日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
最新号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
原著
  • 小出 真菜, 森川 泰紀, 石井 武展, 坂本 輝雄, 西井 康, 石垣 達也, 鈴木 啓之
    2023 年 48 巻 3 号 p. 209-216
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり
    【目的】片側性唇顎口蓋裂(UCLP)患者では口蓋形成術の外科的侵襲や術後の瘢痕収縮により上顎歯列弓幅径の狭窄や上顎劣成長が惹起され,骨格性下顎前突が生じる。そのため第1期治療にて上顎前方牽引装置が用いられることが多い。しかしながら,上顎前方牽引装置の短期的効果についての報告はあるものの,長期的効果について報告しているものは少ない。今回我々は一段階口蓋形成術を行ったUCLP患者で,MPA治療開始時(T0)とMPA治療終了時(T1),永久歯萌出完了時(T2)のセファロ分析を用いて上顎前方牽引装置の長期的効果について比較検討を行ったので報告する。
    【方法】1981年1月から2020年2月に東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科に来院したUCLP患者のうち,初診時McNamara line to Point A≦0mm,マイナスのOverjetを呈し,上顎劣成長による骨格性下顎前突と診断され,上顎前方牽引装置(MPA)にて治療を行った患者に対してMPA治療開始前,MPA治療終了後,永久歯萌出完了時の側面頭部エックス線写真を用いて後向きコホート研究を実施し比較研究を行った。対照群は唇顎口蓋裂を伴わない上顎劣成長による骨格性下顎前突患者で第1期治療にてMPAを1年以上使用したものとした。
    【結果】UCLP群における骨格系の項目では,McNamara line to point AはT1とT2の値を比較すると有意に減少した。SNB angleは,T1とT2およびT0とT2の値を比較すると有意に増加した。ANB angleはT1とT2,ConvexityはT1とT2およびT0とT2の値を比較するといずれも有意に減少し,顎間関係は増悪した。
    【結論】片側性唇顎口蓋裂患者は上顎前方牽引装置を使用することにより,Overjetは増加するものの上顎骨前方成長効果が乏しく,長期的な観察の結果,上顎骨の劣成長および骨格性下顎前突の改善が見込めないことが示唆された。
  • 緒方 祐子, 今村 亜子, 藤原 百合, 長谷川 幸代, 手塚 征宏, 光安 岳志, 中村 典史, 中村 誠司
    2023 年 48 巻 3 号 p. 217-224
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり
    背景:口蓋化構音(Palatalized misarticulation:以下,PM)は,様々な舌と口蓋の接触パターンがみられる。聴覚判定による構音位置の逸脱の程度を評価するために,PMのbacking score(以下,BS)による聴覚判定評価を試みた。
    目的:PMのBSの聴覚判定の信頼性を検討し,PMの分類を検討すること。
    研究デザイン:構音に関する複数の聴取者による段階づけを利用した聴覚評価の前向きの比較研究。
    方法:4名の研究参加者(音声学専門職2名と言語聴覚士2名)は,口蓋形成術後患者の55名のPMの日本語の音声資料を評価した。聴取者は,5つの単音節のVCV音声サンプルである[asa],[ata],[oto],[utsu],[iɕi]について,国際音声記号(IPA)を用いて,後ろ寄りの記号(-)あり/なしの2種類のBSパターンを転記した。1週間後に聴覚判定を繰り返し,評価者内信頼性を評価した。また,評価者間信頼性も算定した。
    結果:後ろ寄りの記号を使用せずにbackingの誤りをコーディングした場合,より高い評価者内および評価者間信頼性が観察された。信頼性は,破裂音のVCV[oto]で最も高く,摩擦音のVCV[iɕi]で最も低くなった。また,PMの構音位置については,軟口蓋,硬口蓋,後部歯茎の3つの部位が認識された。
    結論:後ろ寄りの記号を用いないBSの導出は,PMのエラーを細分化するのに有効な手段であると思われる。しかしながら摩擦音の場合,BSの聴覚判定の精度には限界がある。今後の研究では,EPGのような聴覚・視覚評価を含めることで,測定者の精度と誤りのコーディングの信頼性を向上させることができるかどうかを検討する必要がある。
    また,転記所見から,PMは後部歯茎化,硬口蓋化および軟口蓋化に細分類が可能であることが示唆された。
症例
  • 内山 沙姫, 石井 武展, 坂本 輝雄, 末石 研二, 矢澤 真樹, 坂本 好昭, 玉田 一敬, 西井 康, 小方 清和
    2023 年 48 巻 3 号 p. 225-233
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/08
    ジャーナル 認証あり
    口唇口蓋裂患者の多くは,上顎歯列弓の狭窄や,永久側切歯の先天欠如を伴うことが多く,早期に矯正治療を開始し専門医によるチームアプローチが必要となる。顎裂に対しては,犬歯の萌出誘導のため腸骨海綿骨移植を行っている。しかし顎裂幅が大きいと,移植骨片の安定性が悪いため骨架橋を得られないことがある。そこで近年,Bone transportの概念を応用した,IDO(Interdental Distraction Osteogenesis)により,幅の広い顎裂を縮小する方法が報告されている。今回,顎裂幅の広い口唇裂・口蓋裂患者に対して,顎裂幅の縮小を目的として,IDOを用いて上顎歯槽骨の移動,および矯正歯科治療を行い,良好な結果を得たので,その概要について報告する。
令和4年度若手研究者海外発表奨励制度 成果報告書
feedback
Top