2011 年 16 巻 1 号 p. 45-54
継続的な認知リハビリテーションの実施で,高次脳機能障害は長期にわたって回復が期待できるとされている。しかし,実際には医療報酬や人員,設備等の問題から慢性期の患者に十分関われるだけの余裕が医療側にない。他方,患者側にしても急性期ほどのリハビリテーション(以下リハ)への意欲や期待は失われているように思われる。本症例は7歳時に崖から転落して広範に脳を損傷した18歳の女性である。養護学校卒業までは小児専門リハ施設に並行して通っていた。年齢制限によりその施設でのリハが終了となったことから当院での外来リハが開始となった。初期評価において注意障害,記憶障害,失語が認められたため,注意訓練を基盤にした高次脳機能障害へのアプローチを1年間実施した。リハ後は注意,記憶,言語能力に改善がみられ,行動観察上も変化を認めた。このことから系統的な認知リハを継続する意義と慢性期の患者の改善への可能性が確認された。