-
―自己生成サンプルに基づく理論的・実証的分析―
本田 秀仁, 香川 璃奈
セッションID: O1-1
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
本研究では、人間が2変数間の関係性を学習する際に、自ら生成したサンプルが学習にどのような影響を与えるのかを明らかにするため、新たな実験パラダイムを導入した。この実験では、ある関数によって規定される2変数の関係を学習し、そのテスト段階での自身の応答が次の学習フェーズで提示される。このような手続きを繰り返すことで、最終的にどのような関係性が学習されるのかに着目し、計算機シミュレーションと認知実験を組み合わせて分析を行った。計算機シミュレーションの結果、合理的なベイジアンエージェントは限られたサンプルからでも2変数間の関係を適応的に学習できる一方、初期のサンプルやバイアスの影響により誤った関係を学習することもあり、多様な学習パターンが観察された。また、認知実験の結果、人間の反応パターンは合理的ベイジアンエージェントに類似した傾向を示すことが明らかとなった。
抄録全体を表示
-
白砂 大, 小坂 健太, 山﨑 駿平
セッションID: O1-2
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
クイズ、特に早押しクイズでは、熟達者は時に不完全な情報から素早く正確に判断を行う。しかしその認知機序は、行動科学の観点からはほとんど検証されていない。本研究は、クイズ回答者が問題文を聞いて回答を導く際の認知プロセスを、証拠蓄積モデルの枠組みで定量的に検証することを試みた。まず計算論モデルとして、問題文中の明確な単語を聞いて一気に証拠を蓄積するFixingモデル、および様々な単語を手がかりとして証拠を蓄積するDriftモデルを提案した。続いて、クイズ熟達者と非熟達者を対象に、早押しクイズを模した行動実験を行った。個人の判断パターンをよりよく説明したモデルは、熟達者ではDriftモデル、非熟達者ではFixingモデルであった。よって、熟達者は非熟達者と比べて、問題文のあらゆる箇所を手がかりに判断していることが示唆された。このパイロット研究は、不確実性下の判断についての新たな知見を提供する。
抄録全体を表示
-
─囚人のジレンマゲームを用いた検討─
武藤 拓之, 鍵 直矢
セッションID: O1-3
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
人は,見知らぬ他者が協力的かどうか(協力性)を判断する際,個人手がかりであるジェンダーや国籍,行動手がかりである運動の軌道などを手がかりとして利用することが知られている。しかし,ほとんどの研究は単独の手がかりの効果検証に留まっており,異なる種類の手がかりが利用可能な現実的な場面における手がかりの統合過程は明らかでない。そこで本研究は,囚人のジレンマゲームを行う2人のプレイヤーの様子を実験参加者に観察させてどちらのプレイヤーと協力したいかを選択させる実験を行い,プレイヤーの個人手がかりと行動手がかりを系統的に操作した。実験の結果,手がかり単独の効果が再現されるとともに,運動の軌道はジェンダーに優越する (実験1, N = 168) が,国籍の手がかりとは加算的に作用する (実験2, N = 168) ことが示された。これらの結果は,人が協力性判断の際に手がかりごとの信頼性を考慮し統合していることを示唆している。
抄録全体を表示
-
―行動実験を通じた妥当性検証―
田岡 大樹
セッションID: O1-4
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
ヒトの賭け行動を理解し予測することは、理論と実践の両面において重要な課題である。しかし、賭け行動には離散的な行動空間 (賭けに参加するか否か) と連続的な行動空間 (いくら賭けるか) の両方が伴うため、従来の意思決定理論とは異なる枠組みが必要である。本研究では、賭け行動の背後にある意思決定の個人差および個人内変化を説明可能な計算論モデルを開発し、行動実験を通じてその妥当性を検証した。ギャンブル課題における賭け行動データを91名分収集し、提案モデルの適合度を評価した。その結果、良好な適合を示す参加者が存在する一方で、一部の参加者では行動データと提案モデルの間に系統的な乖離が見られた。さらに、提案モデルと削減モデルの間でモデル比較を行ったところ、選択されるモデルは参加者毎に異なった。これらの結果は、提案モデルの妥当性を支持すると同時に、賭け行動の背後にある意思決定プロセスの参加者間異質性を示唆している。
抄録全体を表示
-
―ヒューリスティックの使用における属性代替―
杉本 幸大, 白砂 大, 香川 璃奈, 本田 秀仁
セッションID: O1-5
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
本研究では、ヒューリスティック使用の背後にあるメカニズムである属性代替(attribute substitution)を、生態学的合理性(正しい決定に導く程度)と資源合理性(認知的負荷の効率性)の観点から、リスク下の選択課題(ギャンブル課題)を用いて検討した。理論的分析では、最適方略(期待値に基づく選択)は難易度に応じて計算負荷が増大する一方、ヒューリスティックは難易度の高い課題で損失を抑えつつ計算コストを下げる適応的戦略であることが示された。認知実験では、実験参加者は選択の難易度が高くなるほどヒューリスティックを活用し、そして選択時間は難易度によらず一定であった。一方、最適方略は選択の難易度が高いほど選択時間が長く、認知的負荷が大きいことが示された。以上より、属性代替に基づくヒューリスティック使用は、2つの合理性に適合する認知的方略であることが示された。
抄録全体を表示
-
: Opting Out without Improving Accuracy
Rawa AL DOWAJI, Ji XU, Yimeng JIN, Antoine PORTE, Johan LAUWEREYNS
セッションID: O1-6
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
The purpose of this study was to examine the effect of opt-out option’s inclusion on the metacognitive control of perceptual decision-making under challenging conditions. In Experiments 1 and 2, participants were required to compare the flicker frequency of simultaneously presented stimuli. We hypothesized that, with an option to skip, participants would strategically opt out of trials in which they were uncertain, thus reducing their error rates and improving their overall performance. In Experiment 3, participants had to identify the dominant color in a patch of red and green dots with various time pressure and task difficulties. Across the three experiments, we found that the opt-out decision in the factors such as risk and task difficulty imposed a cognitive burden, requiring additional effort without improving accuracy. Thus, the participants proved they could monitor their performance but were unable to achieve strategic metacognitive control with the opt-out option.
Keywords: Perceptual decision-making, Metacognitive control, Opting out, Time pressure, Task difficulty, Risk.
