日本口蓋裂学会雑誌
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統計
  • 有村 友紀, 大久保(田畑) 香織, 片岡 伴記, 天野 克比古, 兵藤 藍子, 三上 彩可, 西谷 悠希, 植田 紘貴, 上岡 寛, 飯田 ...
    2025 年50 巻3 号 p. 153-164
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル 認証あり
     骨延長術は1905 年に報告されて以来,さまざまな領域で使用されている。口唇裂・口蓋裂患者は初回手術の影響などで上顎劣成長をきたすことがあり,歯科矯正治療のみで改善が図れない場合は外科的治療を行う必要がある。また,口唇裂・口蓋裂患者は成長障害の原因である口蓋粘膜や,鼻咽腔閉鎖機能を考慮すると,瘢痕の抵抗力に対抗しながら緩徐に骨の移動を図る骨延長術が有用である。今回,われわれは骨延長術を用いて上顎骨の形態的,位置的改善を図った口唇裂・口蓋裂症例について臨床的検討を行ったので報告する。
     2012 年1 月から2024 年1 月までに上顎骨延長術を行った口唇裂・口蓋裂患者29 名33 手術を対象とした。裂型は両側性唇顎 口蓋裂(BCLP):10 例,片側性唇顎口蓋裂(UCLP):16 例,口蓋裂(CP):3 例であった。術式別内訳は上顎前方部骨延長術(MASDO):14 例,上顎側方骨延長術(TMDO):14 例,Le FortⅠ骨延長術(LF1DO):5 例であった。実施した骨延長術はMASDO,TMDO,LF1DO であった。
     裂型別術式の内訳はBCLP ではMASDO:5 例,TMDO:4 例,LF1DO:3 例,UCLP ではMASDO:9 例,TMDO:9例,LF1DO:0 例,CP ではMASDO:0 例,TMDO:1 例,LF1DO:2 例であった。上顎骨延長術ならびに術後の矯正治療で前歯部の正常被蓋が獲得された症例は16 例であった。
     骨延長術は顎変形症の手術と同様の側面と歯列のDiscrepancy の改善など矯正治療での問題点を改善する外科支援矯正術の側面の両面を有している。一次手術の技術向上により上顎劣成長の症例は減少しているものの,一期的な上顎骨の移動では困難な口唇裂・口蓋裂にみられる上顎劣成長に対して,骨延長術は有用な術式であると考えられた。
  • 吉永 薫, 渡邉 佳一郎, 峯田 一秀, 美馬 俊介, 坂本 幸, 近藤 英司, 日浅 雅博, 堀内 信也, 橋本 一郎, 田中 栄二
    原稿種別: 統計
    2025 年50 巻3 号 p. 165-172
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル 認証あり
    【目的】徳島大学病院では,2017 年より口蓋形成術式を従来のPushback 法からFurlow 法あるいはTwo flap 法へと変更している。本研究では,口蓋形成術の術式変更が,5歳時における乳歯列期の咬合関係,顎裂部の状態,および鼻咽腔閉鎖機能に及ぼす影響について評価することを目的とした。【方法】2000 年から2020 年までに徳島大学病院で口蓋形成術を施行した片側性唇顎口蓋裂患者26 例を対象とした。2000 年から2016 年までにPushback 法にて口蓋形成術を施行した15 例をP群,2017 年から2020 年までにFurlow 法あるいはTwo flap 法にて口蓋形成術を施行した11 例をF・T群とした。前後的顎間関係の指標としてANB 角,overjet,overbite,5-Year-Olds′ Index を用いた。鼻咽腔閉鎖機能については,口蓋咽頭間の距離,軟口蓋の厚さおよび長さ,咽頭の深さを測定するとともに,鼻からの呼気の漏出の有無についても評価した。【結果】P群ではF・T群と比較して,ANB 角およびoverjet が有意に小さく,5-Year-Old′s Index が大きい傾向を示し,骨格性下顎前突を呈しやすい傾向がみられた。F・T群では1症例をのぞく10 症例が正被蓋を示したのに対し,P群では1症例をのぞく14 症例が逆被蓋を呈していた。【考察】本研究では,口蓋裂形成術におけるPushback 法とFurlow 法およびTwo flap 法の前後的顎間関係および鼻咽腔閉鎖機能に及ぼす影響を比較検討した。その結果,Furlow 法およびTwo flap 法は術後の上顎骨の成長発育を促し,鼻咽腔閉鎖機能においても劣らない可能性が示唆された.
臨床
  • 野尻 尚子, 真野 樹子, 大塚 雄一郎, 花澤 清紀, 進藤 彩花, 岡澤 仁志, 大岡 貴史, 須田 直人
    原稿種別: 臨床
    2025 年50 巻3 号 p. 173-179
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル 認証あり
    唇顎口蓋裂児に対する術前顎矯正は,乳児期の哺乳機能の障害を改善し,裂隙の整形を目的とする治療である。明海大学病院では,CAD/CAM(computer-aided design/computer-aided manufacturing)技術を利用して術前顎矯正で用いる口蓋床を作製している。このようなデジタル化により患児や保護者の利便性は向上しているものの,作製された装置の哺乳機能に対する効果には不明な点がある。そこで,片側性唇顎口蓋裂乳児より得られたデジタルデータを用いて,裂隙や口蓋へのリリーフ量を変えて口蓋床の哺乳機能に与える影響を検討した。
     対象は,当院矯正歯科を受診した5 例(男児3 例,女児2 例:右側唇顎口蓋裂2 例,左側唇顎口蓋裂3 例)とした。5 例に対し口腔内スキャナーにより口腔内のSTL データを採得し,歯科用CAD ソフトを用いて裂隙と口蓋に対し複数のリリーフを行った。その後,3D プリンターを用いて出力された複数の口蓋床を患児に装着し1 日総哺乳量(mL)を記録し,リリーフの影響を検討した。
     採得されたSTL(standard tessellation language)データは,顎堤部分に加え鼻中隔下端の撮像精度に優れ,口蓋深部の形態再現性が高かった。そのため,裂隙により変形し対称性が失われた口蓋形態を正確に再現し,リリーフすることが可能であった。製作された口蓋床は床の厚みを2.0 mm に統一し,複数のリリーフ量を与えることで異なった口蓋高径が付与された。このうちリリーフにより口蓋高径を8.0 mm とした口蓋床は全例で装着可能で,1 日総哺乳量は健常乳児の80%以上であった。
     術前顎矯正治療で使用される口蓋床作製のデジタル化により,リリーフ量と口蓋形態を数値化し,適切な口蓋高径を付与した口蓋床の製作が可能となった。デジタル技術は,印象材の嘔吐や誤嚥のリスクを回避できるだけでなく,片側性唇顎口蓋裂乳児の哺乳機能の向上にも寄与すると考えられる。
若手研究者海外発表奨励制度 成果報告書
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