理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-SN-03-4
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口述演題
脳性麻痺の動的脊柱装具(dynamic spinal brace;DSB)使用時の矯正率と介護者満足度の関連について
船山 真由子五十嵐 大貴吉田 圭佑大川 敦子
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キーワード: 脳性麻痺, 体幹装具, 調査
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抄録

【目的】脳性麻痺をもつ児・者は側弯を生じることが多く,座位機能の低下,日常生活や介護へ支障をきたすことが多い。動的脊柱装具(dynamic spinal brace;以下DSB)は,支柱の弾性を利用した動的な装具で,側弯矯正だけでなく日常生活動作の改善を目的とし,側弯進行の抑制や体軸偏位距離(trunk shift;以下TS)の改善が報告されている。また,TSと骨盤傾斜角(pelvic obliquity;以下PO)と座圧の改善に相関があり座位姿勢の改善が報告され,アンケート調査では座位姿勢のとりやすさに介護者の満足感が得られている。しかし,座位姿勢の改善と関連するTS,POの矯正率と介護者満足度の関連について報告はない。今回,DSB装着によるCobb角,TS,POの矯正率と介護者満足度の関連を分析し考察した。

【方法】対象は2009年3月~2016年8月までに当センター小児整形外科でDSBを処方された脳性麻痺をもつ児・者でGMFCSレベルI~IVの11名(男性6名,女性5名)。平均年齢25.8±17.2歳,GMFCSレベルI1名,II0名,III2名,IV8名。調査項目は,DSB装着前後のCobb角,TS,PO.医師の指示・指導の下,X線画像よりTS,POは全例,Cobb角は10°以上の側弯例(6名)を測定した。矯正率はDSB装着前後のCobb角,TS,POの差を装着前の値で除した。介護者満足度は,主介護者に自記式のアンケートを実施した。内容はDSB装着前との比較,座位姿勢の想定を条件とし,姿勢のとりやすさ,上衣更衣のしやすさ,食事のしやすさ,上肢の使いやすさ,呼吸のしやすさ,筋緊張の度合い,機嫌とした。評価は5段階評価(非常に良い,良い,変化なし,悪い,非常に悪い)を用いた。装着時間は自由回答とした。統計学的処理はSPSSver20.0を用い矯正率とアンケート項目の関連についてSpearmanの順位相関係数を用い有意水準は5%とした。

【結果】DSB装着前の平均はCobb角:56.4±11.2°,TS:30.0±15.9mm,PO:9.1±7.2°。DSB装着後はCobb角:47.2±14.7°,TS:18.9±17.0mm,PO:6.3±6.1°。矯正率はCobb角:17.7%,TS:48.0%,PO:36.0%。アンケート回収率は100%。Cobb角矯正率と食事のしやすさ(r=0.828,p<0.05),TS矯正率と機嫌(r=0.829,p<0.01),PO矯正率と機嫌に正の相関が認められた(r=0.634,p<0.05)。装着時間の平均は6.5±4.7時間であった。

【結論】Cobb角矯正率と食事のしやすさの相関について,先行研究では,アンケート調査において食事のしやすさに介護者の満足度は得られているが,今日,DSBのCobb角矯正効果が食事のしやすさに影響することが実証された。TS,POの改善は先行研究から座位姿勢の改善を示唆している。座位姿勢は,前庭系や体性感覚系により制御され,感覚と運動の発達が自己像や情緒の発達を司ることから,機嫌との相関に繋がったと考える。

今回,DSB装着によりCobb角の矯正と座位姿勢に関わるTS,POの矯正が認められ,側弯例で食事のしやすさ,全例で機嫌と正の相関が得られた。このことから,DSBの効果は日常生活の改善のみならず情緒面の発達にも良い影響があることがわかった。

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