主催: 東北神経心理懇話会
会議名: 東北神経心理懇話会
回次: 32
開催地: 仙台
開催日: 2021/02/06 -
p. 27-31
症例は54歳右利き男性。失書、失算を発症し、事務職の遂行困難となった。右上肢のごく軽度のジストニアと筋強剛が疑われる以外は運動症状は乏しかった。皮質性感覚障害(手掌書字覚)は右優位に低下していた。発症から1年後の受診時には注意の低下、ロゴペニック型失語の他、失算、漢字も仮名も顕著に障害された失書、失算、観念性失行、観念運動性失行、右手優位の肢節運動失行が顕著で仕事の遂行を大きく阻害したと推察された。検査上では記憶障害も認められたが、日常生活では健忘症は顕在化していなかった。頭部MRIの左優位に両側の頭頂葉の皮質の萎縮が認められ、99mTc-ECD SPECTでは、左の角回から前方に広がる血流低下が顕著で、DaT Scanでは、左線条体全体の機能低下が疑われた。11C-PiB PETの集積は陽性であった。漢字・仮名とも顕著な失書や多彩な失行には、角回より広範に背側・腹側に広がる機能低下・変性があることが想定された。バイオマーカーと合わせ、背景病理は、大脳皮質基底核変性症(Corticobasal degeneration、CBD)や後部皮質萎縮症(Posterior cortical atrophy)の原因として多い(Alzheimer disease、AD)を推定した。