エントロピーの概念は分かりにくい概念のひとつである.そのため,熱力学の教育においてその概念をどのように表現するかということは非常に重要である.本報では,抽象的なエントロピー概念を説明する際に最も重要である言語表現に着目した.ここでは,これまで一般的に用いられてきたエントロピー概念を表す言語表現について調査し,特に熱力学的エントロピー概念を表現する場合の言語表現の問題点について検討した.更に,実際の分子運動を表現した粒子のアニメーションを制作し,運動範囲(体積)や粒子速度(温度)の異なる8種類の映像を被験者に見せ,それぞれ粒子の運動から計算によって得られるエントロピー値による順位と代表的な数種類の言語表現によって順位づけされた映像の順位との相関性について検討した.その結果,「拡散の度合い」と「捕まえにくさの度合い」という言語表現がエントロピー値と相関が高いことが分かった.