抄録
鼻咽腔閉鎖不全による構音障害は,口蓋裂や外傷などの形態的異常によるものが大多数を占め,その他形態的異常をともなわず種々の原因により,機能的な鼻咽腔閉鎖不全を生じるものとがある.重症筋無力症における仮性麻痺性構音障害も後者の1つとして挙げられており,その障害の時間的変化は比較的興味深い.今回,著者らは16歳女性の仮性麻痺性構音障害で,いわゆる疲労性鼻咽腔閉鎖不全症の1例を経験し,その発音動態を流体力学的な観点より検索し興味ある結果をえた.
以上の結果より流体力学的鼻咽腔閉鎖機能検査が本症の診断および治療経過における客観的観察の一指標として有用な意義をもつものと考えられた.