抄録全体を表示
-
―逆相関法による検討―
山口 茉優, 杉森 絵里子
セッションID: O2-1
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
本研究では,恋人の有無が異性の顔の記憶に影響を与えるかを検討した。先行研究では,恋人がいる女性は恋人がいない女性と比較して魅力的な異性を非魅力的に記憶する傾向が示されている。しかし,記憶する側と記憶される側双方の恋人の有無が記憶に与える影響は検討されていない。本研究では,まず75名の学生が恋人の有無が示された異性の顔を記憶し,個人の内的表象を視覚的に近似する逆相関法を用いて記憶した顔の近似画像を作成した。次に84名の学生が作成された近似画像に対して魅力評価を行った。その結果,恋人がいる男性は恋人がいる女性を魅力的に記憶し,恋人がいる女性は恋人がいる男性を非魅力的に記憶した。一方,恋人がいない男性は恋人がいない女性を非魅力的に記憶し,恋人がいない女性は恋人がいない男性を魅力的に記憶した。これらの結果は,恋愛関係が対人印象形成に及ぼす複雑な影響を示唆するものである。
抄録全体を表示
-
上田 祥行
セッションID: O2-2
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
顔に関する画像分類逆相関法では、ベース顔画像に極性反転ノイズを加えて生成した画像を基に、参加者が判断に使用した特徴をボトムアップに反映した分類画像(CI)を構築する。これは参加者が持つ顔の心的イメージを可視化していると考えられるが、生成されたCIが持つ特徴が記憶した顔と一致するかどうかは、現在第三者の主観判断に委ねられている。本研究では、作成されたCIに対してディープラーニングに基づく顔認識モデル(Serengil & Özpınar, 2024)を適用し、実際に記憶された顔との類似性を評価した。その結果、分類課題を200試行以上行うとCIと記憶された顔の類似性が安定することが示された。CIには他の顔よりも記憶した顔の特徴が反映されることが示されたが、顔認識モデルはどの顔が記憶されたのかまでは正確に特定できなかった。これらは現在の手法による限界点を示しており、我々の表象を可視化するためにはさらに洗練された手法が必要であることを示唆している。
抄録全体を表示
-
—CNN・VGG19・VisionTransformerの比較—
佐野 貴紀
セッションID: O2-3
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
顔の魅力要因の解明のために、実験的および計算論的な研究が数多く行われてきた。深層学習を用いた計算論的研究として、顔魅力の予測およびその決定要因の探索が盛んになりつつある。これまでの研究では主に畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が用いられてきたが、近年、Vision Transformer(ViT)モデルが注目を集めている。本研究では、CNNベースのモデルおよびViTを用いて顔の魅力を予測するモデルを構築し、それぞれのモデルが着目する顔の領域を特定した。CNNは目・鼻・口といった局所的な顔の特徴に注目するのに対し、深い層構造を持つCNNモデルであるVisual Geometry Group 19(VGG19)は、より広範な領域をカバーすることが確認された。一方、ViTは皮膚の質感や顔の輪郭といった全体的な特徴に注目し、顔のパーツ間の関係に基づく全体処理を反映している可能性が示唆された。抽出される特徴の性質がモデルにより異なることから、研究目的に応じたモデル選定が必要となる。
抄録全体を表示
-
畑 美緒, 古山 宜洋, 三嶋 博之
セッションID: O2-4
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
視線運動データに対する解析方法として,視野内の実験刺激に対応する特定のエリアに対する停留時間や,実験刺激に重なるようなヒートマップの生成などが一般的に用いられている。しかし,視覚探索課題において,実験刺激に対する注意機能の表れとしての視線運動を捉える場合,停留時間では位置情報が,ヒートマップでは時間情報が消失してしまう点が懸念されている。そこで,両方の情報を保持することを目的とし,実験刺激中心座標系による視線運動データ解析法を提案したい。実験刺激中心座標系とは,実験刺激の位置を中心 (0, 0) として,gazeの位置を相対的な座標位置(距離)を導出する手法である。複数の実験刺激を提示する場合でも,同時に複数扱うことができる。本研究はこの実験刺激中心座標系を用いて,視覚探索課題に対する視線運動の特徴をパターン化した。
抄録全体を表示
-
松田 憲, 篠田 実里, 楠見 孝
セッションID: O2-5
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
松田他(2023)は,ブーバ/キキ図形を参加者に繰り返し視覚呈示し,その後に図形に対する好意度と親近性,安心感,危険度を測定したところ,キキ図形への危険度評価はブーバ図形よりも高く,安心感の上昇はブーバ図形のみで見られた。そして,単純接触効果はブーバ図形のみで生じることを示した。本研究では評定尺度の安心感と危険度をかわいさとかっこよさに変更し,その他の手続きは先行研究を踏襲した。実験の結果,ブーバ図形とキキ図形の両方で単純接触効果が得られた。図形の反復呈示による評定値の上昇はかわいさではブーバ図形のみで、かっこよさではキキ図形のみで見られたことから、両図形への単純接触効果は異なる要因によって生起することが考えられる。また,図形への好意度評定は同時に評定を求めるポジティブな尺度によって向上することが示された。
抄録全体を表示
-
:ポジティブ特性語による効果
松本 絵理子, 市川 眞湖
セッションID: O2-6
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
自己優先効果とは、自己に関連付けられた情報が認知処理で優先される現象であり、一時的に学習された図形にも生じる(Sui et al., 2012)。本研究では、性格特性が自己優先効果に及ぼす影響を検討するため、Sui et al. 2012の実験パラダイムとBig Five性格尺度を用いた。実験1では、幾何学図形に自己・親しい他者・完全な他者のラベルを割当て、関連学習後に照合課題を行った。自己関連試行で反応時間・正答率が促進され、自己優先効果が確認された。また、効果量と外向性得点に相関がみられた。実験2では、Big Five尺度から抽出した性格特性語を自己・他者と関連付け、同様の照合課題を行った。その結果、自己選択したポジティブな性格特性語で自己優先効果が認められた。ポジティブな性格特性が自己優先効果に寄与するという結果は、ポジティブ感情価と自己優先性の関連を示唆する。
抄録全体を表示
-
宮崎 由樹, 神山 龍一, 釼持 泰彦, 河原 純一郎
セッションID: O3-1
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
