理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-TK-17-2
会議情報

ポスター
熊本地震における当院の災害ボランティア活動について
~無床クリニックの理学療法士にどこまでできるのか~
大塚 庸平陣上 修一山口 久志川本 彩果吉田 充晴絹原 寛士
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】平成28年4月14日の前震と16日の本震により発生した熊本地震は震度7を2回観測し,未曾有の被害をもたらした。平成28年10月19日時点での死者数は関連死を含み126名,重軽傷者数2,346名。家屋の被害は全壊8,146棟,半壊29,009棟,一部損壊129,412棟。余震回数は4,000回を超え,車中泊や避難所生活となった人数は183,882名,避難所数は855ヶ所に及んだ。全国から自衛隊,JMAT等の大規模な救援活動が行われた。それと並行して被災者でもある我々も早期より災害ボランティア活動を行った。熊本市中心部の住宅地に立地する整形外科クリニックに勤務する理学療法士(以下PT)の災害ボランティア活動の結果から,災害発生時におけるクリニックの役割を検討した。

【方法】当院PT(5名)の災害ボランティア活動記録から,地震発生直後より熊本市内の避難所が閉鎖された9月15日までの5ヶ所月間で以下の項目を調査した。内容は1)活動頻度・日数2)活動場所・範囲3)対象者数4)活動内容である。

【結果】1)初動は本震発生後3日目であり,活動1回につきPT1名が1時間程度で避難所を訪問,週平均2.5回,述べ40日間活動した。2)活動場所は熊本市中央区に設置された避難所82ヶ所中の9ヶ所で,当院との距離は最短500m,最長1.9km,平均1.2kmであった。3)活動した避難所9ヶ所の対象者は1日平均7名,述べ280名であった。4)活動内容は当初,安否確認,健康状態の確認から「熊本市地域包括支援センター」が主催した「cafe型健康サロン」に参加し,DVT予防やコミュニティの形成,精神面のケアなどへ変化した。

【結論】当院は整形外科単科のクリニック(PT5名)であり,予約制を取り入れている。クリニックでも診療圏内を短時間で交代することにより,通常業務への影響を最小限に抑え,本震発生後3日目より延べ40日間,災害ボランティア活動が可能であった。活動した避難所は当院の診療圏内で,通院中の患者も多く避難しており,安否確認や通院できない患者のフォローも可能であった。またクリニックまでの避難者の送迎や,避難者と医師の連絡的役割などの臨機応変な対応も可能であった。今回の災害ボランティア活動に関わった避難所はクリニックの診療圏内のみであり,PTが対応した避難者は1日平均7名であった。これは全体の避難者数からみると少数であるが,いちクリニックが通常業務の中で行ったボランティアとしては限界であろうと思われる。大規模災害においてはクリニックなどの小規模な医療機関は近辺の地域活動を行うことが大切で,それらが集合することによって十分な災害ボランティア活動となっていくと思われる。反省点としては我々単体の活動しか行わず,JRATとの連携が無かったことがあげられる。今後は熊本県復興リハビリテーションセンターなどと連携・交流をもち,途切れることのないボランティア活動を継続する予定である。

著者関連情報
© 2017 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top