日本口蓋裂学会雑誌
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顎裂部への二次的自家海綿骨細片移植術における移植骨の術後吸収の評価
嶋 香織緒方 克哉鈴木 陽中村 典史本田 康生後藤 圭也中島 昭彦大石 正道
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1998 年 23 巻 4 号 p. 203-213

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抄録

九州大学歯学部第一口腔外科において1987年から1996年の問に,二次的自家海綿骨細片移植術が施行された唇顎裂および唇顎口蓋裂患者108例,133顎裂について,術後の移植骨の吸収の観点から治療成績を評価し,顎裂部への二次的自家海綿骨細片移植術の予後に影響を及ぼす因子を検討した。
治療成績の評価には,術前,術直後,術後6か月以上経過して撮影されたX線写真を用い,移植により形成された骨架橋の垂直的高さの変化より骨吸収率を算出した。さらに,術後に移植骨の吸収に影響を及ぼす因子として,手術時年齢,裂型,犬歯の萌出状況,手術目的を取り上げ,骨吸収の程度との関連について検討を加えた。
12歳以下の若年者において骨吸収が少なく,裂型別には両側性症例に比べて片側性症例で良好な成績が得られた。犬歯の萌出状況については,犬歯が歯槽骨から萌出し始めて歯根が未完成な場合に移植骨の吸収が少ない傾向がみられた。手術目的との関係では,術後に移植骨内に犬歯などの隣接歯牙を萌出誘導または矯正的歯牙移動を目的とした場合において良好な成績がみられた。
以上の結果より,顎裂部への二次的自家海綿骨細片移植術の予後には,全身的ならびに局所的な骨改造活性と同様に,移植骨に持続的に加えられる生理的刺激の有無が大きな影響を及ぼすものと考えられた。

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