日本認知心理学会発表論文集
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選択された号の論文の108件中1~50を表示しています
  • 帰納バイアスを視点とする分析
    本田 秀仁, 香川 琉奈
    セッションID: O1-1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    私たちは日常的な経験や情報伝達から、身長と体重、日付と気温など、変数間の関係性を学習する。しかし、人間はさまざまな認知バイアスを持っており、変数間の関係性を学ぶ際も例外ではない。Kalishら(2007)は、2つの変数の関係性を学ぶ際、人間は無意識に正の線形関係を仮定する強い帰納バイアスを持つことを示した。この知見は、2変数間の関係性に依存して、私たちの学習のしやすさに違いが存在することを示すものである。本研究では、Kalishら(2007)が使用した知識伝達課題を用いて、人間の帰納バイアスが2変数間に関係性がないことの学習に与える影響を理論的、また実験的に分析した。結果として、帰納バイアスの存在により、2変数間に関係性がないことを学習することが困難であることが明らかになった。具体的には、実際には相関が存在しない変数間に誤って正の相関を見出し、またこのような誤った認知が関係性の学習を促進することが明らかになった。
  • ―賭け方策の学習過程のモデリングとシミュレーション―
    田岡 大樹
    セッションID: O1-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    勝ちよりも負けが見込まれるギャンブルにおいて多額の賭けを行うことを無謀な賭け (reckless betting) と呼ぶ。先行研究 (Cummins et al., 2009) では、Acey-Deucey Taskにおいて事前に多くの勝ちを経験するとその後に無謀な賭けが促進されることが報告されている。しかしながら、その背後にあるメカニズムは明らかでない。本研究では、この現象を事前の勝敗経験に基づいてギャンブルの勝敗を予測する過程と、期待複利効果の最大化を目的として賭け方策を学習する過程としてモデル化し、計算論的説明を試みた。先行研究と同様の実験事態を想定したデータ生成シミュレーションを行ったところ、多くの勝ちを経験することでリスク志向的な方策が、多くの負けを経験することでリスク回避的な方策がそれぞれ学習され、先行研究と同様の結果が再現された。モデルパラメータを様々に変えて生成した人工データに対してモデルを当てはめたところ、学習率以外のパラメータについて概ね良好なパラメータリカバリー性能が確認された。
  • : A cross-cultural study of British, French, and Japanese
    山 祐嗣, Bourlier Maxime, Salvano-Pardieu Veronique, I. Manktelow Ken
    セッションID: O1-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    In general, a negative association has been reported between an analytical cognitive style and religiosity. On the other hand, it is plausible that Easterners, known as dialectical thinkers, accept religiosity and its religious skepticism dialectically. British, French and Japanese people participated in the present web survey. They were given questionnaires on religiosity (the subscales were pro-religiosity, divine protection, and retribution), anti-religiosity, wisdom judgement on religious dialectic thinking, and thinking style (the subscales were preference for intuitive thinking (PIT), preference for effortful thinking (PET), actively open-minded thinking (AOT) and close-minded thinking (CMT)). An individual who agrees or disagrees with both religiosity and anti-religiosity is considered a religious dialectical thinker. We found that (1) the retribution score of the Japanese was higher than those of British and French, (2) the Japanese were more religious dialectical thinkers than British and French, (3) in general, the religious belief of the British and French was suppressed by AOT, whereas the religious belief of the Japanese was enhanced by PIT. We conclude that the suppression of religious belief by the analytic cognitive style is characteristic to Westerners, and that Japanese are more religious dialectical thinkers than Westerners.
  • 太田 直斗, 細川 亜佐子, 望月 正哉, 北神 慎司
    セッションID: O1-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    ピクトグラムに代表される視覚シンボルの中で,JIS絵記号は本邦の代表的な標準化された視覚シンボル群である。視覚シンボルのわかりやすさは意味明瞭度という指標で数値化されるが,網羅的なJIS絵記号の意味明瞭度データベースは存在しない。さらに,最近の研究では,視覚シンボルの意味明瞭度はシンボル化される概念の特性にも影響されることがわかっている。そこで本研究は,JIS絵記号の意味明瞭度,シンボルが表す概念と身体との相互作用の容易さを示す指標のBOI(body-object interaction)および,シンボルが表す概念の社会性を反映する指標を収集した。意味明瞭度を従属変数とした重回帰分析の結果,心像性等の値を統制した場合,BOIと社会性は意味明瞭度の分散を有意に説明することから,視覚シンボル理解に対するこれらの情報の関与が示唆されたが,今後は,この関与の詳細なメカニズムの検討が求められる。
  • 三木 研作, 竹島 康行, 木田 哲夫, 柿木 隆介
    セッションID: O2-1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    今回、表情を伴う顔画像を提示した際にみられる誘発成分である視覚情報の初期の情報処理過程を反映しているP100成分と顔認知過程を反映しているN170成分を用いて、経験やトレーニングによるおもてなしの熟練が表情認知過程にもたらす変化を検討した。旅館で接客業に携わっている女性(おもてなし群)と接客業に関わったことのない女性(コントロール群)について、無表情の顔、笑った顔、怒った顔を提示した際のP100成分ならびにN170成分を比較検討した。左右後頭部に明瞭にみられたP100成分に関しては、その頂点潜時に2群間で有意な差がみられなかった。一方、P100成分の最大振幅は、コントロール群に比べおもてなし群で有意に大きくなっていた。特に、無表情の顔に対しては右後頭部で、怒った顔に対しては、左右後頭部で、おもてなし群のほうが有意に大きくなっていた。また、左右側頭部で明瞭にみられたN170成分に関しては、その頂点潜時ならびに最大振幅には2群間で有意な差はみられなかった。これらの結果から、経験やトレーニングによるおもてなしの熟練が表情認知過程の早い段階に変化をもたらす可能性が示された。
  • 松田 憲, 畔津 憲司, 齋藤 朗宏
    セッションID: O2-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    選択のオーバーロード現象とは,多過ぎる選択肢によって選択行動が抑制される効果をさす。本研究ではパワープライミングによって参加者の促進焦点ないし予防焦点を高めることが,選択のオーバーロード現象の生起にどのような影響を及ぼすかを検討した。103名の女性参加者には,パワープライミング課題(ハイパワー:促進焦点,ローパワー:予防焦点)の実施後にコスメ商品を3種類ないし10種類呈示し,欲しい商品の1~3位までの順位付けとその順位付けに対する満足度と後悔度の6段階評定を求めた。呈示する商品は,価格帯(高価格帯:デパコス,低価格帯:プチプラ)と商品属性(促進型商品:リップ,予防型商品:ファンデーション)をそれぞれ操作した。実験の結果,促進型商品は両パワー操作条件で高価格のときに選択のオーバーロード現象が生起した。一方で予防型商品は,ハイパワー操作を受けた参加者では両価格帯で選択のオーバーロード現象が生起したのに対して,ローパワー操作においては低価格のときのみで生起が見られた。
  • 高橋 奈里, 佐藤 優太郎, 横坂 拓巳, 小鷹 研理
    セッションID: O2-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    ラバーハンド錯覚は,感覚間に同期した刺激を付与することによって,所有感の変調を誘発するものである.我々は,こうした錯覚原理を適用するものとして,自分と他人の指を近接空間で同期的に触れることで,自他の指が接合したような感覚が得られることを報告している(ダブルタッチ錯覚:小鷹他,2021).本研究では新たに,同一人物の左右の指の同じ部位への同期的な刺激,つまり自己の両側身体へのダブルタッチがどのような身体の変調を生むかを検証する.両側身体への刺激を与えることで身体感覚を変調させる錯覚の一例に,ベルベットハンド錯覚がある.我々の仮説では,この錯覚に特徴的な触感は,ダブルタッチ錯覚と同様に,両者の身体部位が相互に融合/接合したような感覚に伴う副作用であると考える.加えて,このような接合感覚が生起する要因として,両側身体であること及び近接空間であることが重要だと考える.本稿では,被験者実験により以上の仮説について検証を行うことを目的とする.
