片側唇裂患者における外鼻および上唇各部の表面積について
1983 年 8 巻 2 号 p. 171-195
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1983 年 8 巻 2 号 p. 171-195
未手術片側唇裂患者の外鼻および上唇各部に組織の欠損または過剰が存在するかどうか,また唇裂手術前後で外鼻および上唇各部の組織量にどのような変化が生じるかということについて検索した研究は少ない.そこで著者は,片側完全唇裂70例と不完全唇裂60例の全身麻酔下における唇裂手術執刀直前に,無圧流動印象を行って調整した顔面模型を用い,健側および患側の外鼻および上唇各部の表面積をHuddartらの軟性レジン圧接法によって計測した.またTennison-Randall法またはMillard法手術を施行した患者73例の術直後における顔面模型を調整し,手術前後における各部表面積の変化を検索した.
その結果,術前の鼻背部および外鼻表面積は完全唇裂,不完全唇裂ともに健側よりも患側において大きく,鼻翼部・上唇側方皮膚部・人中部および上唇皮膚部の表面積は健側よりも患側の方が小さく,いずれも有意の差が認められた.なお患側上唇全側方皮膚部表面積は完全唇裂では健側上唇側方皮膚部よりも明らかに小さかったが,不完全唇裂では両者ほぼ同様の値を示した.また健側と患側の鼻翼部、上唇側方皮膚部および上唇皮膚部,健側鼻背部および外鼻・患側上唇全側方皮膚部および人中部などの表面積は不完全唇裂よりも完全唇裂において小さく,患側鼻背部および外鼻表面積は不完全唇裂より完全唇裂において大きく、いずれも有意の差が認められた.
さらに唇裂手術によって,完全唇裂では患側鼻背部および外鼻,健側人中部の表面積は明らかに減少し,健側鼻翼部・健側と患側の上唇側方皮膚部および上唇皮膚部、患側人中部,上唇全側方皮膚部などの表面積は増大した.また不完全唇裂では患側鼻背部,外鼻および上唇全側方皮膚部の表面積は術後有意に減少し,患側人中部は増大した.Tennison-Randall法とMillard法による手術前後の各部表面積の変化はほぼ同様の傾向を示したが,変化量において両手術法間に多少の相違が認められた.
