抄録
繰り返しテストを行うことで、反対の現象が生起しうることが知られている。一つは記憶成績が向上する記憶高進、もう一つは記憶成績が低下する検索誘導性忘却である。本研究では、検索誘導性忘却のパラダイムに基づき、繰り返しテストを行うことで、記憶高進ならびに検索誘導性忘却のそれぞれ、ならびに両現象の現象が同時に生起しうるか検討を行うこととした。大学生59名の協力を得て、学習課題として絵画分類課題を36単語分行い、手かがリ再生テストを5回繰り返した。なお、2回目3回目のテストは、検索練習段階に相当し、9単語分のみのテストを行った。その結果、1回目より4,5回目のテスト成績の方がよく、記憶高進が生起していることが確認された。一方、4,5回目のテストにおいて、Rp-項目とNRp項目の間には成績の差が認められず、検索誘導性忘却が生起したとは言い切れない結果となった。