  • 潮谷 颯万, 中山 友瑛, 岡田 航季, 片山 正純
    セッションID: O2-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    人工身体や仮想身体に対する身体所有感には形態的類似性も関与し,構造的類似性と外見的類似性に分類されている.一方,構造的類似性と類似した概念である機能性身体モデル仮説が提案されている.本研究では,構造的類似性と機能性身体モデル仮説との関係を明らかにするために,身体の機能性としての把持し易さと把持可能性に着目し,実験1では,把持し易さと構造的類似性,実験2では把持可能性と構造的類似性に関して調査した.構造的類似性では,手形状を変形した仮想手と変形なし仮想手を用いた.把持し易さでは,仮想手で把持し易いサイズと把持し難いサイズの対象物を用いた.把持可能性は,仮想手の指関節の回転を制限した条件としない条件とした.各条件において把持課題を繰り返し実行した後にアンケート調査を行った.身体所有感において,把持し易さでは有意差は認めらなかったが(p>.05),把持可能性では有意差が認めらた(p<.05).
  • :日本語版予期的なつかしさ尺度の開発
    楠見 孝
    セッションID: O2-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本研究は,予期的なつかしさと特性なつかしさの関係を明らかにするために,研究1では,大学生94人に,予期的なつかしさの有無とある場合の対処行動についての自由記述形式の質問紙を実施した。その結果,予期的なつかしさは88%が報告し,そのうち72%が対処行動をとり,その主な内容は行動する(87%),写真などの外部記憶を使う(13%)であった。研究2では,Batcho & Shikh(2016)に基づく日本語版特性予期的なつかしさ尺度(10項目)とZhou et al.(2020)に基づく状態予期的なつかしさ尺度(4項目)を作成し,市民828人(16-79歳)を対象にオンライン調査を行った。その結果,予期的なつかしさの状態と特性の2尺度の信頼性は高く,4つの特性なつかしさ尺度(SNS, Barrett et al., 2010;BNI,Batcho, 1998; PINE,Newman et al.,2020;なつかしさポジティブ-ネガティブ傾向性,楠見, 2021)との相関も高く,妥当性が確認できた。また,予期的なつかしさの状態と特性では異なる相関のパタンが見られた。
  • 宮崎 由樹, 鶴見 周摩
    セッションID: O3-1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    日本では白と比較して黒マスクを着用する人物に対してネガティブな印象が持たれる。一方,西洋では黒マスクの方が好まれる。これらの先行研究では,マスクの呈示方法 (人物が着用,マスクのみ)が異なっており,黒マスクの印象が文化に依存するのか不明であった。本研究ではマスクのみを呈示し,日本,イギリス,アメリカ人参加者にマスクそのものの印象評価を行わせた。参加者は白,グレー,黒のマスクを見て,「着用意欲」,「魅力」,「健康さ」,「お洒落さ」,「好ましさ」を評価した。結果,日本人参加者は,白やグレーに比べて黒マスクをネガティブに評価した。しかし,イギリスやアメリカ人参加者は黒マスクをネガティブに評価せず,むしろお洒落さや好ましさで白マスクよりもポジティブに評価した。また,ソックスの印象評価では,日英米間の違いは観測されなかった。この研究から,黒マスクに対する印象が文化によって異なることが明らかになった。
  • 永井 聖剛, 横井 志保, 金子 優真, 矢田 祐風南
    セッションID: O3-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    我々は見ている顔,記憶している顔に対応した視覚表象を有している。これらの視覚表象を画像として示すのは簡単ではないが,我々はclassification image(CI)を用い観察している2つの顔を区別して画像化できることを報告した(永井ら,2023,日本基礎心理学会)。本研究では,記憶顔に対しても画像化が可能かを検討した。参加者は事前に2つの顔画像(目標顔:女性顔AおよびB)を記憶し,実験では女性平均顔にランダムノイズを加算減算した顔画像を左右に対提示し,記憶した目標顔(セッション内でAまたはBに固定)に近い画像を選択させた。各試行で選択されたノイズ画像群に基づき2つの目標顔に対するCIがそれぞれ生成された。得られたCIは記憶した目標顔の特徴(目の形状,頬の膨らみなど)をうまく表現しており,実際に第三者の評価によってそれぞれのCIは目標顔に類似していることが示された。したがって,CIを利用することで記憶した顔も適切に画像化できることが確認された。
  • 中島 亮一, 横澤 一彦
    セッションID: O3-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    視覚探索画面に区切り枠をつけて小領域に分けると、逐次探索が促進される(Nakashima & Yokosawa, 2013)。これは、探索画面内の刺激がグループ化されることで、視覚的注意が各刺激に効率的に向けられるようになるためだと考えられる。本研究では、この区切り枠の効果が、枠が目立つ場合(枠の顕著性が高い場合)にどうなるかを検討した。実験では、Lの形の中からTの形を探索する視覚探索課題において、アイテム数を16個、32個と操作した。その際、探索領域を区切り枠で1×1個、4×4個に分割した。この区切り枠は黒色(先行研究と同じ色。顕著性低)または黄色(顕著性高)であった。探索関数を指標とした分析を行ったところ、黒色枠をつけると探索関数の傾きが小さくなり、探索効率が向上することが確認できた。一方、黄色枠をつけても探索関数の傾きと切片は変わらなかった。よって、顕著性の低い区切り枠は視覚探索を促進するが、顕著性の高い枠の影響はほぼないと考えられる。
  • 松本 絵理子, 田中 有己
    セッションID: O3-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    自己に関連した情報は優先的に処理されることが知られており,課題目的に用いられる場合だけでなく,自己関連情報を妨害刺激として用いた場合でも自動的な注意の捕捉が生じる (e.g., Alexopoulos et al., 2012)。このとき自身の顔,氏名等が自己関連情報として用いられることが多いが,これらは自己関連性だけでなく親近性も高いことから,優先効果が自己性のみによるものかは明らかではない。本研究では,参加者自身が選択した色に対する自己関連付け学習を行い,短時間の学習により獲得された自己関連特徴による注意の捕捉効果を検討した。課題では高速系列呈示されるアルファベット系列の中から一つだけ色の異なる刺激(第一標的,T1)と数字(第2標的,T2)を検出するものであり,T1には自己関連学習色,他者関連学習色,および学習課題に用いなかった色を使用した。その結果,一部の条件において関連性の学習による注意捕捉の違いが認められたが,自己―他者の違いは明確ではなかった。学習した形態そのものを用いず,二次的に学習刺激と同色を用いた場合には自動的な注意捕捉は生じにくい可能性がある。
