抄録
2属性3肢選択意思決定課題において,文脈効果の一種である類似性効果とは,デコイがターゲットと類似しており,1属性でやや劣り,別の属性でやや優れ,総合的な期待効用が等しければ,デコイの追加によって,ターゲットの選択率が低下し,コンペティターの選択率が上昇する現象をさす。本研究では,3選択肢の属性値をすべて端数に設定した場合,従来,類似性効果が生じるとされる実験条件においても,ターゲットの選択率は低下せず,コンペティターの選択率が低下する類似性相乗効果が生じることを示し,選択肢への選好を反映する停留時間を時系列的に分析することを目的とした。実験参加者は,大学生37名であった。実験の結果,有意な類似性相乗効果が示された。都築他(2014)による,妥協効果条件,魅力効果条件の分析結果と比較すると,本条件における3肢に対する停留の時系列的推移の様相が,かなり異なる点が興味深い。