本研究は,1ヶ月間の化粧用コットン製品のモニター試験が習慣化に及ぼす影響を検討することを目的とした。参加者には,1ヶ月間毎日,入浴後の化粧水や乳液を塗布する際に,できるだけコットンを使用するよう求めた。また,1ヶ月間にわたり,自記式の習慣強度指標 (習慣化得点) およびコットンの利用状況について回答を求めた。その結果,試験開始前にコットンを使用していなかった参加者 (コットン未使用群; n = 38) は,1ヶ月間の利用を通じて習慣化得点が有意に向上し,試験終了時には,もともとコットンを使用していた参加者 (コットン使用群; n = 26) と同程度の水準に達した。さらに,半年後のフォローアップ調査においても,未使用群の習慣強度は試験開始時と比べて高く,約40%の参加者がコットンの使用を継続していた。本研究の結果は,1ヶ月間のモニター試験がコットン使用というスキンケア行動の定着を促すことを示唆している。
抄録全体を表示
-
石松 一真, 中村 友佳
セッションID: O3-2
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
看護業務におけるインシデントの予防には、従事する業務のリスクを看護師が認識し、適切な行動を選択することが必要になる。本研究では、看護実践において自分がインシデントを起こすリスクに関する看護師の認識を明らかにすることを目的とした。急性期A病院に勤務し、内服与薬業務に従事する病棟看護師574名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は、インシデントを起こす可能性や検出する可能性など看護業務全般におけるインシデントに関する認識、個人特性などとした。178名から調査票を回収し、175名のデータを分析対象とした。重回帰分析の結果、自分と同程度の経験年数を有する看護師がインシデントを起こす可能性や日常生活における失敗傾向の自己評価、過去1年間に内服与薬業務に関するインシデント報告書を提出した回数が、看護実践において自分がインシデントを起こすリスクに関する看護師の認識と関連することが示された。
抄録全体を表示
-
増尾 明, 佐久間 拓人, 加藤 昇平
セッションID: O3-3
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
神経難病リハビリテーションでは、脳の生体信号を用いた意思伝達技術であるBrain-Computer Interfaceが切望されている。本稿はBCI応用を目的に、メンタルタスク遂行下の近赤外分光法(NIRS)信号のスペクトル特徴を用いた脳状態推定を試みた。健常成人10名を対象に、30秒間の音楽想起または心的書字課題を遂行下の前額部のNIRS信号を16チャネル計測した。ベースライン補正およびハミング窓を用いた高速フーリエ変換を施し、NIRS信号からスペクトル特徴を抽出した。ランダムフォレストを学習器として、10分割交差検証により脳状態の推定性能を評価した。6試行中4回以上正答した対象者は5名であり、その平均正答率は80%であった。また、左側前頭領域における0.15Hz、0.20Hz帯域の振幅が判別に寄与した。周波数解析は脳血流の長期変動を捉える点で有用であり、BCIへの応用可能性を示唆した。
抄録全体を表示
-
山 祐嗣
セッションID: O3-4
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
本研究では、東洋人の弁証法的思考を説明するために、東洋人の集団主義文化、道教・儒教・仏教といった東洋の哲学的・宗教的伝統、東洋人の高コンテクスト文化といったこれまでの説明の検証に基づき、社会生態学的モデルを提案することを目的とする。東洋人は西洋人よりも弁証法的自己が強いこと、東洋人が弁証法的に受け入れるのは一般的矛盾ではなく(Zhang et al., 2015)、宗教的矛盾である (Yama et al., 2024)。東洋人の哲学的・宗教的伝統が弁証法的に受け入れる傾向を育んだというのは、非常にもっともなことである。しかし、この弁証法的な受容は、一般的矛盾には転移していない。したがって、哲学的・・宗教的伝統が、東洋人の弁証法的自己を説明できるかどうかは疑問である。なぜならば、この伝統が宗教的矛盾の弁証法的受容に与える影響は領域固有的であるのに対し、弁証法的自己は領域一般的だからである。
抄録全体を表示
-
田辺 弘子, 川上 あき, 山本 耕太
セッションID: O3-5
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
就職活動において言語・非言語的振舞いが面接官の印象に影響を及ぼすことが知られているが、応募者の個人属性・自己ブランディング・振舞いの全体的な関係性は明らかでない。そこで本研究では大学生の就職活動時の自己ブランディングパターンを抽出し、個人属性(性格・目標志向性・業種/職種)および振舞いとの関係を検討した。就職活動を終えた大学生515名にアンケート調査を実施し、入社決定先企業の面接時に面接官に期待した自分の印象・BigFive検査項目・面接官との対人関係における目標志向性・業種と職種・面接時の振舞いで意識した点に関する回答を得た。探索的因子分析を行い、自己ブランディングの3因子(協調性・真面目/理性・冷静/外向性・積極性)が抽出された。さらに個人属性(性格・目標志向性・職種)と自己ブランディング(因子得点)、また言語/非言語的な振舞いへの意識量と自己ブランディングの強度の間の関連性が明らかになった。
抄録全体を表示
-
―大規模言語モデルが示唆するビッグファイブの認知側面
山下 純平, 大石 晴夫, 熊田 孝恒
セッションID: O3-6
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
日常生活における個人の認知特性を説明する枠組みの構築を目指している。本研究では、既存研究がデータドリブンに抽出した「職業選好」から、認知特性因子を抽出することを目指した。職業名は、社会における多様な認知活動(情報処理)の事例であり、それらに対する選好は、個人がどのような認知活動に適しているかを含む可能性がある。そこで、大規模言語モデル(ChatGPT)に、「機械工」「事務員」などの職種で構成された選好因子を入力することで、これら職業に必要であると出力された認知活動をリスト化し(「物の位置関係を頭でイメージすること」など)、リスト項目への回答態度から個人差因子を抽出した。結果、5つの因子が抽出され、さらに一般因子を統制すると、回転が生じながらもビッグファイブ各因子との対応が示唆された。5因子がビッグファイブ特性の認知的側面を取り出しており、日常生活と認知課題の個人差を統合的に説明することを期待している。
抄録全体を表示
-
加賀美 果歩, 小鷹 研理
セッションID: O4-1
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
視聴覚統合において,両刺激の位置が吸着する腹話術効果はよく知られている.これに類する聴触覚統合において,左右方向の音源定位において同期した皮膚振動があると音の認識方向が触覚側に偏ることを示されているが(Caclin, 2002),音の知覚距離が触覚部位に位置レベルで吸着する直接的な証拠は報告されていない.筆者らは,近年,頭部から離れた音刺激が同期接触を与える頭頂周辺で知覚されるマグネット効果を観察しており(Kodaka & Kagami, CHI 2025),本研究では,聴覚刺激と同時に被験者の頭部または肩に触覚刺激を与えた際のマグネット効果を検証した.その結果,主観評価では肩条件よりも頭部条件で有意に強いマグネット効果が検出され,行動実験でも,ベースライン位置に対する知覚距離が,肩条件で10%に対して,頭部条件では約30%の距離引き寄せられることを確認した.以上の結果は,主観的な音定位のマグネット効果が肩よりも頭部で強くなることを示すものである.