  • 細川 亜佐子, 北神 慎司
    セッションID: O3-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    物語を読むとき,読者は登場人物の視点を視空間的に表象している。 視空間認知の研究領域では,他者の視点を取得することがその他者への同一化の基盤になることが示されているため,物語の登場人物に対する視空間的視点取得と同一化についても関連性があると考えられる。 そこで,本研究は,物語理解時の視空間的視点取得は登場人物への同一化を高めるかどうかを検討した。具体的には,物語刺激の視点転換条件を操作し,同一化の指標であるアンカリング効果の増幅を確認した。その結果,視点転換がある条件下で,アンカリング効果が大きくなった。本結果から本研究が得た知見を要約すると,次の2点となる。第一に,物語理解時の視空間的視点取得は,知覚における視点取得と似通ったメカニズムに従うことを支持した。第二に,物語理解時の登場人物への同一化は,その登場人物の視点を取得する視空間プロセスを通じて生じることを示唆した。
  • 矢野口 恵尚, 佐々木 浩亮, 福井 隆雄
    セッションID: O4-1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本研究では,色の要素である輝度が視覚誘発性触知覚に与える影響を検討する.VR環境下で水平に延びる白い円柱の中を灰色の円柱型の接触物体が左から右に一定の速さで動き,白い円柱に触れている手腕モデルに衝突する位置にて初速度から減速率0%, 10%, …, 80%, 90%になる10条件の映像を提示した.接触物体色の輝度を4段階に設定し,輝度が手腕モデルとの間に生じる視覚誘発性触知覚強度へ与える影響を検討した.佐々木・福井 (2022)で視覚誘発性触知覚による掌表面温度の上昇が示唆されたため,視覚誘発性触知覚を与えない対照実験を実施し,掌表面温度変化に関してより詳細に検討した.自閉傾向や感覚処理特性を測る質問紙への回答や心拍カウント課題を行い,視覚誘発性触知覚の生成と個人特性との関連についても検討した.実験の結果,視覚誘発性触知覚は接触物体色の輝度が小さいほど生じる可能性と自閉傾向が高い人ほど生じやすいこと示唆された.
  • 山口 茉優, 杉森 絵里子
    セッションID: O4-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    甘さは,味覚だけでなく人の魅力や優しさを表現する比喩としても用いられる。先行研究では,身体感覚や身体運動が対人認知に影響を与えることが明らかになっており(身体化認知,Williams & Bargh, 2008),甘味を感じると対人相手に対する魅力評価が高まることが示されている。しかし,甘味と対人印象の関連を調べた研究では,日本語で甘さが大雑把さなどのネガティブな比喩として用いられることは考慮されておらず,甘味が表情知覚に与える影響も検討されていない。そこで,日本人52名を対象に,甘味が印象と表情の知覚に与える影響を検討した。実験では,参加者は甘い(甘味群)または苦い(苦味群)チョコレートを食べた後,無表情の顔画像の人物に対する印象評定と表情評定を行った。結果,甘味群は苦味群よりも人物の魅力を高く評価したが,大雑把さや思慮の浅さの印象評価に違いはみられなかった。また,甘味群は苦味群よりも恐怖表情を低く評価する傾向があった。これらの結果は,身体化認知や言語的メタファーの観点から考察される。
  • 鈴木 綾子, 大野 央人, 榎並 祥太, 星野 慧
    セッションID: O4-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    ユニバーサルデザインのため、駅トイレなどの壁紙と衛生器具との間には輝度比を設け、衛生器具の配置が見えやすくすることが求められている。しかしながら、輝度比を算出するための輝度計などの装置を各事業者が持ち合わせているとは限らず、目視などの簡便な手法によって輝度比の確保ができることが望ましい。目視による試料の評価方法については、例えばJIS Z 8723、JIS K 5600-4-3がある。ただしこれらは無地の試料を評価することを前提としており、近年トイレで利用されることの多い木目柄をはじめとした柄のある試料の評価にそのまま適用できるものではない。また、JIS規格では、色比較の作業面の照度は1000lx~4000lxの間とし、暗い色を比較する場合は4000lxに近い方が望ましいと記されている。さらに、観察者は色覚検査で検査をして色覚が正常であることを確認することが望ましく、色覚は加齢と共に大きく変化することから、40歳以上の観察者では、より精度の高い色覚検査をすることが望ましいと示されている。このように、目視による評価方法の要件は、実際の駅トイレや社屋で試料を目視評価する際などの実運用上は制限が厳しいものになっている。そこで、無地だけでなく木目のような柄のある試料の目視評価の精度を実験室実験によって検証した上で、試料の評価手法と補正式を提案し、評価時の照度や年齢の要件等が精度に与える影響についても併せて検討した。
  • :読みやすさを示す異なる指標の比較
    齋藤 岳人, 井上 和哉, 樋口 大樹, 小林 哲生
    セッションID: O4-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    書体の主観的な読みやすさはヒトの情報理解を支える重要な要素であり,その判断にはストローク幅や書体への日常的な接触経験が影響する。しかし,読みやすさの指標は複数あり,これらの要因が各指標に同様の影響を与えているかは明らかでない。そこで,本研究は代表的な読みやすさの指標(視認性と可読性)の主観評定値を取得し,各指標に対するストローク幅と接触経験の影響を比較した。具体的には,文字列を様々な書体で対提示する一対比較法から主観評定値を取得した。その際に,視認性は可読性と区別して判断させるため,断続的に提示し,判断させた。ストローク幅と接触経験を独立変数とした重回帰分析を行った結果,視認性ではストローク幅の影響(β = 0.66)が接触経験(β = 0.56)よりも強く,太字の書体ほど視認性が高かった。一方で,可読性では接触経験のみが影響し(β = 0.88),見慣れた書体ほど可読性が高かった。これらの結果は,読みやすさの指標によって主観的な判断に強く影響を与える要因が異なることを示唆する。
  • :視覚と触覚における比較
    高橋 礼, 高山 泰子, 四本 裕子
