日本口蓋裂学会雑誌
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原著
二段階口蓋形成手術法の軟口蓋形成にFurlow法を施行した片側性完全唇顎口蓋裂児の永久歯列弓形態
五十嵐 友樹飯田 明彦小野 和宏朝日 藤寿一齋藤 功高木 律男
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2012 年 37 巻 3 号 p. 210-219

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抄録

二段階口蓋形成手術法(二段階法)において,言語と顎発育のより良い治療成績を得るために導入したFurlow法を用いて軟口蓋形成を施行した片側性完全唇顎口蓋裂児(F群)のHellmanの歯齢IIICにおける永久歯列弓形態を歯列模型計測により評価し,従来のPerko法施行症例(P群)ならびに健常児(C群)の結果と比較した。
結果は以下の通りである。
1.上顎歯列弓幅径は,上顎結節点間距離でF群がP群およびC群より小さかった。犬歯から小臼歯部の幅径はF群とP群が同様であったが,C群と比較するとわずかに狭窄していた。
2.上顎歯槽弓長径は,F群がP群に比し大きい傾向があり,破裂側の犬歯尖頭から上顎結節点までの距離がC群より長く,F群の破裂側犬歯はC群より前方に位置していた。歯列弓長径はF群とP群で差はなかったが,前方部においては両群ともC群に比し小さかった。
3.下顎歯列弓幅径は,F群とC群との間に差はなかったが,第一大臼歯間幅径のみP群がF群およびC群より大きかった。
4.下顎歯列弓長径は3群間に大きな差はなかった。
5.前歯部反対咬合あるいは臼歯部交叉咬合はF群で17名中2名(11.8%)に認められたのに対し,P群では29名中11名(37.9%)にみられた。
以上,F群の歯列弓形態はP群と比較し術式の特徴を反映したわずかな違いが生じていたものの,大きな差はなく,C群に近似していた。咬合状態もP群に劣ることなく,良好な顎発育が得られていた。良好な言語成績と併せると,Furlow法は二段階法の軟口蓋形成法として有用であると考えられた。

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© 2012 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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