日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
口唇裂・口蓋裂の発生機序と発生原因
高橋 庄二郎
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 15 巻 2 号 p. 49-61

詳細
抄録

口唇裂'口蓋裂は世界のすべての民族にみられる,最も頻度の高い顎顔面の先天奇形であり,日本人は理由は明らかでないが,口唇裂・口蓋裂の発生頻度の最も高い民族である.
口唇裂・口蓋裂の発生機序と発生原因に関する最近の考え方が述べられた.口唇裂'口蓋裂の成因は異質性であり,そのため発生機序も複雑である.一般に,一次口蓋の破裂である口唇裂は内側鼻突起と外側鼻突起の下方端における癒合不全によって,二次口蓋の破裂である口蓋裂は口蓋板の接触不全によって生じると考えられている.
口唇裂・口蓋裂に関連する症候群を除く通常の口唇裂・口蓋裂は一般に多因子しきいモデルで説明されている.日本人における口唇裂・口唇顎口蓋裂と単独口蓋裂を発端者とする家系調査の結果は多因子遺伝の予言によく一致し,前者の分離比分析の結果は弧発例の84.6%が単純な劣性遺伝様式で説明されえないことを示した.一方,実験動物において口唇裂・口蓋裂を誘発する環境因子が数多く見い出されている.ヒトでは妊娠母体の風疹ウイルス感染とステロイド剤および抗てんかん剤の服用が注目されるべきである.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
次の記事
feedback
Top