    セッションID: P1-1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    私たちが知覚した時間の長さと物理的な時間の長さは乖離することがある。これまでに、視覚フリッカー刺激は知覚時間を延長し聴覚フラッタ刺激は知覚時間を短縮することが示されてきた。また、視覚刺激のsaliencyで知覚時間の歪みを説明するモデルも提唱されている。一方、触覚における時間知覚の研究は少なく、視覚や聴覚と比較して分かっていないことが多い。本研究では、触覚フラッタ刺激の時間周波数が時間知覚に与える影響を調べた。実験1では、視覚および触覚においてフリッカー(フラッタ)刺激を用いた間隔時間弁別課題を行った。実験の結果、モダリティ間で知覚時間の歪みの量が有意な正の相関を示した。実験2ではフリッカー(フラッタ)刺激に対するsaliencyと絶対閾を計測したが、どちらも知覚時間の歪みとの相関を示さなかった。これらの結果は触覚における時間知覚メカニズムが視覚と類似していることを示唆するが、知覚時間の歪みはsaliencyでは説明できない可能性も示した。
  • 王 馨怡, 石川 直樹, 梅田 聡
    セッションID: P1-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    我々は日常的に様々なイベントを経験するが,その経験前から、経験後にかけて、イベントに対する主観的な時間的距離を知覚している。経験前の時点からイベントまでに感じる時間的距離は、経験後の時点からイベントまでに感じる時間的距離よりも過小評価されるという非対称性があり、これを時間的ドップラー効果という。本研究では、実際にストレスイベントを経験させ、イベント前後におけるイベントまでの時間的距離の主観的な感覚をイベント前後20分、前後14分、前後3分という時点で追跡した。加えて内受容感覚の正確さおよび敏感さをそれぞれ心拍検出課題とBPQによって測定した。その結果、イベント前後20分、14分においては、時間的ドップラー効果が生じていたほか、内受容感覚においては敏感さ(BPQ)がイベント経験後における、イベントまでの時間的距離の感覚に影響を及ぼしていた。 本発表では実際に経験させたイベントにおける時間的ドップラー効果の存在について、個人の内受容感覚の影響や同時に測定した生理学的指標変動という点を踏まえて、時間的ドップラー効果のメカニズムについて議論する。
  • :音源強度・音源の聴覚的情報の影響
    杉本 公平, 實吉 綾子
    p. 21
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本研究では仮想空間における音源定位の実験を2つ実施した。実験1では音源強度と仮想空間内での見かけの音源定位を検討した。10段階の強度からなる音源を聴覚呈示し、正面、奥行き方向に並んだ5つのスピーカーのどれから聞こえたかを回答させた。結果は仮想空間上でも音源強度が強ければ手前に、音源強度が弱ければ奥に音源定位が生じることが明らかになった。実験2では多方向から複数の音源が呈示された際の音源定位について検討した。仮想空間内で参加者の周囲に26台のスピーカーを配置し、2から10カ所で同時に音刺激を呈示し、参加者にはいくつの音刺激が、どこから呈示されていると感じるか回答させた。その結果、 正確ではないが、呈示数の増加に伴い回答数も増加することが明らかになった。また、音源定位の正確さでは音楽経験がある方がより正確に回答することが明らかとなった。
  • 久保 夏海, 松下 光司, 有賀 敦紀
    セッションID: P1-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    我々は飲料を飲む際,様々なモダリティの情報を統合して味覚評価を行っている(感覚間転移)。本研究は,店舗などのブランドに対するイメージを人の性格特性で表す概念であるブランド・パーソナリティ(BP)に注目し,カフェ店舗のBPと感覚刺激(マグカップの飲み口の厚み)の一致性が感覚間転移を促進するのかを調べた。実験1,2では,飲み口の厚みとどのBP次元との間に連合があるかについて,シナリオ(実験1)とカフェ画像(実験2)を用いて検討を行った。その結果,BPのExcitement次元と薄いマグカップの連合が厚いマグカップとの連合よりも強いことが明らかになった。実験3では,Excitement次元が喚起されると,喚起されない場合よりも,参加者は薄いマグカップに入ったコーヒーを相対的に苦いと予測した。これらの結果は,容器とBP間に連合があること,その連合が味覚の予測に影響を与えることを示しており,BPの喚起が感覚間転移を促進する可能性を示唆している。
  • :ロゴタイプとテクスチャの影響の検討
    井関 紗代, 間瀬 友恵, 北神 慎司
    p. 23
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 フリー
    パッケージ・デザインは,商品を購⼊する際,その商品に対する印象を決定づける重要な⼿がかりのひとつである。これまでに,広告やパッケージの余白が大きいとラグジュアリー知覚を高めることが示されているが,実証的研究の蓄積は十分とは言えない。そこで本研究では、チョコレートのパッケージを刺激として用い,余⽩がラグジュアリー知覚を促す効果を再現できるか,さらにはその境界条件について検討した。その結果,余⽩が⼤きい場合,パッケージのラグジュアリー知覚が高まるだけでなく,中身(チョコレート)の知覚品質も向上することが確認された。しかし,もともと高級感のあるロゴタイプやテクスチャを使用すると,余白の効果が消失することも示された。これらのことから,本研究は余白が消費者反応に及ぼす影響に関する理論的貢献だけでなく,高級感や高品質を訴求するパッケージ・デザインにおいて実務的示唆を与える。
  • :逆相関法を用いた検討
    セッションID: P1-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    遮蔽により形態情報の不足した顔の観察時に、平均顔によって補完が生じる可能性が先行研究によって示唆されている。しかし、先行研究の実験手法には問題点があり、仮説実証には不十分であったと考えられる。本研究では、逆相関法を用いて形態情報不足顔の心的表象を直接的に推定することにより、平均顔補完仮説を検証した。逆相関法の実験は2段階から成り、第一段階 (N= 19) では、下部が遮蔽された顔の観察時に生じる顔の心的表象を反映する画像であるCI (classification image) と、そこからは離れた顔画像であるanti-CIが得られた。第二段階 (N= 24) では、CIとanti-CIの典型性 (平均顔の近さと関連する指標) を評価する課題を実施した。平均顔補完仮説が正しければ、典型性の評定値はCIのほうがanti-CIよりも高くなることが予測され、予測通りの結果が得られた。本研究では、形態情報の不足した顔の観察時に平均顔によって補完が生じることを、従来より直接的に実証できた。
  • 杉山 梨奈, Flavia Cardini, Suzanna Forwood
    セッションID: P1-7
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    認知症患者と介護者のコミュニケーションの困難さを理解する上で、表情認知は重要な要素の一つである。従来より認知症患者の表情認識能力に焦点を充てた研究が多いが、介護者の表情認識能力に着目した研究は少ない。過去の研究で高齢者の表情筋の動きの減少に伴う感情強度の低下やマスク着用による顔の一部遮蔽は、無操作の表情よりも健常者の表情認識精度が低下することがわかっている。しかし、どの程度の表情強度やどのような遮蔽条件が健常者の表情認識精度に影響を与えるのかは十分にわかっていない。本研究では、認知症患者と介護者のコミュニケーションの理解への第一歩として、高齢者の顔表情の①表情強度および②部分的な遮蔽による操作が健常者の表情認知に与える影響を調べた。低い表情強度の条件において、幸せの表情は怒りや悲しみの表情よりも表情認識精度が低下した。また、口又は目を遮蔽した表情は遮蔽しない表情よりも表情認識精度が低下した。
