理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-37-4
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健常高齢女性を対象とした漸増起立負荷試験における再現性の検討
長澤 祐哉中村 慶佑澤木 章二横川 吉晴大平 雅美
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抄録

【はじめに,目的】

我々はより多くの対象者に比較的容易に運動耐容能の評価が可能となることを目的に,日常動作である起立動作を用いた漸増起立運動負荷試験(ISTS)のプロトコールを作成した。さらに,ISTSは健常中高年者の運動耐容能測定法としての併存妥当性,再現性がともに高いことを確認した。しかし,高齢者に対するISTSの再現性は明らかとなっていない。そこで,本研究は健常な高齢女性を対象にISTSを実施し,得られた最高酸素摂取量(peak VO2),ISTS実施時間についての再現性を明らかにすることとした。

【方法】

65歳以上の健常女性6名を対象とした(平均年齢68.5±3.6歳)。ISTSで使用する座面高は腓骨頭上縁までの高さの120%とし,上肢でストックを使用して実施した。被験者は2回のISTS(ISTS1,ISTS2)を別日に実施した。ISTSは6回/分の起立頻度から始まり,45秒毎に2回/分ずつ漸増し,最大12分で終了するプロコールとし,起立頻度はメトロノーム発信音で調整した。酸素摂取量,心拍数は連続的に測定し,血圧,自覚的運動強度と下肢疲労感のボルグスケールは運動負荷直後に測定した。運動負荷試験は一般的な運動負荷試験の中止基準に該当した場合,90%予測最大心拍数に到達した場合,あるいは起立動作がメトロノームの発信音から3動作遅れた場合は運動負荷を終了した。Peak VO2は各起立頻度での終了前30秒間の酸素摂取量の平均値とした。2回のISTSのpeak VO2,ISTS実施時間を測定した。それぞれの再現性は級内相関係数(ICC:1,1)(95%信頼区間)にて確認し,また系統誤差を確認するためにBland-Altman分析を行った。系統誤差の有無を確認した後,ICC値から測定値の標準誤差(SEM),最小可検変化量(MDC)を算出した。

【結果】

ISTSは完遂できた者はなく,5名は起立頻度に追従困難となり運動負荷終了,1名は90%予測最大心拍数に至ったため運動負荷終了となった。運動負荷で一般的な運動負荷中止基準に該当する者はいなかった。ISTS1,ISTS2のpeak VO2(ml/min/kg)の平均値±標準偏差は各々20.4±2.1,20.3±1.7,ISTS実施時間(秒)は619.2±36.1,617.0±34.1であった。2回のISTSのpeak VO2,ISTS実施時間のICC(1,1)(95%信頼区間)は各々0.96(0.79~0.99),0.91(0.57~0.99)であった。Bland-Altman分析では,peak VO2,ISTS実施時間ともに加算誤差,比例誤差を認めなかった。Peak VO2,ISTS実施時間のMDCは各々0.99(ml/min/kg),27.49秒であった。

【結論】

本研究より,健常高齢女性に対してのISTSは高い再現性があることが確認された。さらに,ISTS実施時間のMDCが27.49秒であり運動療法などの効果判定に利用する際には誤差が含まれる可能性を考慮する。

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© 2017 日本理学療法士協会
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