日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
バルブに電極を埋め込んだスピーチエイドによる鼻咽腔閉鎖機能賦活訓練
大平 章子吉増 秀實石渡 寿夫打田 年實大山 喬史
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 14 巻 3 号 p. 412-420

詳細
抄録
成人に至ってから初回口蓋形成術を受け,術後も鼻咽腔閉鎖機能不全を呈したために,スピーチエイドを装着した37歳の口蓋裂症例に対し,鼻咽腔閉鎖機能賦活を目的として,バルブ部分に電極を埋め込んだスピーチエイドを用いた訓練を行った。装置は,スピーチエイドのバルブ部分にエレクトロパラトグラフの人工口蓋用の電極を9個埋め込んだものである。バルブと軟口蓋・咽頭壁との接触状態が画面に表示される。その結果,以下の知見を得た。
1.20回の訓練で・文章レベルまでの鼻咽腔閉鎖運動を誘導することができ,対象はスピーチエイド装着者に限定されるが,鼻咽腔閉鎖機能賦活訓練として,有効であることが示された。
2.鼻咽腔閉鎖は,嚥下,母音,子音の順に獲得された。
3.同様の視覚的鼻咽腔閉鎖機能賦活訓練法である fiberscopic feedback 訓練法と比較して,簡便な方法であり,長時間の自然な状態での発話が得られ,また,自習も可能である点で優れていると考えられた。
4.表示画面がバルブ部分に付着する分泌物等の影響を受け易く,訓練中にチェックが必要である等の難点があり,特に訓練初期には,ファイバースコープとの併用が望ましいと考えられた。
著者関連情報
© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
前の記事
feedback
Top