  • 後藤 央, 四本 裕子
    セッションID: P1-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    腕交差などにより身体の外部座標情報が変化すると、認知課題や触覚情報処理にさまざまな影響が及ぼされることが知られている。たとえば両手に与えられた振動刺激について、どちらの振動周波数が高いかを回答させる課題(振動周波数弁別課題)では、腕交差時に成績が低下するとされている。本研究では若年者10名と高齢者30名を対象に腕交差または非交差の状態で振動周波数弁別課題を実施し、腕交差効果の大きさが加齢によってどのように変化するかを検討した。刺激の呈示条件には、2刺激を同時に呈示する同時条件と、一方を呈示したのち他方を呈示する逐次条件を設けた。実験の結果、同時条件において若年者、高齢者ともに腕交差効果がみられたが、効果の大きさにほとんど差はなかった。また若年者と比べて高齢者には同時条件における成績低下が顕著にみられた。この結果は、加齢によって時間的に近接した刺激の弁別が著しく困難になる可能性を示唆している。
  • 濱田 桃寧
    セッションID: P1-9
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    Yeh(2015)は、横スクロールシューティングゲームをプレイした場合と、バブルシューティングゲームでは、前者をプレイした場合の方が、創造性課題の独創性、柔軟性、精緻化のスコアが高くなることを示した。シューティングゲームをプレイすると視覚的な刺激をより多く受け取るため、課題の成績向上に影響を及ぼしたと考察された。本研究では、この結果が再現できるかどうかを検討するため、ツインビーとバブルシューティングを用いて追試を行った。その結果、2つのゲームの間で創造性課題の各スコアに有意な差は全く見られなかった。しかし、ゲーム中の気分を比較したところ、Yeh(2015)の研究では、シューティングゲームをプレイした時の方が覚醒度が高まっていたのに対し、本研究では2つのゲーム間で有意な差が見られなかった。このことから、先行研究と本研究において、ゲーム中の視覚的刺激よりも、覚醒度の高まりがより創造性課題の成績に影響を及ぼした可能性が示唆された。
  • 畑 美緒, 宮下 慶, 三嶋 博之
    セッションID: P1-10
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    VR空間におけるユーザー同士の快適な空間であるパーソナルスペース(以下PS)はユーザー個人の特性に依存する可能性がある。本研究は「自意識の強さ」がVR空間におけるPSの大きさに与える影響を検討する。自意識尺度で自意識の強さを測定し,ストップディスタンス法でVR空間におけるPSを測定した。実験1(n=25)では男性と女性のアバタ1体どちらかを呈示し,実験2(n=14)では2体の男性アバタを隣り合わせに並べその2体の身長差の組み合わせが存在した。実験1ではVR空間における異性に対する抵抗感が公的自意識によって異なることを示し,自己への認知配分が高い私的自意識高群は他者の接近を許容したことが示唆された。一方,実験2においてはアバタ2体の身長差の効果が認められ、VR環境内でも錯視が発生した可能性がある。一方,自意識による違いは認められず,2体のアバタの異様さが圧迫感として認知されたかもしれない。
  • 山本 一希, 中尾 敬
    セッションID: P1-11
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    自分の身体であるという感覚 (身体所有感) はフルボディ錯覚(FBI)等によって検討されてきた。身体所有感を感じにくい離人症傾向者は,偽身体を予め自己身体であるとトップダウンに認識させるとFBIが生起しにくくなることが示されている。離人症の事例研究では,自己身体が否定的な状態であるとトップダウンに認識することにより身体所有感が低下すると考えられているが,実証には至っていない。本研究では偽身体を否定的な状態にある自己身体と思わせる教示を加えたFBI手続きにより,否定的なトップダウン認識がFBIに与える影響を検討した。その結果,否定的な状態の自己身体だと認識させる教示を与えた際にFBIの阻害が認められた。本研究の結果は,身体所有感の生起を阻害する要因にトップダウン認識が関与することを示すものである。
  • -没入型HMDと2Dディスプレイの比較-
    岡村 澪奈, 實吉 綾子
    セッションID: P1-12
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本研究ではメタバース空間でアバターを介し,没入型ヘッドマウントディスプレイ(以下没入型HMD)を使用した会話が,従来の2Dディスプレイを使用したテレビ電話よりも,より高い現実感や没入感を提供できるかを検討した。この目的で、友人同士の大学生を対象に,メタバース空間でHMDまたは2Dディスプレイを用いて,アバターを介した会話を行わせた。会話体験の現実感や没入感を検証するために,会話に対する没入感に関する質問紙,脈拍,瞳孔径を指標として使用した。また,アバターは人型とロボット型の2種類を比較し,アバターの影響も探索的に検討した。質問紙の結果から没入型HMDを使用した際にロボット型アバターを介した会話でよりリアリティを感じることが示された。また人型アバターのみで大きな瞳孔径の変化が観察された。これらの結果から,没入型HMDを用いたコミュニケーションについて考察を行った。
  • :AIST顔表情データベース2017に対する感情評価
    原田 悦子, 澤田 知恭, 後藤 順平, 安久 絵里子
    セッションID: P1-13
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    Harada et al. (2019)は,ロボットの顔表情に対する感情評価において,若年成人群は実写の顔よりもより感情を強く評価する傾向があるのに対し,高齢者群はロボットの顔表情に対する感情の強さが弱い傾向を示した.この結果は,顔に表出される感情評価そのものにおいて加齢による変化が存在するためとも考えられうる.そこで本研究では,高齢者と大学生各20名に対し,AIST顔表情データベースに含まれる各顔の表情についてAffectGridの2次元による感情評価を行った.その結果,年齢群による全体的な感情評定値には変化はなく,「喜び」などの正の表情ではむしろ高齢者の方が強い感情の存在を示していたこの結果から,ロボットのシンボル化された感情顔表現の評価において示された年齢群間差は,加齢による顔表情の知覚的処理の機能低下によるものではないことが示された.
