顎裂に隣接する歯には数形態,萌出方向の異常などが頻発することが知られている.近年,顎裂部への二次的骨移植術が口唇口蓋裂治療の一貫として取り入れられるようになり,歯の異常が軽微であれば,顎裂骨移植部への歯の移動などで,形態および機能の回復が図れるようになってきた.しかし,歯の欠如などを伴うものでは顎裂部の咬合再建が困難な症例もあると思われる.これまで,そのような症例に対しては主に補綴治療が行われてきたが,隣在歯の切削や負担過重は避けられない問題であった.一方で近年,自家歯牙移植や歯科インプラントが欠損補綴の一法として発展してきた.そこで今回,顎裂の骨移植部に対し即時自家歯牙移植を5例,凍結自家歯牙移植を2例,歯科インプラントを2例に応用し咬合再建を行った.
全例,顎裂部には腸骨からの二次的骨移植が行われていた.移植骨の垂直的幅径は8~16mmであった.移植あるいはインプラントを行った部位の歯はすべて上顎側切歯で欠如か,倭小歯のため抜歯されたものだった.骨移植から植立までの期間は4~50か月であった.結果は,即時自家歯牙移植および歯科インプラント症例に異常経過はなく,これらは有用であると思われた.凍結自家歯牙移植症例の2例は,生着は良好であったが,部分的な置換性歯根吸収が認められ,今後の更なる検討が望まれた.