日本口蓋裂学会雑誌
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日本と中国における口唇裂口蓋裂の遺伝疫学的比較
検討:九州大学歯学部と上海第二医科大学口腔医学院における受診患者とその血縁者について
栗栖 浩二郎田代 英雄邱 蔚六袁 文化
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1992 年 17 巻 1 号 p. 70-79

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抄録

1973年より1984年までに九州大学歯学部付属病院口腔外科を受診した974名の患者とその血縁者7 ,427名(日本)と上海第二医科大学付属第九人民病院口腔顔面外科を受診した1,055名の患者(1980年以前の出生)とその血縁者19,937名(中国)についての口唇裂口蓋裂に関する調査結果の一部を用いて,日本と中国との遺伝疫学的な比較検討を行い,以下の結果を得た.
裂型別頻度については,口唇裂は中国が高く,口唇口蓋裂は日本が高かった.しかし,口唇(口蓋)裂と口蓋裂では,日本と中国の頻度は近似していた.性別頻度については,日本,中国とも口蓋裂以外は男性の頻度が高かった.口唇裂口蓋裂における男性の頻度は,日本に比べ中国が著しく高かった.近親婚率については,各裂型とも日本と中国の値は近似していた.また,日本,中国とも,口唇(口蓋)裂と口蓋裂との間に差は無かった.同胞罹患率については,両親非罹患の揚合は,口唇(口蓋)裂,口蓋裂とも,日本と中国の値はほぼ等しかった.片親罹患及び同胞罹患の場合は,口唇(口蓋)裂,口蓋裂とも,日本と中国はともに高い値を示したが,いずれも例数が少なく,両国間に有意差は無かった.日本,中国とも,口唇(口蓋)裂と口蓋裂の遺伝様式は,主遺伝子よりも多因子遺伝のモデルのほうがより適合性が高いと考えられた.易罹病性の遺伝率については, 日本と中国の値は,口唇(口蓋)例でそれぞれ55,53%,口蓋裂で63,74%であり,互いに比較的近似していた.
以上の結果から,両集団は,裂型別頻度や性別頻度の一部に差がみられるものの比較的類似性が高いと考えられる.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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