  • 濱野 揚茂, 有賀 敦紀
    セッションID: P1-14
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    曖昧な表情の研究では,何らかの感情を伝えるという仮定に基づき,観察者にその曖昧な表情がどの感情 (e.g. 喜び) を表現しているかを判断させることが多い。しかし,この手法では観察者が表情に対してそもそも曖昧と知覚している可能性を検討できていない。そこで濵野・有賀 (2023) は先行研究において,感情の操作のしやすい線画表情を用いて,我々がどのような顔を曖昧であると認知しているのかを調べた。その結果,表情パーツの感情の不一致率に応じて曖昧性が高まること,喜びや驚き感情を観察者が感じるほど曖昧性が低くなることが明らかになった。本研究ではこの知見をさらに発展させるべく,生態学的妥当性が高い状況で曖昧な表情の認知特性を検討した。その結果,先行研究と一致する形で,表情パーツの感情の不一致率に応じて曖昧性が高まることが明らかになった。一方で,先行研究と異なり,喜びや怒り感情を観察者が感じるほど曖昧性が低くなることが新たに明らかになった。
  • -知覚的・認知的処理流暢性の影響-
    佐々木 浩汰, 米満 文哉, 有賀 敦紀
    セッションID: P1-15
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    我々は人に類似した対象に強い不気味さを覚える(不気味の谷)。先行研究はそのメカニズムについて嫌悪感情などに基づく仮説(e.g., 死への恐怖の回避)や認知処理に基づく仮説(カテゴリー化困難仮説)で説明してきた。認知処理に基づく仮説はアニマシーに依らずとも説明が可能であるが,先行研究では顔などアニマシーと切り離せない実験刺激が用いられている。したがって不気味の谷の生起にアニマシーが必要かどうかは明確ではない。そこで本研究ではアニマシーを伴わない幾何学図形でモーフィング図形を作成し,その分類に要する時間と好ましさの評価を調べた(実験1)。その結果,分類の容易な図形は分類の難しい図形よりも好ましく評価された。さらに分類に伴う処理流暢性の低下が分類の難しい図形の好ましさ評価を下げていると仮定し,知覚(実験2)および認知(実験3)的処理流暢性の影響を検討した。本研究の結果はアニマシーが不気味の谷の生起に必ずしも必要ではないことを示唆し,認知処理に基づく仮説を支持した。
  • 北篠 珠緒, 小川 緑, HERNÁNDEZ Monica PERUSQUÍA, 綾部 早穂
    セッションID: P1-16
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    かわいいと感じる対象は様々で、かわいいと感じたときに表出も多様であることが示されている。目元の筋活動等を変えるようなかわいい対象から喚起される感情に対して、関係性認知および対象に接する際の優先状態が与える影響を検討した。 "感じる対象"として全体の67%が直接接触する機会のある子供やペット等を与える、主に見るキャラクターやアイドル等よりも多いことから、かわいい対象との関係性がかわいい感情の喚起に影響を与えると予測した。実験では、事前にかわいい対象と交流させる群と交流させない群に分け、その後15分間の動き画視聴により以前の状態(不快覚醒・不快沈没)を方向づけ、それから交流させたかわいい対象の画像に対する印象評価を求め、画像観察中の表情筋活動と心拍数を測定した。また、共感性の影響についても検討した。

  • 水野 優子, 高橋 来菜, 井上 和哉, 樋口 大樹, 小林 哲生
    セッションID: P1-17
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    かわいさに関連する特徴としては今までに,ベビースキーマ,笑顔,ピンク,丸さなどが挙げられている。しかし,丸さとかわいい感情の関係は十分に検討されていない。そこで,本研究では,丸さを帯びた対象がかわいい感情を生じさせるかを,書体を用いて検討した。また,丸さと幼さ,幼さとかわいさには関連が想定されるため,丸さとかわいい感情との関係が幼さに媒介されるかも検討した。実験では,丸い書体から丸くない書体までを含む40種類の書体を用いた。実験参加者は,各書体で表現されたひらがな12文字の無意味綴りに対して,かわいさ,丸さ,幼さの評定を行った。その結果,それぞれの評定間には強い正の相関が認められた。そこで,かわいさ評定に対する媒介分析を行ったところ,丸さの直接効果と幼さを介しての間接効果の両方が示された。この結果は,丸さはかわいい感情に直接的にも,幼さを媒介して間接的にも影響を与えることを示唆する。
  • 田仲 祐登, 品川 和志, 辻 幸樹, 梅田 聡
    セッションID: P1-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    日常生活ではさまざまなストレス負荷が生じているが,同じ経験であったとしても感情体験には個人差が生じている.感情体験における個人差および自律神経反応には,身体内部の状態の知覚である内受容感覚が関係すると考えられる.本研究ではポジティブおよびネガティブなストレス負荷がかかったときの感情評価と連続血圧の変化に,内受容感覚がどのように関わっているのかについて検討を行った.参加者は,時事問題についてのパブリックスピーチ,プライベートな話題に関するスピーチ,およびテレビゲームを行い,課題実施前後に感情状態の評定を行うとともに,連続血圧の測定を行った.内受容感覚の指標として,心拍カウント課題と,MAIAを用いた.結果として,課題の種類によって課題前後の連続血圧の変化に違いが見られており,実験操作の効果が実証された.本発表では,その傾向と内受容感覚指標および感情評価との関連について議論する.
