日本口蓋裂学会雑誌
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唇裂手術前後における片側性唇裂患者ロ唇外鼻形態の三次元的分析
朝田 重史
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1998 年 23 巻 4 号 p. 257-272

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抄録

同一術者,同一術式による口唇形成一次手術を施行した片側性唇裂患者28例(唇顎口蓋裂群9例,完全唇顎裂群11例,不完全唇裂群8例)の顔面形態を,手術直前,術後2週,1か月,3か月,1年目に非接触三次元曲面形状計測装置を用いて計測し,術前の口唇外鼻形態の特徴ならびに術後経時的形態変化を裂型別に分析し,次の結果を得た。
1.術前の外鼻は,3群いずれも患側鼻翼が健側より内後下方に位置した。外鼻の歪みと偏位の程度は唇顎口蓋裂群が最大で以下,完全唇顎裂群,不完全唇裂群の順であった。手術により鼻翼は両側共に内方に移動した。患側鼻翼が大きく前内方へ移動し,健側より前方又は同位置となり,鼻尖と鼻翼基部は正中近くに移動し,非対称が改善され,術後2週から1年まで大きい変化はなかった。
2.術前には,3群いずれにおいてもキューピッド弓中点は健側に大きく偏位しているのに対し,口角点は患側が健側より後外方に位置した。
術後のキューピッド弓中点はほぼ正中に位置し,3か月ないし1年後まで安定していた。前方突出は完全唇顎口蓋裂群が最も小さく,Hotz床の影響が示唆された。口角点は,手術によって患側は大きく,健側はわずかに内前方に移動し,3か月後にも完全唇裂群,唇顎口蓋裂群に口角点の左右差が残った。
3.外鼻領域の表面積は,術前には3群いずれも患側が健側より大きい傾向を示し,唇顎口蓋裂群の患側表面積が最大であった。術後は,3群とも左右の面積がほぼ等しくなり,鼻変形が改善されていることが確認された。
4.口唇外側領域の面積は,術前術後を通じ3群いずれも患側が健側より小さく,術後口唇領域の面積も患側が小さい傾向が持続した。

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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