抄録全体を表示
-
—脳波位相同期による注意制御機能の評価—
川崎 真弘, 上野 喜生
セッションID: O4-2
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
本研究は、注意欠如・多動症(ADHD)傾向が視聴覚注意機能にどのように影響するのかを明らかにすることを目的とした。特に、視覚と聴覚が矛盾した刺激の統合を反映するマガーク課題を用いて、静かな環境およびホワイトノイズ環境の2条件で行動成績と脳波位相同期を測定した。静かな環境下では、ADHD傾向が高い参加者ほど聴覚刺激への過敏性が強く、その結果としてマガーク効果の知覚が困難となり、前頭部と右側頭部間のα帯域位相同期が低下した。この結果は、ADHD傾向が高い場合における聴覚皮質への抑制が不十分であることを示している。一方、ホワイトノイズ環境では、ADHD傾向が高い参加者ほど視覚刺激への注意資源が減少し、前頭部のθ波活動が低下すると共に、前頭-側頭間および前頭-後頭間のβ帯域位相同期も低下した。これらの結果は、ADHD傾向が高い場合には視覚刺激へのトップダウン的な注意制御が障害され、視聴覚情報の統合に支障が生じることを示唆する。
抄録全体を表示
-
髙橋 奈里, 佐藤 優太郎, 横坂 拓巳, 小鷹 研理
セッションID: O4-3
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
我々は最近,向かい合わせた自己の両側の指に同期接触を付与することで,指が接合したように知覚される自己溶接錯覚を報告した(髙橋他, 2024).本錯覚において,左右方向における知覚的な指先位置の変化が関与することは示されているが,近位–遠位方向における指先の配置変化が関与するかは明らかにされていない.本研究では,一直線上に配置されていない左右の指に対する同期接触が,その知覚的配置に及ぼす影響を検討することを目的とした.実験では,参加者の左右の人差し指と薬指(直線上にない配置)に対し,同期または非同期の触覚刺激を付与した.参加者は,刺激提示の前後において,各指の近位–遠位方向の知覚的位置を報告した.解析の結果,同期刺激条件において,二指間の距離が有意に縮まることが明らかとなった.本結果は,自己の左右の指に対する同期接触が,指の配置を一直線上にアラインメントさせる可能性を示唆するものである.
抄録全体を表示
-
村上 遥, 稲邑 哲也
セッションID: O4-4
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
仮想現実(VR)環境では、距離・サイズ・速度・時間・感覚などの知覚が現実世界と異なる点があることが知られている。中でもこれらの項目については、傾向的に過小評価される現象が多く報告されている。この現象は特に距離やサイズに関して広く研究されており、レビュー論文も存在するが、他の知覚要素を含めた統括的なレビューは少なく、共通の名称も未だ確立されていない。そこで本論文では、この一連の現象を「VRにおける過小評価現象(underestimation phenomenon in VR)」と名付け、現時点で報告されている関連研究を総覧することを目的とする。具体的には、視覚的手がかりの不足、視差情報の欠如、視野制限、身体運動との不一致といった要因が、どのように知覚の歪みを引き起こすかについて整理・考察した。
抄録全体を表示
-
―共同体共有の媒介効果―
八木(大橋) 紅音, 塩見 昌裕, 入戸野 宏
セッションID: O4-5
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
かわいいと感じることは,これまで個体のベビースキーマを中心に研究されてきた。しかし近年では,個体の数やその関係性によっても,かわいいと感じる程度が変わることが示されている。本研究では,互いに触れ合う2体がなぜかわいいと感じられるのかを,共同体共有(平等さや親密さによって特徴づけられる社会的関係)の知覚の観点から検討した。触れ合いの有無を操作した写真について,2体のベビースキーマの高低と触れ合うときの身体の向き(内/外)を変化させ,かわいいと感じる程度と共同体共有を感じる程度を評定させた。その結果,ベビースキーマの程度や身体の向きによらず,触れ合う方がかわいいと感じられた。触れ合いの効果と身体の向きの効果は,どちらも共同体共有の知覚によって媒介された。このことから,触れ合いや向かい合いは対象間に親密な関係性が知覚されることで,かわいいと感じられることが示唆された。
抄録全体を表示
-
城村 直寛, 田村 恵, 佐藤 恵助, 植田 一博
セッションID: O4-6
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
他者と共同作業を行った際に、我々が行った感覚として「共同運動主体感」を感じることがある。Obhi & Hall(2011)はプログラムとの共同作業では共同運動主体感が生じないこと、Sahaïら(2023)は相手の外見の人らしさが共同運動主体感に影響を与えることを示した。これらは相手を人らしいと感じる程度が、共同運動主体感に影響を与えることを示唆している。しかし、相手のアイデンティティ(ヒトかプログラムか)に関する情報が共同運動主体に与える影響については明らかでない。本研究では、事前に与えられる相手のアイデンティティ情報がタスク時の共同運動主体感に与える影響について、実際の相手が人またはプログラムの要因と、事前に与えられる相手の情報が人またはプログラムの要因からなる2×2の実験計画で検討した。結果、相手に関する事前情報が人の場合に共同運動主体感が強くなり、相手がプログラムであっても共同運動主体感が生じることが明らかになった。
抄録全体を表示
-
: experimental and computational insights from human development
Lukas Vogelsang, Marin Vogelsang, Sidney Diamond, Pawan Sinha
セッションID: O4-7
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
Human visual development unfolds in a stereotypical temporal manner, with early-life inputs being markedly degraded. Rather than constituting mere biological constraints, we recently obtained evidence across two visual domains that these developmental “limitations” may be adaptive, facilitating the acquisition of processing strategies that support global and robust perception later in life. This evidence derives from studies of a rare group of children in India who were born blind and gained sight as adolescents, effectively bypassing this early period of degraded vision. Despite many otherwise intact visual abilities, we found that these children exhibit specific and permanent deficits in extended spatial integration and resilience to image degradations. Simulations with deep neural networks confirm that these deficits can causally arise from a lack of early degraded inputs. These findings illuminate typical and atypical visual development, have implications for other sensory systems, inform novel clinical interventions, and inspire more robust computational training procedures.
