日本口蓋裂学会雑誌
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唇顎口蓋裂患者に対するHotz型人工口蓋床の臨床的効果
哺乳ならびに歯槽形態・外鼻形態に関する検討
西原 一秀
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1993 年 18 巻 3 号 p. 251-271

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抄録

鹿児島大学歯学部附属病院第二口腔外科における口唇裂口蓋裂患者の治療体系にHotz床を導入し7その効果を検討するために以下の分析を行った.
Hotz床を装着した唇顎口蓋裂患者(Hotz床装着群)のHotz床装着前後における1日哺乳量,1日のべ時間,哺乳規定時間を比較するとともに,出生時から生後6カ月までの体重変化をHotz床を装着しなかった唇顎口蓋裂患者(非装着群)と比較検討した.また,Hotz床装着時と口唇形成術直前の上顎歯槽形態を石膏模型上で計測し変化を分析した.さらに,口唇形成手術直前から術後3カ月までの外鼻形態変化を分析し,Hotz床が口唇形成術に及ぼす影響についても検討し以下の結果を得た.
Hotz床装着によって1日哺乳量は有意に増加し,哺乳規定時聞および1日のべ時間は有意に短縮され,Hotz床が哺乳障害改善に有効であることが確認された.しかし,Hotz床装着群と非装着群との体重比較ならびに両群問の男女別体重比較ではいずれの月齢においても有意差はなかった.Hotz床装着群における口唇形成術直前の上顎歯槽形態はHotz床装着直前に比べ前後径ならびに前方部幅径,後方部幅径が有意に増大,顎裂幅は有意に減少し,Hotz床による歯槽形態改善が確認された.
Hotz床装着群では非装着群に比し,口唇形成術直前の健側鼻翼基部の外方偏位が有意に改善されa術前の患側鼻孔最大径が小さくなっている傾向を認めた.内眼角間距離ならびに鼻柱基部の偏位は両群間に有意差を認めなかった.
口唇形成手術による患側鼻翼基部の内方移動は,Hotz床装着群が非装着群より少なV・傾向がうかがわれ,術後3カ月目にHotz床装着群では左右鼻翼基部がほぼ対称の位置となった.

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