主催: 日本理学療法士協会
理学療法は治療技術として発展してきた経緯があり,その科学的根拠の蓄積や理論的体系化については未だ十分とはいえない状況にあります。そのなかにあって,理学療法士養成教育が大学で行わるようになってから間もなく30年を迎えようとしており,現在では多様な研究手法を用いて理学療法の基礎研究が行われるようになってきました。その成果は着実にあがっており,臨床技術の裏付けや,理論の体系化に寄与する研究も増えております。そこで,本大会ではあらためて最新の基礎研究の知見と臨床との接点を確認しようということでテーマを設定しました。
理学療法は基礎科学と人文社会学を土台(基礎),解剖学,生理学,生化学,栄養学,身体運動学,人間発達学などを柱(専門基礎)として,その上に築かれています。そのような専門基礎にあたる学問によって理学療法の基礎的なデータを積み上げ,治療の根拠を与えるのが基礎理学療法学の役割であります。さらに,私としては専門基礎に人間学を据え,EBPTをもとにした手順論(治療法)のみならず,対象者の人生や価値観をもとにした物語論を含有していると思っております。
さて,対象者の運動行動を観る理学療法にとっては身体運動学が重要であることは論を俟ちません。私どもの研究室では“日常動作を身体運動学で科学する”ことをテーマにしております。一連の研究成果をもとに,理学療法評価において重要な運動動作分析を体系化し,さらに治療技術である因果的アプローチと運動学習論的アプローチへ応用するための研究を展開しています。最終的には理学療法モデルを提案し,評価と治療の円環を回してゆきたいと考えて取り組んでいるところです。本講演では具体例を通して,理学療法における基礎研究の臨床への応用について触れ,大会での議論の糸口としたいと考えております。