理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-SP-05-3
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Drop vertical jumpにおける膝関節外反モーメントと股関節・膝関節運動,下肢アライメントとの関係
横山 寛子尾田 敦牧野 美里石川 大瑛鹿内 和也前田 健太郎浦本 史也伊藤 亮太藤林 直樹
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抄録

【はじめに,目的】

膝前十字靱帯(以下,ACL)損傷のきっかけはInitial Contact(以下,IC)直後の膝関節外反モーメントの急激な高まりであると言われ,ACL損傷以前のdrop vertical jump(以下,DVJ)におけるIC時や最大膝関節外反角度や膝関節外反モーメントの大きさはACL損傷の予測因子となる。

ACL損傷膝では特徴として足部回内位であること,損傷時に急激で大きな膝関節外反モーメントが発生すること,膝関節外反位であること,ICからIC後40msecまで股関節屈曲,外転,内旋位での固定などが報告されている。これらよりACL損傷膝では静的,動的ともに変化が生じていると考えられる。

健常者では後にACL損傷した群でDVJの膝関節外反モーメントや垂直床反力(以下,vGRF),IC時や最大膝関節外反角度が大きかったという報告がある一方,IC後の膝関節外反モーメントと股関節・膝関節角度や角度変化量,下肢アライメントとの関連は明らかになっていない。

本研究では健常女子大学生を対象に,DVJの初期接地区間における前額面,矢状面の関節運動に着目し,膝関節外反モーメントと股関節,膝関節運動との関連および,膝関節外反モーメントと下肢アライメントとの関連について明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は健常女子大学生22名(年齢20.8±0.9歳,身長160.1±4.4cm,体重52.7±3.8kg)とした。下肢アライメント評価として,Navicular drop test,Leg-Heel-Angle,Q-angle,Craig testを測定した。動作課題は高さ30cmの台からのDVJとし,赤外線カメラ8台で構成される三次元動作解析装置(Vicon Motion Systems社製,Vicon Nexus)および床反力計(AMTI社製,40mm×600mm)を使用し計測した。サンプリング周波数は赤外線カメラ100Hz,床反力計1000Hzとした。マーカーはPlug-in Gait Full Bodyモデルに従い,対象者の身体の35か所に貼付した。解析対象は被験者の非利き脚とした。統計学的解析は,接地区間におけるvGRFの第1ピーク(以下,peak vGRF)出現時の膝関節外反モーメント(Nm/kg)と,peak vGRFの大きさ(N/kg),ICからpeak vGRF出現するまでの時間,静止立位・IC・peak vGRF出現時それぞれの股関節・膝関節角度,ICからpeak vGRF出現時の区間での股関節・膝関節角度変化量,下肢アライメントとの関係について,Pearsonの積率相関係数,Spearmanの順位相関係数にて検討した(p<0.05)。

【結果】

膝関節外反モーメントとpeak vGRF出現時の膝関節外反角度との間(r=0.522),膝関節外反角度変化量(r=0.517)との間にそれぞれ有意な中等度の正の相関を認めた。その他の項目では有意な相関は認められなかった。

【結論】

健常膝ではACL損傷膝と異なり,膝関節外反モーメントとpeak vGRF,IC時の股関節・膝関節角度,下肢アライメントとの関連性は低く,ICからpeak vGRF出現時の区間における膝関節外反運動との相関関係が認められた。そのため膝関節外反モーメントの減少には着地動作時の膝関節外反運動の減少が重要であることが考えられる。

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© 2017 日本理学療法士協会
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