理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-ED-07-2
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臨床実習におけるルーブリック評価の信頼性と総合評価に影響を与える要因
川元 大輔田口 光横山 尚宏高田 和真長津 秀文山下 喬之
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抄録

【はじめに,目的】

本校は,臨床実習の成績報告書にルーブリックという教育評価ツールを導入している。ルーブリック評価の効果として,学生に明確な到達基準を設定し,実習評価に客観性を得ることで,学生の成長度を可視化することが期待できる。平成27年度より運用,現在全ての臨床実習に導入し,評価表の信頼性と総合評価から得られた各評価項目の相関を検証することは我々の責務である。また,情意領域の項目が他項目である認知・精神運動領域に与える影響も本校では課題と捉えており,自主性・積極性の項目と認知・精神運動領域との関連性についても検証する。

【方法】

対象は検査測定体験実習(1週)を履修した本校に在籍する理学療法学科3年生60名。本校が作成したルーブリック評価は情意領域,認知領域,精神運動領域の3領域から構成,これを具体的に細分化した11の小項目からなる。詳細は情意領域7項目(①挨拶,表情,身だしなみ,②遅刻欠席,提出期限の厳守,実習施設の規則順守,③報告・連絡・相談,④行動計画管理・体調管理,⑤自主性・積極性,⑥担当患者・実習指導者・関連職員との人間関係,⑦情報収集・管理・伝達),認知領域2項目(⑧検査測定に関する知識,⑨検査結果に関する思考),精神運動領域(⑩リスク管理・安全性,⑪検査測定の実施と記録)である。評価尺度は段階ごとにN・I・C・E(N=Nice,I=Indicate,C=Continue,E=Effort)と記載,実習指導者が小項目に評価を加え,本校が定める点数基準に基づき我々が配点をおこなった。上記11項目を独立変数とし信頼性係数(Cronbach's α値)を求め,総合評価を従属変数としピアソンの相関係数を求めた。また,精神運動領域の⑤自主性・積極性と認知・精神運動領域の各項目との相関を確認した。

【結果】

全11項目を変数と仮定した場合の信頼性係数は0.89,各項目が変数として信頼できると判断した。次に各項目ごとの評価と総合評価との相関係数(r)は,(r=0.49~0.93)の範囲であり,全項目において有意な相関がみられた。⑤自主性・積極性と認知・精神運動領域の各項目との相関係数(r)は,(r=0.42~0.21)の範囲で,⑩が低い相関を認め,その他の項目は相関がなかった。

【結論】

本研究の結果,具体的な目標と到達基準が定められたルーブリック評価を用いることで,実習指導者と学生の双方にとって客観性が得られる評価表と成り得る可能性が示唆された。また自主性・積極性の項目が認知・精神運動領域に影響を与える因子との相関性は低く,独立した評価として活用できる可能性が示された。今後,評価実習や長期実習といった認知・精神運動領域の項目数増加に伴い,大項目ごとの信頼性を含め改めて関連性を検証する必要性がある。また本校は,実習期間内における変化や学年ごとの成長度合いを含めた形成的評価とした役割をルーブリック評価に期待しており,そのためにも正確で公平な評価表と成り得るか引き続き立証していく。

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© 2017 日本理学療法士協会
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