  • 藤田 哲也, 井上 晴菜
    セッションID: P1-19
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    学習活動への取り組みを示す概念であるエンゲージメントは,より「状況」に根差した学習への取り組みを捉えようとしている概念である(梅本他, 2016)ことから,本研究では特定の授業を想定しない「大学の授業全般」と「特定の授業」を区別して検討を行った。特定の授業としては1年生向けの初年次教育科目を対象として,感情的・行動的エンゲージメント(梅本他, 2016)を目的変数とし,学期当初と最終回の2時点で測定した,受講生の授業外での学習活動への取り組みに対する主観的な実行の程度・有効性の認知・コスト感,班活動に関わるリーダーシップ行動(木村他,2019)と,個人の達成目標志向(中川・藤田,2018),および特性的とされる能動的先延ばし傾向(吉田,2017)を説明変数として分析を行った。エンゲージメントがいずれの要因によって強く規定されるのか,また,大学の「授業全般」と「特定の教科の授業」の想定の違いによってエンゲージメントが異なるのかを検討した。
  • 米満 文哉, 菅井 万智, 有賀 敦紀
    セッションID: P1-20
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    マスク顔はマスク非着用顔よりも魅力が過大に評価される (i.e., マスクバイアス) 。さらに,Sugai et al. (submitted) は大学生が複数の異性のマスク着用顔を恋人もしくは友人として評価すると,男性が女性を恋人として評価する場合においてマスクバイアスが顕著になることを明らかにした。この現象の説明として,生殖コストに基づいた配偶者選択における男女の方略の違いが考えられるが,それを支持する知見は乏しい。本研究はこの点について更なるエビデンスを提供するために,実験参加者に1人のみの顔刺激を評価させることで生態学的妥当性を高めた実験1および,生殖機能が衰えた高齢者を参加者とすることでマスクバイアスの世代普遍性を確かめる実験2を行った。その結果,両実験とも男性においてのみ女性を恋人として評価する際のマスクバイアスが友人よりも有意に高く,女性では恋人と友人間に有意差はみられなかった。この結果は,生殖コストに基づいた配偶者選択における顔魅力の認知方略が頑健であり,生涯にわたって男女ともに維持されることを示唆する。
  • 菅井 万智, 牧野 博大, 濱野 揚茂, 笠野 遊, 八木 善彦, 有賀 敦紀
    セッションID: P1-21
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    マスク着用顔はマスク非着用顔よりも魅力度が過大に評価されることが示されてきた (マスクバイアス)。マスク着用顔の魅力評価の研究は,実験参加者にマスク着用の未知顔を1度のみ呈示して魅力評価をさせる課題を用いたものが多い。しかし,日常場面では同一人物のマスク着用顔を何度も目にする機会があり,この点に着目したマスク着用顔の魅力評価に関する研究は少ない。顔刺激への単純接触はその顔への好意度や魅力度を上昇させることが示されている。そこで本研究では,マスクバイアスが単純接触によって高まるかどうかを検討した。大学生の男女の参加者は,女性のマスク着用顔刺激がそれぞれ10回ずつ呈示される単純接触条件と,女性のマスク着用顔刺激が1度も呈示されない単純接触無し条件の両方を経験し,各顔刺激の魅力を評価した。その結果,単純接触効果が生じたが,マスクバイアスに有意差は見られなかった。この結果は,単純接触効果が,マスク着用顔から非着用顔へ転移している可能性を示唆している。
  • :成人の自閉スペクトラム症者と定型発達者における検討
    金子 彩子, 井手 正和
    セッションID: P1-22
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    会話は他者と関係性を築くための重要なツールである。発話速度が自分と同じ者に対する印象は好意的になりやすく,また違う発話速度の者に対しては自身の発話速度を同調させる傾向が知られている。一方で自閉スペクトラム症(ASD)者はそのような同調が生じにくいと報告されている。本研究では,ASD者における同調の生じにくさが,他者の発話速度の違いに気がつきにくく,印象が変化しにくいことから生じると仮説を立て,検証を行った。成人のASD者と定型発達者を対象に,様々な速度の音声刺激と疑似的な会話を行ってもらった。その結果,違う速度の刺激に対する同調の生じやすさ・発話速度の違いへの気がつきやすさ・発話速度の違いに伴う印象の変化に群差は見られなかった。一方で,ASD者は発話速度がより遅く,また遅い発話速度と社会的場面での適応的な振る舞いに関する難しさと関連した。これらのことから,発話の速度の違いが他者との関わりに重要な役割を持つことが示唆された。
  • : 髪色での検討
    山田 玲颯, 作田 由衣子
    セッションID: P1-23
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本研究は、大学生を対象に、日本での髪色に対するマイノリティ意識について検討した。課題1では、マイノリティグループの割合を実際の割合と比べて多く見積もるバイアスが存在するかを検討した。日本人100名の画像を10×10の正方形のマトリックスに配置し、そこに含まれる金髪と黒髪の割合をそれぞれ回答させた。それぞれ本来の割合との差のt検定の結果、黒髪の割合は実際よりも有意に過小評価されており、金髪の割合は実際よりも有意に過大評価されていた。このことから、マイノリティを実際以上に多く見積もってしまうことが明らかになった。課題2では、髪色に対して抱く印象の調査を行った。評定値に対し因子分析を行った結果、信頼性印象因子と外向性印象因子の2因子が抽出された。また、金髪と黒髪に相対する印象を抱いているという回答が得られた。本研究の結果から、日本におけるマイノリティへのバイアスが存在することが示された。
  • 満田 隆, 神戸 雅大, 神林 優里, 中村 太一
    セッションID: P2-1
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    目、鼻、口などの顔パーツと顔全体の魅力の関係を調べる実験方法の一つに、顔パーツを遮蔽した顔画像の魅力の計測がある。しかし、部分遮蔽した顔の魅力に関する研究の多くは正面顔を用いたものである。横顔の魅力には、鼻先と顎先を結ぶEラインと呼ばれる直線と唇の位置関係が要因として関係することが知られており、横顔において顔パーツを遮蔽するとこれらの位置関係が知覚されにくくなることから、横顔では正面顔と異なる部分遮蔽の影響が生じると考えられる。そこで、本研究では、横顔の目、鼻、口を遮蔽した状態から、遮蔽を取り除いたときの魅力変化を計測した。女子大学生33名と男子大学生61名が東アジア人の横顔(男女各36名または30名)の魅力度を評価した。実験の結果、正面顔と同じく横顔においても目は魅力に正の役割をもつことが示唆された。また、口は横顔において負の役割をもつことが示唆された。
  • 徐 静純
    セッションID: P2-2
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 フリー
    美的判断における感情の影響が古くから検討されてきた。だが、事前に呈示された感情刺激による感情喚起は人間の美的判断を変えられるのかについて、従来の研究はまた一致した結果を出さず、議論が続いている。そこで 本研究はサブリミナルの手掛かりを使用し,異なった視覚刺激(絵画・無意味図形)に対する人間の美的判断の変化検討し,視覚刺激が持つ異なる視覚特徴量とサブリミナル感情効果の関連性を調べた。その結果,より美的価値と意味がない無意味図形刺激においては,美的判断が感情による変化が一致することが発見された。それに対して,より美的価値と意味がある絵画刺激においては,美的判断が感情による変化における不一致性が発見され,感情効果が絵画の低次・高次視覚特徴と関連する可能性が示唆された。
  • 河原 哲雄
    セッションID: P2-3
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    写真の背景色が人物の印象に与える影響を検証した。証明写真等で多く使用される、白無地および淡いピンクと空色の背景を用いて評定実験を行ったところ、背景色による印象の変化は、評定者の性別によって異なることが示された。特に、ピンクの背景は男性から見た女性の「女性的」「魅力的」な印象を高めた一方で、女性から見たそれらの印象を低めるという結果は、赤背景が男性評定者から見た女性の魅力を高めるという従来の研究知見を部分的に再現しつつ、性役割ステレオタイプへの反発のような新たな要因の関与を示唆するものであるとも考えられる。
  • 澤田 和輝, 村上 遥, 立川 真衣, 吉田 祥世, 野村 理朗
    セッションID: P2-4
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    自己決定理論に依拠した研究より,他者の支配的な行動や態度を知覚することで創造的思考が阻害されうることが示されてきたが,支配的な顔の無意識的処理が創造的思考に及ぼす影響は不明である.実験1では,逆相関法で支配的/非支配的な顔画像を作成し,参加者(N = 32,平均21.38±2.89歳)に見知らぬ他者の支配的/非支配的な顔を閾下呈示した後に,遠隔連想課題,および課題後に顔の支配性の評定課題に取り組むことを求めた.その結果,支配的/非支配的顔条件で遠隔連想課題の成績に有意差は見られず,閾上で評定された支配性も遠隔連想課題の成績を有意に予測しなかった.事前登録した実験2では,実験1の手続きに加え,参加者(N = 32,平均22.41±3.82歳)に信頼性等の印象も評定することを求めた.その結果,支配性以外の印象の効果を統制しても,実験1と同様の結果が得られたことから,見知らぬ他者の支配的顔の無意識的処理が遠隔連想に影響を及ぼすことは示されなかった.今後は,別の創造性課題を用いて多角的に検討する必要がある.
