抄録
情報システムで利用される擬人化エージェントは,利用者との間に対人インタラクションを模したコミュニケーションをもたらし,高次の機器利用へつなぐ狙いがある。こうした相互作用においてエージェントに対する生物らしさ知覚が基盤になると考え,擬人化エージェントの生物らしさ知覚の有無と,そこでの身体性の効果を検討した。オーブンレンジを対象とし,目・腕のロボットパーツを取り付けた身体条件,音声だけの音声条件,エージェント化しない統制条件の3条件を比較した。65歳以上の高齢者と若年成人各36人がユーザビリティテスト形式の実験に参加し,主観的な生物らしさ知覚を評価した。その結果,生物らしさ知覚には“生体感”と“知性”の2側面があり,高齢者は身体性付与により両者が高まるが,若年者は特に“知性”に関し身体性の付与による評価の低下を示した。年齢群間での相違を基に,エージェントの生物らしさ知覚の機序について検討した。