理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-SN-03-2
会議情報

口述演題
青年期発達障害児と青年期健常児におけるバランス能力と下肢筋力の比較
櫻井 大輔細田 梨恵楠本 泰士後藤 颯人千葉 康平中里 彩祥子竹田 智之花尾 麻美新田 収
著者情報
キーワード: 青年期, 発達障害, バランス
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】

発達障害児のバランス能力は,重心動揺計を用いた測定にて健常児よりも開眼・閉眼共に重心動揺が大きかったと報告されている。一般的に動的バランス能力は,日常生活能力を反映した有用な評価といわれており,健常成人では下肢筋力と相関が高いといわれている。しかし,発達障害児の静的バランスと動的バランス,下肢筋力の測定を同時に行った報告はない。また,就学前の児童の報告が多く,就労に向けた活動が重要になる青年前期の報告はない。そこで本研究では,青年期発達障害児と青年期健常児におけるバランス能力と下肢筋機能を比較し,両者の特徴を示すことを目的とした。

【方法】

書面にて本研究への同意が得られた特別支援学校の知的学級に通学している発達障害児25名(15~16歳)の内,筋肉量を測定できた15名を対象とした。また,一般高校に通学している健常児25名(15~16歳)の内,発達障害児と年齢,性別,体重をマッチングさせた15名を対象とした。評価項目は,重心動揺計を用いた重心移動,20秒間の片脚立位保持の可不可,段差踏みかえ,線上歩行,ハンドヘルドダイナモメーターを用いた膝伸展筋力,体組成計を用いた筋肉量とした。重心動揺の解析項目には,総軌跡長,単位軌跡長,単位面積軌跡長,左右と前後それぞれの軌跡長,左右と前後それぞれの単位軌跡長,矩形面積,さらに外周面積を選択した。体組成計の測定項目には,全身,上下肢,体幹の筋肉量を選択した。これらの測定結果を対応のないt検定を用いて分析し,発達障害児15名と,健常児15名を比較し検証を行った。統計処理にはIBM SPSS Statistics Ver.21を使用し,有意水準を5%とした。

【結果】

静的バランスは,発達障害児の総軌跡長前後軌跡長・前後単位軌跡長・矩形面積・外周面積が健常児に比べて有意に大きかった。しかし,左右軌跡長・左右後単位軌跡長では有意差はなかった。動的バランスは,発達障害児が健常児に比べ段差踏みかえの回数が少なかった。膝伸展筋力が左右ともに発達障害児の方が有意に低かった。線上歩行と筋肉量に,有意差はみられなかった。

【結論】

発達障害児は健常児に比べて,前後方向の動的バランス能力,動的バランス能力,膝伸展筋力,筋肉量が低値を示した。また,発達障害児の前後方向への動的・静的バランス能力と膝伸展筋力が関連することが示唆された。

著者関連情報
© 2017 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top