理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-SK-05-3
会議情報

ポスター
ロボットを用いた歩行練習は脳卒中片麻痺患者の歩行能力と意欲を改善させるか
―歩行リハビリ支援ツールTreeの効果検証―
松浦 和文山出 宏一長谷 浩行加藤 祥一
著者情報
キーワード: 脳卒中, ロボット, 意欲
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】

近年,脳卒中片麻痺患者のリハビリテーションにおいて,ロボットを用いた歩行練習が試みられている。そのロボットのひとつである歩行リハビリ支援ツールTree(以下,Tree)は,リーフ社によりリハビリ支援機器として開発された非装着型のロボットである。Treeは,走行する速度を任意に設定することで,患者の歩行練習の速度を調整できる。また,音声によるかけ声の間隔を設定することで,患者の歩行率を調整しながら,歩行練習を行うことができる。さらに,患者の歩行データを歩行練習直後に確認し,患者にフィードバックできる。これらの機能により,患者の歩行能力の回復や,意欲の向上が期待されている。しかしながら,Treeを用いた歩行練習が,脳卒中片麻痺患者の歩行能力と意欲に及ぼす影響を調べた研究は少ない。そこで本研究は,Treeを使用した歩行練習が,脳卒中片麻痺患者の歩行能力と意欲に及ぼす効果を明らかにすることを目的とする。

【方法】

対象は,本研究の内容を説明し同意を得られた回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中片麻痺患者24名とした。除外対象は,10m歩行が困難な者と,歩行データの理解が困難なほど認知機能が低下した者とした。Treeを用いた歩行練習群(以下,Tree群)12名,統制群12名に割りつけて,準ランダム化比較試験を実施した。Tree群は,通常の理学療法でおこなう歩行練習20分を,Treeを用いた歩行練習に置き換えて介入した。またTree群は,Tree内に蓄積されていく歩行データから,歩行速度や歩行距離,連続歩行時間等の変化を患者にフィードバックした。統制群は,通常の歩行練習を実施した。介入期間は,14日間とした。評価の時期は,介入前,介入7日目,介入14日目とした。各評価時期において,歩行練習後に,歩行速度,歩幅,歩行率を測定した。意欲は,介入前と介入14日目に測定した。歩行能力の測定には,足圧モニタインソールPiT(リーフ社)を用いた。意欲の測定には,Apathy Scaleの邦訳版である「やる気スコア」を用いた。それらの結果から,各群の効果の差を検証した。検証項目は,歩行速度,歩幅,歩行率,やる気スコア得点を従属変数とし,群間の交互作用の有無を検討した。統計学的処理はSPSS12.0Jを用い,有意水準は5%とした。

【結果】

反復測定2元配置分散分析の結果,歩行速度,歩幅,やる気スコア得点の項目で交互作用を認めた(p<0.05)。歩行率に交互作用は認められなかった。

【結論】

Treeを使用した歩行練習は,通常の歩行練習と比べて,脳卒中片麻痺患者の歩行速度と歩幅,意欲を改善できることが示唆された。今後,ロボットを用いた歩行練習効果の蓄積によって,脳卒中患者が意欲的に歩行練習をおこなえる可能性があり,更なる検証をおこないたい。

著者関連情報
© 2017 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top