理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-TK-03-1
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口述演題
運転を中止した高齢者における孤独感と公共交通機関利用との関連
松田 直佳鳥澤 幸太郎村田 峻輔伊佐 常紀海老名 葵近藤 有希坪井 大和福田 章真奥村 真帆重本 千尋小野 玲
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キーワード: 運転, 孤独感, 公共交通機関
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抄録

【はじめに,目的】加齢に伴う注意機能などの低下により運転の安全性が損なわれ,高齢者は運転を中止せざるを得ない状況に陥る。しかし,運転中止により先行研究では死亡率の増加や生活の質の低下,うつの増加に加えて,社会ネットワークの減少や孤独感の増加が報告されている。特に,高齢者において孤独感が高いことは日常生活動作能力の低下や死亡率の増加につながるとされており,孤独感の増加を防止することは重要である。しかし,運転中止による悪影響に対して緩和策を検討している研究はほとんどない。バスや電車などの公共交通機関は運転に代わる移動手段であり,公共交通機関へのアクセシビリティが生活の質及び活動量と関連していると報告されていることから,公共交通機関利用によって運転中止による健康への悪影響が緩和されると考えられる。本研究の目的は,運転を中止した高齢者において孤独感と公共交通機関利用の関連を検討することである。

【方法】対象者は65歳以降に運転を中止した地域在住高齢者35名のうち,欠損値を有する者,Mini Mental State Examination(MMSE)が24点未満の者を除く34名(平均年齢±標準偏差:77.7±4.9歳,女性:12名)とした。公共交通機関利用に関しては公共交通機関を1週間に1日以上利用する者を利用あり群,1週間に1日未満しか利用しない者を利用なし群とした。孤独感の評価には日本語版UCLA孤独感尺度の短縮版(UCLA孤独感尺度)を用いた。UCLA孤独感尺度は点数が高いほど孤独感が高いことを示す。その他に,年齢,性別,教育歴,同居人の有無,自己評価健康状態,MMSEを測定した。統計解析は,対応のないt検定を用い,UCLA孤独感尺度を公共交通機関利用の有無で比較した。その後,目的変数をUCLA孤独感尺度,説明変数を公共交通機関利用の有無,先行研究から交絡変数を年齢,性別,教育歴,認知機能,同居人の有無,自己評価健康状態とした強制投入による重回帰分析を行った。

【結果】対応のないt検定の結果,公共交通機関の利用あり群と比較して,利用なし群のUCLA孤独感尺度は有意に高値を示した(利用あり群:10.3点,利用なし群:12.8点,p=.017)。交絡変数の調整後においても,公共交通機関利用の有無(β=-.46,p=.013)がUCLA孤独感尺度と有意な関連を示した。

【結論】運転を中止した高齢者において公共交通機関利用を利用しているものは孤独感が低いことが示された。本研究結果より,公共交通機関利用が運転中止による孤独感の増加を緩和する可能性が示唆された。

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© 2017 日本理学療法士協会
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