理学療法学Supplement
Vol.47 Suppl. No.1 (第54回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: I-34
会議情報

パネルディスカッション「地域包括ケア推進リーダー・介護予防推進リーダー実践活動」
健康行動の変化を促す介護予防活動の効果検証
~地域在住高齢者における群間比較試験~
篠原 智行齊田 高介田中 繁弥宮田 一弘山上 徹也
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 【はじめに】

 近年の介護予防では,健康行動の変化を含めた多角的アプローチが注目されている。今回,健康行動の変化を目的に,地域在住高齢者が体力測定結果のフィードバックを受け,集団で課題分析を行い,活動内容を考える展開を実践した。その介入の有効性を,体力測定結果のフィードバックのみの群との比較にて検証した。

 【方法】

 対象は70歳以上の女性の地域在住高齢者であり,介入群22名,対照群15名とした。介入群は地域の通いの場に任意の頻度で参加,対照群は月1回の介護予防活動に参加していた。介入群では,事前測定を実施し結果のフィードバックを行い,その後1ヵ月間で,集団で課題分析し,活動内容を話し合いにて決定した(2週間に1回,理学療法士が参加して支援)。その後3ヵ月間,決めた活動を実施した(月に1回,理学療法士が活動内容の確認のため参加)。合計4ヵ月間の介入期間後に事後測定を実施した。その後に観察期間として6ヵ月を設け,観察期間後測定を実施した。一方,対照群では結果のフィードバックのみを行った。測定では疼痛の有無とVisual Analog Scale(VAS)の聴取,握力と大腿四頭筋筋力の測定,Brief-Balance Evaluation SystemsTest(BESTest),Rapid Dementia Screening Test(RDST)を実施した。事後と観察期間後では,前回の測定からの健康への意識変化をLikert scaleにて聴取した。解析は有意水準を5%として,事前,事後,観察期間後の各測定値の群間比較を行った。

 【結果】

 全測定を実施できた対象者は12名/11名(介入群/対照群)であり,完遂率は54.5/73.3%,平均年齢は79.6/78.1歳であった。介入群で膝関節と腰部の疼痛改善を目的とした運動を実施した。理学療法士が運動メニューを作成し,運動指導を行った。事前,事後,観察期間後の測定値の平均は,VASが28.8,47.0,28.4/40.3,38.3,43.6,握力が21.2,20.5,20.3/20.0,20.6,21.0 kg,大腿四頭筋筋力体重比が0.36,0.36,0.37/0.36,0.42,0.46 kgf/kgであった。疼痛有の割合は75.0,83.3,66.7/54.5,54.5,63.0%であった。Brief-BESTestのセクションの各中央値は,Ⅰが1.0,3.0,3.0/1.0,2.0,2.0,Ⅱが2.0,2.0,2.5/2.0,2.0,2.0,Ⅲが3.0,6.0,5.0/3.0,3.0,3.0,Ⅳが3.0,4.0,4.0/4.0,5.0,4.0,Ⅴが1.5,3.0,3.0/2.0,3.0,3.0,Ⅵが3.0,3.0,2.5/3.0,3.0,3.0,RDSTの中央値は9.5,9.0,8.5/10.0,9.0,9.0点であった。健康への意識が増えた回答の割合は事後で25.0/54.5%,観察期間後で33.3/54.5%であった。観察期間後のBrief-BESTestのセクションⅠのみに有意差が認められた。

 【結論】

 集団で心身の課題分析から活動へ展開することで健康意識は増え,バランス能力のうちBrief-BESTestのセクションⅠ,即ち股関節外転力と体幹側屈力の改善をもたらした。一方,測定結果のフィードバックのみでも健康意識は増え,心身の機能維持ができた。

著者関連情報
© 2020 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top