日本口蓋裂学会雑誌
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統計
Presurgical Nasoalveolar Molding(NAM)治療に対する保護者アンケート調査
―満足度と現状―
山本(佐藤) 友紀菱田 桃子倉林 仁美泉 朝望両川 ひろみ山屋 祥子大久保 文雄土佐 泰祥門松 香一吉本 信也保阪 善昭槇 宏太郎
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キーワード: NAM, 術前顎矯正, 口蓋裂, 口蓋床
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2011 年 36 巻 3 号 p. 191-201

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抄録

Presurgical Nasoalveolar Molding治療(以下NAMと略す)は口唇口蓋裂乳児に初回口唇閉鎖手術前に行う術前顎矯正治療である。本研究はNAM治療をとりまく環境及び口唇口蓋裂患児保護者のNAM治療に対する評価と負担状況について調査した。 2004年4月から2008年1月までに昭和大学口蓋裂診療班にてNAM治療後に初回口唇鼻形成術を終了した患児の保護者145名に,NAM治療前後,初回口唇鼻形成手術後の状況についてのアンケート調査を行い回答率86.2%にて以下の結果を得た。
1.口唇口蓋裂の診断時期は60%が出生後と回答した。出生前診断を受けた家族においてその診断時期は妊娠後期の28週以降が最も多かった。
2.患児家族の居住地は首都圏含む関東区域が92.0%を占め,来院の経緯は昭和大学形成外科からが最も多かった。通院手段は車が最も多く52.8%であり,通院時間は片道平均98分(18分/徒歩~330分/飛行機使用)であった。
3.NAM治療中にトラブルがあったと回答した家族は88.0%に及び,トラブルの内容はテープかぶれが最も多かった。
4.NAM治療中に一度でも中断したいと思ったことがある,と答えた保護者は44%に上り,治療中のトラブルの発生と正の相関が認められた(γ = 0.481,p < 0.01)。
5.治療の満足度調査ではNAM治療結果に79.2%,初回口唇鼻形成手術結果に72.0%が満足,まあ満足と回答しており,NAM治療及び初回口唇鼻形成手術の満足度には正の相関が認められた(γ = 0.537,p < 0.01)。
6.初回口唇鼻形成手術及び口蓋形成手術後にNAM治療は効果があったと思う,まあ思うと答えた保護者は88.0%に上り,同様に86.4%の保護者がNAM治療をすすめる,まあ勧めると回答していた。
7.家族が感じるNAM治療の適正料金では,口唇形成手術費用の1/3~1/2程度が良いと答えた家族が43.2%(54人)と最も多かった。
以上の結果より,NAM治療に伴う通院や装置管理に対する患児家族らの負担が明らかになると共に同時に治療効果も感じており,きわめて高いNAM治療への支持があることがわかった。

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© 2011 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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