日本口蓋裂学会雑誌
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臨床
培養複合口腔粘膜移植を応用した口唇口蓋裂の2例
飯田 明彦芳澤 享子小山 貴寛齋藤 太郎高木 律男齊藤 力齋藤 功小野 和宏泉 健次
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2010 年 35 巻 3 号 p. 235-240

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抄録

口唇裂・口蓋裂手術時の口腔粘膜組織欠損に対し,培養複合口腔粘膜(Ex Vivo Produced Oral Mucosa Equivalent: EVPOME)の移植を行った2例を報告した。
EVPOMEは培養した自家口腔粘膜上皮細胞を無細胞性ヒト新鮮屍体真皮であるAlloDerm®上に播種し一体化させたもので,組織構造は全層粘膜移植材と同等である。すなわち,従来の培養粘膜上皮シートでは得られなかった物理的強度が得られ,手術の操作性が向上した。また,細胞培養システムも,マウスfeeder layerや,ウシ血清等の動物由来細胞/因子を含まないので安全性が確保されている利点もある。
症例1:両側性唇顎口蓋裂。硬口蓋正中部の瘻孔閉鎖を,口蓋動脈を含む有茎弁で行い,その結果生じた新鮮創面に対し,EVPOMEを移植した。
症例2:両側性唇顎口蓋裂。顎間骨部の口腔前庭拡張術を行い,生じた新鮮創面に対し,EVPOMEを移植した。
いずれの症例も,移植床周囲の瘢痕組織に縫合したが,縫合は容易であった。移植材は術後1週までに完全生着し,有害事象も生じなかった。
口唇裂・口蓋裂のような組織欠損や瘢痕組織を有する患者へのEVPOME移植は有用であると思われた。今後は適応拡大のため,口唇裂・口蓋裂児への適応を念頭に置いた凍結保存細胞によるEVPOMEの臨床応用や,AlloDerm®に代わる安定供給可能なスキャホールドの開発などを行っていくべきであると考えられた。

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© 2010 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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