理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-RS-08-2
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気管支喘息重積発作後,急性弛緩性四肢麻痺を伴ったホプキンス症候群の6歳児のリハビリテーション
佐々木 順一
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抄録

【はじめに,目的】気管支喘息重積発作後,急性弛緩性四肢麻痺を伴ったホプキンス症候群の6歳児のリハビリテーションを経験したので報告する。【方法】6歳女児。喘息加療中であったが,喘息重積発作を発症し重症呼吸不全で当院救急センター搬送され挿管・人工呼吸器管理となった。集中治療が行われ第3病日人工呼吸器離脱。その際には歩行自立で一般病棟へ転棟となった。第6病日突然,四肢麻痺が出現。頭部MRIで明らかな異常を認めず,第9病日にリハビリ依頼があり開始となった。(評価と経過)JCS1。自己喀痰は困難。膝関節伸展最終域で筋伸張痛あり。感覚障害なし。定頸不可。四肢はMMT0~2レベルで,下肢は股関節屈曲がわずかに可能。腱反射は筋緊張低く,詳細検査未実施。病的反射陰性,膀胱直腸障害なし。ADLは全介助。リハビリ開始時,無気肺の合併があり肺炎予防目的に寝返り練習,体位排痰を促した。近位筋,近位関節へと徒手抵抗,固定・介助を促し感覚情報を入れることに意識して訓練を実施した。第18病日排尿障害出現。脊髄MRIにてC3-5,Th11-L1レベルの前角周囲に高信号病変が認められた。MCVでは導出不良であった。その後,咽頭拭い液よりEV-D68が陽性でありホプキンス症候群と判明した。ステロイドパルス療法などが実施されながらリハビリを継続。その後徐々に端座位保持可能となった。頭部,体幹のスタビリティーが向上してからは起き上がり練習,車椅子自走練習,起立台での立位保持練習を実施した。起き上がり最大介助だが両側の寝返りが自立し,端座位から足元の物がとれるようになり第179病日に自宅退院。退院時には右上肢は弛緩性完全麻痺。下肢は両側とも2レベル。両膝関節は-20度の伸展制限あり。PCFは改善したが拘束性換気障害を認めた。【結論】ホプキンス症候群は喘息発作後2週間以内に1~2肢の弛緩性麻痺を急性発症する非常にまれな疾患である。エンテロウィルスD68型(EV-D68)の関与が最近注目され,2015年8月以降EV-D68による呼吸器感染症流行とともにホプキンス症候群の報告例が本邦でも急増した。10歳未満の男児に多く,喘息発作後に急性弛緩性麻痺が出現,頸髄や腰髄を中心に炎症病変が出現する。脊髄前角細胞を中心に障害され,筋萎縮が高度となり麻痺の回復傾向に乏しいといわれている。本症例におけるリハビリの問題点は,臨床経過の中で病態が急速に変化したことである。喘息重積発作が重度であるほど注意がそちらにむけられ,急性弛緩性四肢麻痺の診断を遅らせる可能性がある。初期評価時からしっかりと運動機能,感覚,反射など神経学的所見を詳細にとることが重要だと考えられ,主治医,リハ医と頻回のディスカッションが必要であると考えられた。

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