理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-ED-12-1
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新人理学療法士に対するコミュニケーションの教育方法として言語聴覚士の介入による効果検証
岩田 千恵子西谷 拓也丸谷 史乃青木 賢宏
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抄録

【はじめに,目的】

コミュニケーションは,理学療法士(以下PT)に求められる技術の1つである。今回,コミュニケーションがとれず業務に支障をきたしていた新人PTに対し,当院入職3週間後に言語聴覚士(以下ST)によるコミュニケーションの指導を実施し,この指導後から新人PTの行動が変化した。そこで,コミュニケーションの教育方法としてSTの介入による効果を検証した。対象の新人PTは,挨拶や言葉使いには問題が無かったが,自身が興味のある話だけを相手の反応を無視し一方的に早口で話し続けたり,知らない事や興味の無い話では黙り込むなどの問題が認められた。また,治療場面の見学では対象者と担当PTとの会話に参加せず無表情で見続けるなど相手に配慮した応対が出来ず,良好な対人関係が築けなかった。

【方法】

対象は4年制の専門学校を卒業し当院へ入職した22歳の1年目PTで,指導は臨床経験4年目の当院STが対応した。STの指導期間は3週間で,方法は実習形式とし全失語と構音障害を有する症例2名の治療場面見学とフリートーク参加,デイリーノートの提出を行った。行動変化の指標にはコミュニケーション力チェックリスト(話を聞く力・話を伝える力・自己開示力・感情コントロール力・人と関わる力・セルフモニタリング力の計5項目で1項目20問)を使用し,当院入職時と入職6ヶ月後の自己チェックをしてもらった。

【結果】

コミュニケーション力チェックリストの結果は,話を聞く力9→20,話を伝える力3→12,自己開示力4→14,感情コントロール力6→14,人と関わる力3→16,セルフモニタリング力5→15とすべての項目で変化が認められた。行動の具体的な変化では,STの指導直後から相手に不快な思いをさせる態度が無くなり始め,1週間後にはPT治療場面の見学に問題なく参加できるようになった。当院入職6ヶ月後には対象者を尊重し共感的態度をもって良い人間関係を形成することができるようになった。

【結論】

対象の新人PTより,先輩PT達だけの指導時は出来るようになるために工夫してくれているのは分かるがどうしたら良いのかまでは分からなかったがSTの指導を受けたことで行動の手がかりが掴めたとの発言があった。STからは失語症の対象者とのフリートークが一番コミュニケーション能力を問われるため,見学だけでなくSTと一緒に会話をすることで理解が進み具体的な行動に移せたのではないかとのことだった。今回は,STによる失語症対象者との実習形式による教育と理論に基づいた正確な言語化での指導が効果的であったと考える。

コミュニケーションに問題を抱えたまま入職するPTに対し,PT指導者が教育学や臨床心理学を基盤に対応しても問題が解決されないまま月日が流れてしまうことがある。今後はコミュニケーションの専門家であるSTと協力して指導を続けたいと考える。

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© 2017 日本理学療法士協会
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