理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-RS-04-3
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当院リハビリテーション科ICUチームの取り組みについての検討
安田 雅美坂本 一路熊澤 輝人市橋 理恵子笹野 信子竹内 稔三浦 千恵
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抄録

【はじめに】近年,集中治療領域においてICU重症患者に対するリハビリテーションの介入が多くの施設で実施されている。また,2012年にはPICSの概念が提唱され,より超早期リハビリテーションの重要性が示唆されている。当院についても2011年開院より,集中治療医の指導のもと体制作りが進められてきた。しかし経験不足による積極的介入の遅れや,人員不足による理学療法士の専従配置が困難な事などを改善するため,2015年6月よりICUチームが編成され,多職種による朝カンファレンスの参加・呼吸器疾患,消化器疾患などの周術期患者の術前呼吸訓練,術後ICUにおける早期からの介入・人工呼吸器装着患者の積極的な早期離床が多職種の協力を得てより安全に行えるようになってきている。我々はこうしたチームでの取り組みについて,2016年6月,第24回日本集中治療学会東海北陸地方会・学術集会で紹介した。今回追加報告として,理学療法士のチーム化における有効性を検討したので報告する。【対象と方法】急性呼吸不全によりICU入室し人工呼吸器管理(NPPVを含む)となった成人患者(ICU入室中死亡例を除く)を対象とし,チーム編成前の2014年8月から2015年3月までの14例をA群(平均年齢75.7±9.1),チーム編成後の2016年1月から6月までの15例をB群(平均年齢71.5±6.4)として,リハビリ介入状況を診療カルテ情報より後方視的に比較検討した。調査項目としては,人工呼吸器装着からリハビリ開始までの期間,端座位,車椅子乗車,歩行までの期間,呼吸器離脱までの期間,ICU滞在期間,退院時の動作能力についてであり,統計学的処理についてはカイ二乗検定を用いた。【結果】リハビリ開始時期について,A群は2.2±0.8日(中央値2日),B群は1.4±0.72日(中央値1日)で差が認められた。また,人工呼吸器装着下でのリハビリ開始となった患者はA群では14人中5人(35.7%)に対し,B群では15人中11人(73.7%)であった。端座位までの期間はA群3.2±0.8日,B群2.4±1.7日,車椅子乗車までの期間はA群中央値3日,B群中央値2日であり,A群では14人中13人がB群では全員がICU滞在中に車椅子に乗車している。呼吸器離脱までの期間は,A群4.3±2.8日,B群6.5±4.6日,ICU滞在期間はA群9.9±5.9日,B群10.7±7.6日であった。退院時の動作能力としては自立歩行可能な患者がA群3人(21.4%)に対しB群は7人(46.7%)であった。【結語】ICUにおける理学療法士の専従配置が困難である当院において,チームによる介入を進めてきた結果,ICU入室翌日からのリハビリ実施が可能となり,より早期からの人工呼吸器装着下での安全な離床が多職種の協力を含め体制化され,せん妄やVAPの予防,患者のQOL向上の有効性が得られたと考えられる。しかし,人工呼吸器装着期間やICU滞在期間の短縮には至っていない現状が認められた。

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