理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-42-1
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各足趾底面の表在感覚の違い,及び足趾接地状況との関係
大川 純平
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抄録

【はじめに,目的】2005年以降,わが国は高齢社会に入っている。高齢社会の大きな問題の1つとして転倒が挙げられ,介護予防や医療費の観点からも,「転倒しない高齢者」ということが重要であり,介護予防教室や臨床においても様々な取り組みがなされている。最近では転倒に対する評価や治療に対して,足趾の役割が注目を浴びている。足趾に関する研究は足趾把持力,足趾機能と重心動揺との関係,足趾把持力や柔軟性と転倒についての関係などが数多く報告されているが,これらは足趾の「運動機能」に着目した報告がほとんどである。しかし,足趾を含む足部は唯一地面に接している部分であり,床面から受けた刺激を中枢へ伝達,そこから再び効果器である足部へと指令が送られ,姿勢の調節とスムーズな運動などにも関与している。この刺激の入力口である足部には多数のメカノレセプターが存在し,感覚情報の伝達の役割を果たしている。この足趾を含む足部の感覚機能における先行研究はいくつかの報告があるが,ほとんどが足趾を含む足部の感覚機能についてであり,各足趾の感覚閾値と接地状況の関係について検証した報告はほとんどみられない。そこで本研究では各足趾の表在感覚閾値及び足趾の接地状況と表在感覚閾値の関係性を明らかにし,今後高齢者の転倒予防やバランス機能の評価の一つの基礎研究となることを目的とする。

【方法】対象は整形外科疾患,及び神経疾患を有しておらず知覚に異常の無い健常成人63名(男性35例,女性28例),平均年齢(mean±SD)は24.4±2.8歳とした。表在感覚の測定には,モノフィラメント知覚テスターを使用し,計測部位を利き足の各足趾の中央部とした。足趾接地の測定にはPedoscopeを使用した。得られた画像から各足趾の足底面を対象に,「接地群」と「非接地群」の2群に分類した。

統計処理として,各足趾の表在感覚閾値に対し,Kruskal-Wallis検定を行った。その後得られた結果を基に多重比較検定(Scheffe法)を行った。足趾の接地群・非接地群との関連性をMann-Whitney U検定を行った。統計解析ソフトには,JSTAT for Windowsを使用し,有意水準は5%未満とした。

【結果】各足趾間における感覚感度について第1趾と第3趾,第1趾と第4趾にのみ有意差を認め,第1趾の方が感覚感度が高値を示した。また,各足趾の接地状況においては,第3趾の接地群・非接地群にのみ有意差を認め,非接地群の方が感覚感度が高値を示した。

【結論】第1趾は接地群,非接地群に関わらず歩行時において荷重をかけている可能性が示唆された。また,非接地群では床面からの刺激量減少によりメカノレセプターの機能低下が生じ,感覚閾値が高値を示す可能性が示唆され,各足趾及び足趾接地状況における感覚機能の評価は高齢者の転倒予防対する評価として重要になってくると考える。

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