理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-YB-09-5
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健常男性におけるバランスボールトレーニングの効果
上村 将史芝山 龍介松田 景介村木 伸太朗新堂 翔平森 静香上村 謙一郎松島 聡
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抄録

【はじめに,目的】

一般的にバランス練習として,バランスボールを使ったトレーニングは広く用いられている。先行研究によると健康女性に対し2週間のバランスボールトレーニングを実施した結果,開眼時の重心動揺距離,重心動揺面積は有意に減少したと報告している。そこで今回,バランスボールトレーニングは姿勢安定性が向上しバランス・俊敏性・筋力の向上に繋がるのではないかと考え検討した。

【方法】

対象は健常男性12名(平均年齢25.3歳,体重62.3kg)とした。対象者に対してバランスボールトレーニングを週3回,6週間実施した。トレーニング方法は直径60cmのバランスボール上に床面と垂直になるような座位姿勢で対側上下肢を挙上(肩関節屈曲90°,膝関節伸展0°)し20秒間保持し,対側に切り替え20秒間保持した。これを3分間×3セット実施した。休憩は各セット間に3分とした。代償動作を防ぐため,姿勢指導を運動中に実施した。評価は次の方法で介入前後に実施した。バランスは静的バランスとしてFunctional Reach(以下FR),動的バランスとしてTimed Up and Go Test(以下TUG)を測定した。俊敏性は反復横跳び,踏み台昇降運動を測定した。筋力測定はBiodex system4(酒井医療株式会社製)を用い体幹屈伸,股関節屈伸,股関節内外転,膝関節屈伸の最大トルク/体重(角速度60deg/sec)を評価した。統計学的処理には介入前後の差を対応のあるt検定を行い,有意水準は全て5%未満とした。

【結果】

バランス(介入前/後)は静的バランスのFR(37.8/41.8cm),動的バランスのTUG(4.7/4.0秒)とも有意に向上を認めた。俊敏性(介入前/後)は反復横跳び(50.3/54.4回),踏み台昇降運動(23.3/28.6回)において有意に向上を認めた。筋力(介入前/後)は右股関節外転(117.6/145.6%)のみ有意に向上を認めた。右膝関節屈曲(152.2/141.2%),右膝関節伸展(283.2/271.5%),左膝関節屈曲(144.6/132.5%),左膝関節伸展(266.4/248.8%)において有意に減少を認めた。他の項目は有意差を認めなかった。

【結論】

バランスボールトレーニングを実施した結果,バランス,俊敏性の各項目において有意に向上を認めた。筋力は有意に向上と低下を認めた。先行研究ではバランスボールトレーニングにより,筋・神経系調節機能,固有感覚受容器機能の適応と改善の可能性があるとされている。本研究においても同様の影響から姿勢安定性へと繋がりFR,TUGのバランスと反復横跳び,踏み台昇降運動の俊敏性が向上したと考えられる。筋力は向上と低下を示したことからバランスボールトレーニングによる筋力への影響は小さいと考えられる。また,筋・神経調節機能及び固有感覚受容器機能低下は転倒の危険因子であると報告されており,今回のバランスボールトレーニング方法は簡便に活用でき今後,高齢者の転倒予防・健康増進として用いることが期待できる。

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