理学療法学Supplement
Vol.48 Suppl. No.1 (第55回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-23
会議情報

第7回日本地域理学療法学会学術大会
地域理学療法学の定義について
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抄録

1.経過

 まず,そもそも「理学療法」は「理学療法士及び作業療法士法」第2条で「身体に障害のある者に対し,主としてその基本的動作能力の回復を図るため,治療体操その他の運動を行なわせ,及び電気刺激,マッサージ,温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定義されています。すなわち,言うまでもなく我々理学療法士のコアは基本的動作能力の専門家ということであり,このことは現在に至っても不変であるということができます。

 日本地域理学療法学会では,平成27年(2014年)度の本学会発足以来,第1回大会からそのメインテーマを「地域理学療法学の構築に向けて」として,各研究成果や実践活動報告などを中心とした学術大会と理学療法士の実践領域の活動を反映した2回のフォーラムを踏まえて議論してきました。

 このような経過を経て,令和元年(2019年)度の第6回日本地域理学療法学会学術大会において地域理学療法学の定義(学会原案)を公表しました。

 この定義は,理学療法のなかに地域理学療法という専門分野があり,地域理学療法マインドをもつ理学療法士の方々の活動が基礎となっています。しかし,地域で活動している理学療法士の実践領域では,その対象は幅広く,方法も多様です。今回の定義はそうした幅広く多様な実践を貫く理学療法学の視座,知識,技術の輪郭を示すものとしました。

(地域理学療法学の定義)

 「地域理学療法学とは,動作や活動への多面的な働きかけにより人々が地域でのくらしを主体的につくりあげられるよう探求する学問」

 ここでは,あくまでの理学療法のコアである動作や活動という帆に多面的な働きかけと言う風を吹き込み,その人自らが目指す方向にくらしを主体的に進めていく様を現しました。

 また本学会では,地域理学療法学の実践領域を「個人・集団」という軸と「直接・間接」という軸を直行させた4つの領域に整理し,それを図として表しました。

 ここでは,定義にある多面的な働きかけの具体的な方法として,「個別支援―集団支援」という軸と「直接支援―間接支援」の軸を直行させて4分割にしてそれぞれの働きかける立ち位置がわかりやすくなるように表現しました。

 

2.パブリックコメント

 学会では本年8月5日までパブリックコントを行った結果16件のご意見をいただきました。

 おおむね肯定的なご意見でしたが,定義の中の「動作や活動」への働きかけがICFの活動レベルを想像され,参加レベルまでいかない狭い印象である等のご意見もありました。理学療法のコアが基本的動作能力であることに立ち返り,動作や活動という表現になりましたが,この活動には広くICFの活動および参加という表現を含んでいると解しています。また,イメージ図の行く先が島だけなのかなどのご指摘もありましたが,これは図の中にどこかの目標があるという意味で解していただければ幸いです。多面的な働きかけである風も一方向性に見えますが,ある目標に向かうための風ということでご理解いただければと思います。どのご意見も貴重であり今後の検討時に参考になるものばかりでした。ここに改めてお礼申し上げます。

 

3.意義

 これまで地域理学療法の定義はやや不明瞭であったと思われます。今回は,理学療法のコアである,「基本的動作能力」を「活動・参加」を意識した地域における理学療法活動の視座をお示ししただけかもしれません。しかし,広く活動している理学療法士の方々が自分のコア技術(動作や活動)を意識しながらも,広く多面的に働きかけるという位置づけがお示しできたかと思います。特に,実践領域における働きかけの方向性をお示しできたことは,今後の地域理学療法における働きかけの方向性を明確にして,そこでの実践活動や結果の検証などを続けていく指標・視座になれば幸いです。

 

4.今後に向けて

 今回の第7回大会でご報告するあたり,多くのご意見を繁栄できたものは少なかったかもしれませんが,地域理学療法の活動及び学会活動はこれからも続きます。今回策定した地域理学療法学の定義および実践領域図は当然これが完成形ではありません。会員の方々の日々活動の集積がこの定義を成長させていくものです。

 今後も学会活動へのご理解とご支援をお願いいたします。

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