日本口蓋裂学会雑誌
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総説
原著
  • 仁保 千秋, 田村 知子, 大房 悠里, 今野 悠, 林 宏栄, 杉浦 康史, 七條 なつ子, 須永 中, 森 良之, 野口 忠秀
    原稿種別: 原著
    2025 年50 巻1 号 p. 10-17
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    [早期公開] 公開日: 2025/02/10
    ジャーナル 認証あり
    【緒言】顎裂部骨移植術は,唇顎口蓋裂の一連の治療において欠かすことのできない重要な手術である。移植骨は腸骨より採取する方法が標準的であるが,術後は腸骨採取部の疼痛による歩行困難や離床の遅れがしばしば問題となる。腸骨採取部の疼痛コントロールは患者のQOL 向上や患者満足度の観点からも重要である。当科では2013 年より顎裂部骨移植術の腸骨採取部に長時間作用型局所麻酔薬であるロピバカイン塩酸塩を使用しており,今回,われわれはその有効性について検討した。【方法】2006 年4 月から2019 年3 月までに自治医科大学附属病院歯科口腔外科・矯正歯科で顎裂部骨移植術を施行した患者101 名(男性60 名,女性41 名),111 顎裂を対象とした。腸骨採取は前腸骨より行い,採取後にロピバカイン塩酸塩を使用しなかった群をNR 群(24 例),ロピバカイン塩酸塩を使用した群をR 群(87 例)として,術後の初回鎮痛薬使用開始時間,歩行開始時期,術後在院日数について検討した。【結果】鎮痛薬の初回平均投与時間はNR 群8.3 時間,R 群8.2 時間であった。また,全体のうち鎮痛薬の内服を必要とした患者割合はNR 群70.8 %,R 群56.3 % であった。平均歩行開始時期はNR 群42.9 時間,R 群23.5時間で,R 群で有意に術後早期の歩行が可能であった。術後在院日数はNR 群5.5 日,R 群2.9 日で,R 群で有意に在院日数が短く,重回帰分析においてもロピバカイン塩酸塩の使用の有無が術後在院日数に有意に影響する結果となった。【考察】アセトアミノフェンやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの全身的な鎮痛薬投与のみでは体動時の十分な鎮痛が得られず,離床の遅れにつながることがある。今回,腸骨採取後にロピバカイン塩酸塩を使用することで,術後早期の離床と在院日数の短縮が可能であることが示された。ロピバカイン塩酸塩は,持続性のある鎮痛効果が期待でき,腸骨採取部の疼痛コントロールに有効 であるといえた。
  • 阿彦 希, 馬場 祥行, 疋田 理奈, 五十川 伸崇, 彦坂 信
    原稿種別: 原著
    2025 年50 巻1 号 p. 18-26
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/20
    ジャーナル 認証あり
    国立成育医療研究センター矯正歯科を受診した患者の疾患分布を把握する目的で,2010年4月から2020年3月までに来院した先天性疾患を有した839名について実態調査を行った。また矯正歯科治療における保険適応疾患と小児慢性特定疾病の適用範囲を比較,検討し,以下の結果を得た。
     1.  非症候群性口唇・口蓋裂,ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む),ダウン症候群,ベックウィズ・ウィーデマン症候群,頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群,尖頭合指症含む)の順に多く,合計84の疾患を認めた。
     2.  6例以上を認めた疾患は,いずれも矯正歯科治療における保険適応疾患であった。
     3.  非症候群性口唇・口蓋裂患者313 例の内訳は,口唇裂(23 例),唇顎裂(56例),唇顎口蓋裂(156例),口蓋裂(78例)であった。
     4.  矯正歯科を受診する機会の多いゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む),ピエール・ロバン症候群やラッセル・シルバー症候群などは,矯正歯科治療において保険が適用されている疾患だが,小児慢性特定疾病においては非適用となっていた。
     5.  矯正歯科治療における保険適応疾患は,小児慢性特定疾病の16疾患群中11疾患群に対応しており,小児慢性特定疾病の全845疾病のうち66疾病(7.8%)を占めた。
     以上の結果より,発生頻度が高く疾患特有の不正咬合を有することが広く認知されている疾患患者の来院が多く,原疾患に起因した咬合異常改善のための保険行政支援が適正に行われていることが確認された。小児慢性特定疾病には,矯正歯科治療における保険適応疾患には含まれていない,歯科的に希少な疾患が多く含まれており,それらの疾患に起因しうる不正咬合を把握し,情報発信を行うことで,矯正歯科治療の保険適応疾患がさらに充実するよう働きかけることが重要であると考えられた。
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