理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-YB-01-3
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全身振動(Whole body vibration)マシンを用いた効率的な介護予防トレーニング方法とその効果
超高齢化社会に対応した新たなリハビリテーションの構築
鵜川 裕司政田 哲也北村 佳隆
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抄録

【はじめに,目的】

2025年以降には4人に1人が75歳以上という超高齢化社会が到来するが,介護やリハビリ分野では人手不足が懸念され,また老人医療費の増大など様々な問題も残る。そこで,当院では全身振動(Whole body vibration:以下,WBV)マシンを用いて,少人数でより多くの高齢者の介護予防を行う効率的で効果的な新たなトレーニング方法を行ったため,その効果も含めて報告する。

【方法】

対象は2015年7月から2016年9月に当院外来通院にてWBVトレーニングを行った252名の内,体力測定を3回以上実施できた高齢者群61名(年齢74±8.4歳)と,さらにその中から75歳以上の後期高齢者群28名(年齢81歳±4.2歳)を抽出して検討した。WBVトレーニングとして,Power platepro5を2台,my5を2台使用して,同時に最大4名をWBV指導スタッフ1名,補助スタッフ1名にて1回あたり10分~12分のトレーニングを実施。効果判定は,体力測定では,左右握力,左右開眼片脚立位,5回立ち上がりテストを測定し,初回,3ヵ月後,6ヵ月後の3回実施した。疼痛の評価にはVASを使用,骨密度は腰椎と大腿骨のカルシウム量を測定し,それぞれ初回と6ヶ月後の比較を行った。統計処理は,体力測定には,初回からの経時的変化は一元配置分散分析を,初回と3ヶ月後,初回と6ヵ月後の比較には対応のあるt検定を行い,疼痛と骨密度の初回と6ヶ月後の比較には対応のあるt検定を行った。有意水準を5%未満とした。

【結果】

高齢者群の5回立ち上がりテストは初回から6ヵ月後まで有意差を認めた(p<0.01)。右開眼片脚立位は,初回と3ヵ月後(p<0.01),初回と6ヵ月後(p<0.01)に有意差を認めた。左右握力は,初回と3ヵ月後に有意差を認めた(p<0.01)。後期高齢者群でも,5回立ち上がりテストは初回から6ヵ月後まで有意差を認めた(p<0.05)。右開眼片脚立位も,初回と3ヵ月後(p<0.05),初回と6ヵ月後(p<0.05)に有意差を認めた。左右握力も,初回と3ヵ月後に有意差を認めた(p<0.05)。疼痛と腰椎,大腿骨の骨密度の初回と6ヶ月後にも有意差を認めた(p<0.01)。

【考察】

WBVによって引き起こされた緊張性振動反射による筋力増強効果はスポーツ分野でエビデンスが構築されつつあり,最近では一般高齢者にもその有用性が報告されている。しかし当院ではWBVのもう一つの特性である動かずに行える運動に着目し,後期高齢者でも高い安全性を確保して筋力増強を図ることができた。また疼痛改善や骨密度増加にも振動刺激によるメカニズムが示唆されており,これらが寄与したものと考えた。これらの効果を少ないスタッフで得られたということがこれからの超高齢化社会に対応する方法になりえると思われ,今後さらに工夫を重ねて新たなリハビリを構築していく必要があると考える。

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