析にはMicrosoft Office Excel 2007(Microsoft Japan社),Scilab 5.2.2(INRIA)を使用した。

【結果】CMDは体幹0.95±0.03,胸腰部0.77±0.23,股関節0.85±0.16,膝関節0.92±0.09,足関節0.91±0.06であった。体幹最大傾斜までの骨盤に対する胸腰部と股関節の運動比は2D解析で1:2.3°,3D解析で1:2.0°であった。

【結論】体幹傾斜,膝関節,足関節角度の時系列データに高い類似性が確認されたが,骨盤に対する胸腰部と股関節角度ではCMDが低値を示し,2D解析で胸腰部屈曲が小さく,股関節屈曲が大きくなる傾向を認めた。

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© 2017 日本理学療法士協会
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