認知リハビリテーション
Online ISSN : 2436-4223
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原著
  • 有川 瑛人, 亀川 桃歌, 津田 哲也
    2025 年 30 巻 p. 1-26
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/28
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    左頭頂葉病変による失書例では,文字想起の障害,文字形態の歪み,筆順の誤りなど多様な症状がみられるが,これらの誤りに対する明確な分類基準は確立されていない.本研究では,左頭頂葉病変に伴う失書例に対し,Teeら(2022)が提案した漢字の誤反応分類を応用し,その評価の有用性と障害メカニズムを検討した.症例は70 歳代の右利き男性で,左頭頂葉を中心とする脳腫瘍により失書を呈していた.症例は,文字想起困難に加えて,漢字の細部における多様な誤反応を認め,純粋失書と失行性失書の特徴が混在していた.分析の結果,初期では「字画の誤り」が多かったが,回復が進むにつれその出現率は減少し,「部首の誤り」「無反応」の割合が若干増加した.このように,この分類法は本症例の誤反応を詳細に把握する際に有用であったが,失行性失書の障害メカニズムを説明するには,現行の認知モデル上に補足が必要であると考えられた.

特別寄稿
  • 柴本 礼
    2025 年 30 巻 p. 27-52
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/28
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    20年以上前の43歳の時に私の夫はくも膜下出血を起こし、命は助かったものの、重い高次脳機能障害が残った。リハビリと職業訓練を受けて発症から2年4か月で障害者枠で就労、社会復帰を果たした。けれど重い記憶障害という顕著な症状のほか、感情コントロールができず作話もあることで、周囲に迷惑をかけてしまうため、自由に行動できていないし、病識がない本人もそれを問題だと思っていない。でも私は、夫が理解あるぬるま湯的狭い世界で生きていられることに感謝しつつも、社会全体がこの障害を理解し支えてくれることを望む。そうすれば夫はもっといきいき自由に行動できて障害症状も改善されると信じるし、それが夫をはじめとする高次脳機能障害者の幸せであると信じる。そして何よりも、当事者へのサポートやこの障害への世の中の理解や支援の不足により疲弊している家族(ケアラー)への支援が、もっと進むことを願う。

原著
  • ―麻痺肢の運動と鏡を用いた視覚的な運動の確認を行った2症例―
    中井 俊輔, 磯野 理, 掛川 泰朗, 大野 泰輔, 田中 寛之
    2025 年 30 巻 p. 53-75
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/18
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    片麻痺に対する病態失認(anosognosia for hemiplegia)は自身の運動麻痺を否認する症状と定義される。多くは右半球損傷後の急性期に生じ自然回復するが,病態失認が慢性化しリハビリテーションを行う上での阻害となる場合もある。しかし、病態失認に対し簡便に実施できる有効な介入手法は確立されていない。今回,重度の左片麻痺・半側空間無視に加え,片麻痺に対する病態失認が残存した慢性期脳血管障害2症例に対して,麻痺肢の運動のみ(方法A),非麻痺肢の運動と鏡を用いた視覚的な運動の確認(方法B),麻痺肢の運動と鏡を用いた視覚的な運動の確認(方法C)の3方法での介入を試みた。結果,2症例ともに方法Cを実施した際に明らかな病態失認の改善を認めた。鏡を用いて麻痺肢を視覚的に確認した上で麻痺肢の動きを促す方法は,片麻痺に対する病態失認を改善する可能性がある。

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