  • WEI ZILING, 満田 隆
    セッションID: P2-5
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    店舗で買い物する際には、手で商品に触れることが可能である。商品に触れる動作は、心理的所有感を高め、買い物の満足度を高める。しかし、現在、普及しつつあるオンラインショッピングにおいては、手で商品に触れることはできない。商品との接触が減少すると、心理的所有感は減少し、ショッピングの満足度の低下につながる。仮想現実(VR)の中で商品に触れることができるVRショッピングはその問題を解決する可能性がある。そこで、本研究は、36人の大学生を対象に、VRで使われる操作方法の中からコントローラー、カメラで手の動きを計測するハンドトラッキング、キーボードとマウスの3つを取り上げ、寿司の3D モデルを操作して観察するときの操作性と商品の心理的所有感への影響を調べた。実験の結果、ハンドトラッキングの操作性が低く、心理的所有感は操作方法で有意に異ならなかった。また、操作性と心理的所有感に正の相関が観測された。
  • 小川 愛子, 蘆田 宏
    セッションID: P2-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    ヒトは食品を摂取する際、眼前の食品に関する情報と過去の情報を照合することで、味予測を立ててから、実際の味知覚が起こる。予測と実際の味知覚には、差が生じることがあり、これは非確証性と呼ばれる。非確証性の効果は、主に4つの心理学的理論“同化―対比理論”として提唱されているが、実際にどういった条件下でどの理論が成立するかはほとんど検証されていない。本研究では、食品情報として、色に着目し、背景色と食品色の配色による試食前後の味覚と嗜好性の非確証性の効果を検証を目的とし、実験1,2を行った。両実験とも、弱い甘さを持つおいりを食品として使用し、実験1では、味覚として食品に存在する甘味、存在しない塩味、嗜好性としておいしさについて検証し、実験2では甘味、おいしさについて検証した。結果として、実験1では予測値に関して、食品色の効果、実験2では背景色の効果が主に見られた。これは、暖色、寒色という両極端な色が色の種類として入っている項目で、色の効果が生じたと考えられた。一方、実際値に双方の色の効果は見られず、色による非確証性の効果の差は見られなかった。
  • 伊師 華江, 武田 菜々花
    セッションID: P2-7
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    室空間の開口部は開放感や安らぎ等の心理効果をもたらす。本研究は細長い開口形状を特徴とするスリット窓に着目し,窓の設置位置や面数,開口幅が空間の大きさ感と印象評価に与える影響を検討した。様々なパターンのスリット窓を設置した仮想空間のCG画像を準備し, マグニチュ?ド推定 (ME) 法による空間の大きさ感評価と意味微分(SD)法による空間の印象評価を行った。分析の結果,スリット窓の開口幅が広くなると空間の大きさ感と“軽快性”印象は全般に高まるが,その程度は窓の設置位置あるいは面数に応じて変化する傾向がみられた。一方,空間の“居心地性”印象は窓の設置位置によって開口幅の効果が異なり,空間上部(天井面との境界部分)に窓を設置した場合は開口幅が広いと“居心地性”が高いが,下部(床面との境界部分)に設置すると逆に低いケースが多く見られた。これらの結果の要因を錯視や生活空間としての機能の観点から考察した。
  • 橋本 拓磨, 森本 優洸聖, 牧岡 省吾
    セッションID: P2-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    系列依存性は知覚が以前の知覚に影響される現象であり,そのメカニズムの解明が求められている。数推定課題における系列依存性は,直前に知覚した刺激の数が多いほど,後続刺激の数の推定誤差が正の方向に大きくなるという形で生じる。また数推定課題においては,直前の刺激に対する回答(参加者が推定した数)が大きいほど後続刺激の推定誤差が増加することも知られている。数の系列依存性の研究では主にドット配列が刺激として用いられ,刺激の時間変化による数の表現については十分に探究されていない。本研究では,ドットの点滅回数を推定する課題における系列依存性を検証した。実験の結果,直前の刺激の数による系列依存性は確認されなかったが,直前の試行の回答からの系列依存性が確認された。この結果は,点滅回数を知覚する段階ではなく,知覚から数表象を生成する段階で系列依存性が生じた可能性を示唆している。これは,系列依存性が刺激や課題によって様々な段階で生じるという先行研究の知見と合致している。
  • 後藤 早智, 奥村 晴, 伊藤 友一, 青龍 和香菜
    セッションID: P2-9
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/29
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    視覚統計学習 (VSL; visual statistical learning) の典型的な実験では,ランダムな順序で呈示される刺激系列中に,規則的な順序で呈示される刺激の組合せが複数回挿入され,それに対する熟知性の向上を観測する。このとき,その組合せが1つの文脈であり,そこに含まれる項目が文脈の構成要素として処理されるなら,その一部を検索した場合に検索誘導性忘却のような記憶抑制が生じる可能性がある。そこで本研究では,線画を用いたVSLフェーズと熟知性判断フェーズの間に検索フェーズを設け,検索した項目を含む4つ組の熟知性が低下するのかを検討した。検索フェーズでは,VSLフェーズで複数回呈示された4つ組 (例: ABCD) の一部 (例: AB) を手がかり再生 (つまり,単語をもとに線画を想起) させた。結果は予測に反して,部分検索された4つ組の熟知性が,部分検索されなかったものよりも高くなった。これは,部分的な情報の検索が忘却ではなく,VSLの効率の向上を引き起こす可能性を示している。
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