抄録全体を表示
-
―Retro-cueを用いた検討—
佐伯 恵里奈
セッションID: O5-1
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
刺激と反応の連合には大きく分けて2つの形式がある。ひとつは、刺激と反応を一対一で結びつける刺激‐反応(S-R)連合、もうひとつは刺激と反応の連合をある規則に従って結びつけるタスクセットである。タスクスイッチングを用いた先行研究(Van't Wout et al., 2015)から、S-Rよりタスクセットのほうが効率的に保持できる可能性が示唆されている。本研究では、この可能性をさらに検討するため、同じ記銘画面に対してS-R連合あるいはタスクセットとして教示を行い、テスト項目を予め伝える手掛かり(retro cue)の数を操作する実験を実施した。実験の結果、S-R教示群はretro cueが1つの条件においてのみ反応が速くなる一方で、タスクセット教示群では、retro cueが1つのときだけでなく、2つのときでも手掛かりがない条件よりも速く反応できることが示された。このことから刺激と反応のつながりをタスクセットとしての教示することは保持効率の向上に寄与することが示唆された。
抄録全体を表示
-
:呈示形式と処理時間に着目して
丹治 真琴, 齊藤 智
セッションID: O5-2
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
現実世界の物体を対象とする視覚性ワーキングメモリ課題では,物体刺激を一つずつ順番に処理する個別的処理方略の方が,複数の刺激を単一の視覚的イメージとして処理する並列処理方略よりも優れた再認成績を導く。これは,刺激の呈示形式(系列呈示と同時呈示)を操作し2つの処理方略をそれぞれ誘導することで検討されてきた。ただし,方略を誘導するための呈示形式や処理時間の違い自体が成績に影響した可能性がある。個別的処理方略が成績向上の要因ならば,同時呈示であっても系列呈示と等しい処理時間を設けて個別的処理方略を教示することで成績が向上するはずである。そこで本実験では,刺激の呈示形式と処理時間を操作し,個別的処理方略の効果とそれが有効に働く条件について検討した。結果,同時呈示でも系列呈示と同様の処理時間を設けることで再認成績が向上した。しかし,系列呈示で成績が優れるという先行研究の結果は再現されなかった。
抄録全体を表示
-
: A Secondary Analysis of Mental Jigsaw Puzzles in Mixed Reality
Tsuyoshi YOSHIOKA, Jun SAIKI
セッションID: O5-3
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
This secondary analysis explores gender differences in real-time and retrospective metacognition, focusing on how individuals reflect on their problem-solving strategies in mental rotation and jigsaw puzzle tasks. While gender differences in mental rotation performance have been widely studied, the metacognitive processes underlying strategy selection remain largely unexplored. Data from 40 participants (20 female, 20 male; Mean age = 21.5 years) were analyzed. Participants observed animations of objects moving along shortcut or detour paths and selected the trajectory that best represented their mental strategy using a foot pedal. The analysis found no statistically significant gender effects, but exploratory analyses suggest potential gender biases in real-time metacognition, notably in the fitting task and at 0°. In contrast, the retrospective condition, based on data from previous research, showed no distinct gender-related patterns, as participants reflected on past problem-solving under time constraints, warranting further investigation.
抄録全体を表示
-
Nan NI, Hiroyuki TSUBOMI, Satoru SAITO
セッションID: O5-4
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
Previous optimism that working memory (WM) training may induce wide-reaching cognitive benefits was driven by strong positive correlations between WM and complex cognition. However, using a two-phase training paradigm, we found that such relationships do not guarantee positive transfer in WM training. In Phase 1, participants were trained on either the backward digit or circle span or an active control task. In Phase 2, all participants were trained on the backward letter span. Results showed that Phase 1 performance on both the backward digit and circle span significantly predicted Phase 2 performance on the backward letter span. However, while backward digit span training led to positive transfer to Phase 2 backward letter span performance, backward circle span training resulted in negative transfer. These findings suggest that although task relationships reflect shared structural components, they do not determine transfer direction. This challenges the assumption that high pre-training correlations predict beneficial outcomes.
抄録全体を表示
-
袋本 久美子, 福島 宏器
セッションID: O5-5
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
祈りは多くの人々の日常生活において重要な側面であるが、祈りと認知的パフォーマンスの関係についてはほとんど知られていない。本研究は、自身の行動を誓う形式の祈り(誓願)が、計算課題のパフォーマンス向上に及ぼす影響を実証的に明らかにした。大学生48名を対象とした実験では、参加者を3群(誓願群、嘆願群、自己指示群)に分け、計算課題前の祈りまたは自己指示の文言を操作した。その結果、誓願群は他の2群と比較して、計算課題の回答数が有意に向上することが示された。さらに、各課題前に求めた回答数予測値も上昇し、この予測値が実際のパフォーマンス向上を媒介していた。これらの結果は、誓願の祈りが課題に対するポジティブな心理状態を促進し、それを通じてパフォーマンス向上をもたらすことを示唆している。本研究は、祈りの形式が認知的パフォーマンスに影響を及ぼすことを示し、その効果が祈りの種類によって異なることを明らかにした。
抄録全体を表示
-
齋藤 岳人, 井上 和哉
セッションID: O5-6
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
書体の可読性(長い文や単語での読み進めやすさ)と接触経験は強く関連するものの,これらの因果関係は明確ではない。本研究では,実験室内で書体への接触経験を操作し,接触経験操作前よりも操作後において接触した書体で表された文の可読性が向上するかを検討した。具体的には,可読性が同程度の2書体(創英角ポップと創英プレゼンス)で表された文の可読性を評定させた後,一方の書体のみで表された無意味な文字列を提示し,書体への接触経験を操作した。その後,両書体で表された文の可読性を再度評定させ,操作前後の変化を比較した。その結果,接触経験操作時に接触した書体のみで操作後に可読性が向上した。また,接触経験操作時に使用した文字を含まない文であっても,操作時に接触した書体で表されたものは可読性が向上していた。これらの結果は,特定の書体に接触するなかで,書体の一貫した特徴を学習した結果,可読性が向上したことを示唆する。
抄録全体を表示
-
髙田 一真, フローズ トム
セッションID: P1-01
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
運動主体感とは,自らの身体運動が生み出す環境の変化を,自分の行動によるものだと感じる主観的な感覚を指す.我々は,画面上に提示された複数のドットを操作し,自分の動きに最も近いと感じる対象を選択させる制御検出課題を用いて,運動主体感の変化や特性を調査している.これまでの研究に基づいて,我々は参加者が「自分の動きに最も近い」対象を探索・選択する過程で運動パターンに顕著な変化が生じるという仮説を立て,過去に実施した制御検出課題(Takada & Watanabe, 2022; Takada et al., 2025)から得られたデータを再分析した.その結果,ドットの探索過程において一部の参加者から運動パターンの特徴的な変化が観察され,運動主体感が生起するタイミングを推定できる可能性が示唆された.また,この傾向は乳幼児を対象とした先行研究の結果とも類似している.本稿では,データの分析手法とその結果を報告し,運動主体感の生起過程について検討・議論することを目的とする.
