主催: 日本理学療法士協会
全国各地でそれぞれの工夫と努力による地域包括ケアシステム構築が進められている。とはいえ,構築の進展状況について大きな差が存在する現状は否めない。こうした実態に対し,「2025年以降に備えるには,先進事例・好事例を調べ,そこから学んで横展開すればよい」と説く提案を耳にする。この主張はもっともらしく聞こえるかもしれないが,実は落とし穴が存在する。それは,先進事例・好事例として取り上げた実例の「出来上がった姿」を真似してもその通りにはなれないことである。
例えば,「観光都市として有名になるために,京都市の現状に似せようと,今からまちの中に神社仏閣をたくさん建てても,歴史が伴っていなければ無駄な努力に終わる」が分かりやすいだろう。「隣のうちは幸せな夫婦に見えるから,その夫婦が楽しんでいる趣味(テニスと美術鑑賞?)を始めても,別の夫婦にとって幸せへの道とはかぎらない」も同様である。以上の2つは冗談にすぎない馬鹿馬鹿しい例と誰にでも理解できる。しかし,地域包括ケアシステムの好事例探しについては,しばしばこうした「出来上がった姿」紹介が行われているように思えてならない。
把握すべきポイントは,アウトカムではなく,構築・展開プロセスにおける「時間をかけた取り組み」である。例えば,生活期リハビリテーションの活用,会議ファシリテーション力を向上させるための連続セミナー,未来志向の生活支援コーディネータ―の探し方・選び方と,その活動を支援する体制構築のための勉強会などがあげられる。
そもそも地域包括ケアシステムの横展開を模索するためには,政策論のレベルから見た3つの側面を理解しなくてはならない。講演では各側面の意味を描写する予定である。