抄録全体を表示
-
矢ノ倉 萌, 寺村 堅志, 渡辺 めぐみ
セッションID: P1-02
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
軽運動の前後におけるテンポ知覚の変動を実験的に検討した。実験参加者である大学生は,ターンステッパーによる運動の前後に音刺激を聴取した。音刺激はA3(440 Hz)の四分音符がピアノ音で流れ続けるものであり,テンポのみが異なる6種類(60 bpm,80 bpm,100 bpm,120 bpm,140 bpm,160 bpm)を用いた。参加者はそれぞれの音刺激について,PCに表示された直線上のつまみを動かす形で,テンポをどのくらいの速さと知覚したか回答した。60 bpmと160 bpmにおける回答値を基準とし,他のテンポについて回答値の位置する割合を算出した。この値を従属変数として一要因分散分析を行ったところ,120 bpmの音刺激について軽運動後には算出値が有意に大きくなり,参加者がより速いテンポに知覚していることが明らかになった。120 bpmは自発テンポや嗜好テンポの範囲内にあり,時計の秒針の2倍の速さでもある。人にとって身近なテンポであり,このことがテンポ知覚の変動に影響したと考えられる。
抄録全体を表示
-
内藤 優太, 河地 庸介
セッションID: P1-03
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
本研究では,静的な姿勢において錘の重心の高さが重量感覚に与える影響の検討を目的に実験を行った。実験1では,低重心の標準刺激と7段階の重さの低重心の比較刺激,低重心の標準刺激と7段階の重さの高重心の比較刺激を用いて弁別実験を行った。参加者が比較刺激を標準刺激より重いと判断する割合から主観的等価点を算出した結果,低重心-高重心の主観的等価点の方が有意に大きかった。実験2では,低重心の標準刺激,低重心,中重心,高重心の3水準の比較刺激を設定し,各水準で比較刺激を標準刺激より重いと選択する割合を測定した結果,低重心の選択率は中重心の選択率より有意に高かったが,低重心の選択率と高重心の選択率との間に有意差は見られなかった。このことから,静的な姿勢において錘の重心の高さは重量感覚に影響を与えており,ある高さまでは重心が上にあるほど錘を軽く感じるが,一定の高さを越えると錯覚が消失する可能性が示唆された。
抄録全体を表示
-
:知覚的チューリングテスト
尾島 杏佳, 本吉 勇
セッションID: P1-04
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
人間は多彩な物体表面の材質を容易に認識し,光沢,透明感などの材質特性を知覚する.本研究では,この材質知覚が低次・高次の画像統計量によりどれほど決定づけられるかを検証した.10の材質カテゴリからなる自然表面の画像200枚と,それらを低次の統計量で合成したPS合成画像および深層画像統計量で合成したスタイル合成画像を用い(計600枚),材質カテゴリの分類成績,表面特性の評定値,および視覚誘発電位(VEP)による材質判別精度,が合成画像と原画で異なるかを検証した.その結果,原画とスタイル合成画像の間でデータは非常に類似することがわかった.また,深層画像統計量は行動的な分類成績と類似した誤答パタンを示し,また特定の潜時におけるVEPと強い相関を示した.これらの結果は,(CGではない)現実世界における人間の材質知覚が,二次元画像のもつ高次の統計的特徴によりほぼ決定されるという考えを支持している.
抄録全体を表示
-
竹島 康博
セッションID: P1-05
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
物体の大きさと音の大きさのように,我々は感覚刺激の特定の特徴同士に結びつきを感じる。このような現象は異種感覚間協応と呼ばれ,協応の分類によって処理段階が異なると考えられる。これまでの研究では,時間順序判断の精度においては構造的,統計的,意味的に分類される協応の違いを見出すことができなかった。そこで本研究では,同時性判断の時間窓の幅を指標として,時間的処理において協応の分類による差異が存在するのかを再度検討した。実験の結果,いずれの分類においても協応の有無による時間窓の幅の違いは観察されなかった。また,予備的に推定した主観的同時点についても協応の有無による差異はいずれの分類においても観察されなかった。時間順序判断課題による検討の結果も踏まえると,構造的,統計的,意味的の3つの異種感覚間協応の分類について,その背後に存在する処理段階の違いは時間的処理には反映されないことが示唆される。
抄録全体を表示
-
井上 晴菜
セッションID: P1-06
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
同定する対象である標的人物が減るにつれて,標的人物の音声を正しく選んだ率が高くなることが報告されている。これは,複数の人物の音声を聴くことで,標的人物の音声かどうかを判断しにくくなると解釈できるだろう。そこで,本研究では,(a)標的人物と標的人物の音声に似ている音声をもつ男性の場合と,(b)標的人物と標的人物の音声に似ていない音声をもつ男性の場合に,標的人物に対する「標的人物の音声と同じ人物のものだと思う程度」を比較することで,提示される話者の音声の識別しにくさが,標的人物の音声と同じ人物のものであるかどうかを判断しにくくするのかを検討した。その結果,(a)標的人物と標的人物の音声に似ている音声をもつ男性の会話で学習するほうが,(b)標的人物と標的人物の音声に似ていない音声をもつ男性の会話で学習するよりも,話者同一性評定の成績が低くなった。これは,複数話者の音声の区別しにくさが影響したことが考えられる。
抄録全体を表示
-
後藤 靖宏
セッションID: P1-07
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
外国映画の吹き替え版を鑑賞する場合と字幕版を鑑賞する場合について,音声が異なることによって登場人物の印象に差があるかを実験的に調べた.まず,映画を吹き替え版で鑑賞する群と,字幕版で鑑賞する群に実験参加者を分けた.次に,映画のワンシーンから抜粋した4本の映像をそれぞれ見せた後に,8因子に分類される50項目の評価語を7段階で評定させた.実験の結果,吹き替え版と字幕版の違いは登場人物の印象に影響を与えていた.この結果は,鑑賞者が吹き替え版を鑑賞する場合と字幕版を鑑賞する場合とで,登場人物に対して同一の印象を受けていないことを示しているといえる.具体的には,原音である字幕版と比較して吹き替え版の方が,登場人物に対して誇張した印象を受けている可能性が考えられる.
抄録全体を表示
-
鈴木 悠介, 永井 聖剛
セッションID: P1-08
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
他者音声と自己の発声音声が類似することを音声収束と呼び,先行研究では音響特徴や刺激提示時間を操作可能なシャドーイング課題を用いることで,そのメカニズムが調べられてきた。しかし,当該課題では音声刺激が発声キューかつ収束対象であり,参加者は常に音声に注意を向ける必要があった。このため,既に発声計画が開始された後に提示される課題無関連な音声刺激に対しても収束が生じるかは不明であった。本研究では,発声計画開始後に提示される課題無関連な音声刺激に対し,ピッチ収束が生じるかを検討した。参加者は発声キューに従い,できる限り早く発声することが求められ,発声キュー提示直後に異なるピッチでの課題無関連な音声刺激が提示された。その結果,刺激ピッチの高/低に応じて発声ピッチが高/低くなるピッチ収束が示され,発声計画中であっても入力音声が課題関連性にかかわらず発声処理に組み込まれ,音声収束が生じることが示唆された。
抄録全体を表示
-
山浦 美羽, 西山 めぐみ
セッションID: P1-09
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
視覚的長期記憶が詳細な情報を長期間保持可能であることは知られているが(Brady et al.,2008),聴覚的記憶,とりわけ非意味的な音声情報(声色やイントネーションなど)の保持特性については未解明な点が多い。本研究は,寺澤・太田(1993)の間接再認手続きを基に,偶発的学習が非意味音声情報の長期記憶保持に及ぼす影響を検討した。日本語母語話者22名を対象に日常的に耳にする挨拶音声(「おはよう」)を呈示し,呈示回数(0回または2回)が2週間後の再認成績(ヒット率・虚再認率)に与える影響を測定した。その結果,呈示回数が多いほどヒット率および虚再認率が有意に高かった。以上から,偶発的に聴いた非意味音声情報でも反復呈示により長期間保持される可能性が示され,音声認識や言語学習,社会的コミュニケーションの研究への応用が期待される。
抄録全体を表示
-
藤田 哲也, 井上 晴菜
セッションID: P1-10
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
テキストを入力して音声を合成する技術により生成された合成音声に対する評価基準の一つに「自然性」が挙げられている。その自然性を診断する評価項目の一つにイントネーション(抑揚)がある。本研究の目的は,合成音声作成時に抑揚の有無を操作することが,聞き手が認知する自然さに影響するか,その影響は単語の熟知価によってことなるかを検討することであった。高熟知語と中熟知語各40語を,入力文字読み上げソフト(VOICEPEAK)で読み上げる際に抑揚の有無を操作し,音声刺激を作成し,参加者に話し方の自然さの評定を求めた。その結果,読み上げられた単語の抑揚の有無と熟知価が,話し方の自然さの評定値に影響を与えることが確認された。また,高熟知の単語においては,同一単語の抑揚ありと抑揚なしの間で負の相関が見られた一方で,中熟知の単語においては,有意な相関が見られなかった。
抄録全体を表示
-
小池 光, 野村 理朗
セッションID: P1-11
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
身体内部から生じる感覚である内受容感覚は,様々な認知プロセスに関与していると考えられている。近年,内受容感覚の指標を測定方法(主観的/客観的)と測定対象(正確さ/注意)の2×2の要素から整理・分類するモデルが提唱され,各要素間の関連性が検討されてきた。その多くの研究は,心拍知覚の指標に焦点を当てており,他の感覚モダリティにおける指標間の関連の多くは不明であった。こうした動向を背景に,本研究では,心拍知覚課題,温度知覚課題,質問紙により内受容感覚を定量化し,測定方法間・測定対象間・モダリティ間の指標の関連性を検討した。その結果,正確さの指標同士は正に相関した一方,正確さと注意の指標はほぼ無相関であること等が明らかとなり,内受容感覚の研究において測定対象の違いを考慮することの必要性が示された。
抄録全体を表示
-
景山 望
セッションID: P1-12
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
検査用紙による認知課題を高気圧環境下で複数回実施した場合,課題の難易度に関係なく課題成績は低下することが報告されている.また,高気圧環境では健常者であっても手の振戦が生じるとされている.一方で,大気圧下で人間の身体部位や全身を刺激とする心的回転課題を行う場合,運動経験や身体状態 (e.g., 骨折,関節痛) によって課題成績は異なることが報告されている.これらは,高気圧環境での認知課題遂行時,手の実際の運動と心的操作が阻害されることを示唆しているが,その関連については明確にされていない.よって,本研究では高気圧曝露と身体部位の心的操作との関連について,刺激に手の写真を用いた心的回転課題によって検討した.本実験において,心的回転課題を大気圧 (1気圧) と31気圧で実施した結果,環境圧の違いによる課題成績の変化は見られなかった.本実験の結果から,高気圧曝露によって手の心的操作は阻害されないことを示された.
抄録全体を表示
-
Hiroshi SHIBATA, Hideki OHIRA
セッションID: P1-13
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
Breathing has been shown to shape cognition, emotion and behaviour. Previous work suggests that voluntary movements such as key press tend to coincide with the exhalation phase, and this relationship even extends to mental imagery. Additional research in motor physiology shows that breathing can influence maximum force production in different types of actions differently. The present study sought to determine whether the modulation of breathing cycles in voluntary action initiation differs between action types. We used the Kornhuber task, in which 32 participants spontaneously performed either push or pull movements with a joystick every 8-12 seconds while their breathing flow was measured. We then assessed whether these movements tended to start at a particular phase of the breathing cycle. The data showed a significant bias towards exhalation for both pull and push movements compared to baseline breathing patterns. In addition, the average timing of the breathing cycle was not significantly different between these two types of actions. These results suggest that breathing cycles have a general influence on the early stage of voluntary action initiation, regardless of the specific action type.
抄録全体を表示
-
新川 舞雪, 村田 藍子, 山本 浩輔, 夏目 幸奈, 西條 直樹, 渡邊 克巳
セッションID: P1-14
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
本研究では、ダンサーの熟練度が観察者による感情の識別精度に与える影響を検討した。ダンサーが同一の振り付けを楽しい音楽または悲しい音楽に合わせて踊る映像を撮影し、表情の影響を避けるために頭部をぼかし、音楽の影響を除くために音声を除去した無音映像を実験刺激として用いた。実験参加者はこれらの映像を視聴し、ダンサーが表現している感情を判断した。参加者は、プロダンサーの映像を視聴する群と、アマチュアダンサーの映像を視聴する群に分けられた。両条件とも正答率は偶然(50%)を有意に上回り、観察者はダンサーの表情や音楽といった手がかりがなくても身体表現のみから感情を識別できることが確認された。また、プロダンサーの映像を視聴した群の方が、アマチュアダンサーの映像を視聴した群よりも正答率が高かった。このことから、ダンスの熟練度が感情表現の明瞭さに影響を及ぼし、それが観察者の認識精度にも関与する可能性が示唆された。
抄録全体を表示
-
—拡散過程モデルによる認知過程の推定
澤田 玲子, 中島 亮一, 熊田 孝恒
セッションID: P1-15
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
感情と空間には結びつきがあり、顔表情認識における快感情-上空間連合の影響が一貫して報告されている。我々は、快・不快感情を表す顔表情と上・下を表す図形を逐次呈示し、空間情報が感情認識に、感情情報が空間認識に及ぼす影響をそれぞれ調べ、上プライマーに続く快ターゲットの認識は不快ターゲットより速く、不快プライマーより快プライマーに続く上ターゲットの認識が速いことを示した。本研究では、この感情と空間の相互作用の認知過程を拡散過程モデルにより推定した。その結果、上プライマーに続く不快ターゲットより快ターゲットに対するドリフト率が高く、不快プライマーに比べて快プライマーは上ターゲットに対する非決定時間を短縮させた。よって、空間は感情認識過程(情報蓄積のスピード)を、感情は空間判断の反応実行過程をそれぞれ促進することが示された。つまり、感情と空間は双方向的に影響するが、その影響は異なる過程に反映される。
抄録全体を表示
-
――暴力場面での検討――
花島 諒, 大山 潤爾
セッションID: P1-16
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
行為者の視点からの見え方を想像することは、行為者に対する感情的視点の取得に影響を与える(Erle & Funk, 2022)。しかし、二者間の行為を実際に観察する視点位置”視覚的視点”を変えることが、直接的に感情的視点取得に及ぼす影響は明らかではなかった。
そこで、本研究では実際の人から計測した殴る/殴られる動作を外見の異なる複数の男女アバターのペアに適用した暴力場面を、視覚的視点3条件(加害者側、被害者側、中立)から撮影した動画について、殴った強さ、殴られた痛み、行為の悪さの評価を求めた(N=320)。
実験の結果、全ての評価で、女性参加者の方が男性参加者よりも強く報告された。痛みの評価は、中立条件で、その他の視覚的視点条件よりも強く、加害者が男性アバターの条件で、その逆よりも強く報告された。一方、強さと悪さの評価については、視覚的視点と外見の交互作用がみられ、外見によって視覚的視点による印象が異なる可能性が示唆された。
抄録全体を表示
-
―生きがい形成モデルにおける直観性と合理性の媒介効果―
向居 暁, 中本 朋花
セッションID: P1-17
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
これまで,死後の世界を信じることと幸福感の正の関連が示されているが,そのメカニズムは十分解明されていない。その中で,向居・中本(2024)は,直観的思考(直観性)が死後世界信奉と主観的幸福感を媒介し,内省的思考(合理性)も弱く寄与することを示した。向居・中本(2025)は,直感的思考は幸福感の状態的で感情的な側面と,内省的思考は能動的で認知的側面とより関連する可能性を指摘した。本研究は,日本独自の幸福概念「生きがい」に着目し,生きがい形成モデル(熊野, 2013)の枠組みを用いて,死後世界信奉と直観的・内省的思考が,より能動的な生きがいプロセス,および,より受動的な生きがい状態に及ぼす影響を構造方程式モデリング(SEM)により検討した。その結果,予測に反して,直観的・内省的思考の両者が生きがいプロセスを促進した一方で,生きがい状態に対してはそれらの影響は限定的であることが明らかになった。
抄録全体を表示
-
浅田 はな, 松本 昇
セッションID: P1-18
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
エピソード的未来思考(EFT)とは,ある特定の個人的に経験されるであろう出来事を想起し表現する能力のことである。EFTの異常はうつ病や不安症との関連が指摘されており,エピソード的未来思考の異常により日常生活に支障をきたす可能性が考えられる。EFTをポジティブかつ特定的なものへと改善することはうつ病をはじめとする精神疾患の治療の一助となる可能性があるといえる。本研究では,EFTにおける創作物の役割に注目し,(1)創作物に触れた群は,未来思考の特定性および鮮明度が高まる(2)呈示される物語の感情価に伴ってEFTの感情価も変化するという仮説のもと研究を行った。参加者は8日間に渡って短い物語にふれるもしくは簡単な計算課題に回答し,その前後でEFTに変化があるのかを検討した結果,仮説 は支持されなかったものの,呈示した物語に関連のない手がかりを用いた場合にEFTの鮮明度,感情強度,エピソードのネガティブ感情が低下することなどが示された。
抄録全体を表示
-
伊藤 美加
セッションID: P1-19
発行日: 2025年
公開日: 2026/02/20
会議録・要旨集
フリー
教員や保育者に求められる力について、それらを目指す養成課程にいる学生はどのように考えるのか、そしてそれらの力をどのように自己評価しているのかを検討することを目的とした。まず研究1では、社会人基礎力尺度(西道, 2011)について「保育者に必要な力」を尋ね、その必要度の評定に対して因子分析を行った。その結果、「基礎力」「応用力」「発想力」「主体性」の4因子構造であることが示された。次に研究2では、研究1で確定した質問項目に対して、学生に「自分に必要な力」と「自分の力」とを尋ね、「保育者に必要な力」について自己評価を求めた。その結果、「自分に必要な力」と「自分の力」の差異が、「応用力」「発想力」では見いだされたのに対し、「基礎力」と「主体性」では見いだされなかった質問項目があった。そして、求められる力として自分が身に付けるべきかを、学生がどのように認識しているのかについて考察した。
抄録全体を表示