片麻痺に対する病態失認(anosognosia for hemiplegia)は自身の運動麻痺を否認する症状と定義される。多くは右半球損傷後の急性期に生じ自然回復するが,病態失認が慢性化しリハビリテーションを行う上での阻害となる場合もある。しかし、病態失認に対し簡便に実施できる有効な介入手法は確立されていない。今回,重度の左片麻痺・半側空間無視に加え,片麻痺に対する病態失認が残存した慢性期脳血管障害2症例に対して,麻痺肢の運動のみ(方法A),非麻痺肢の運動と鏡を用いた視覚的な運動の確認(方法B),麻痺肢の運動と鏡を用いた視覚的な運動の確認(方法C)の3方法での介入を試みた。結果,2症例ともに方法Cを実施した際に明らかな病態失認の改善を認めた。鏡を用いて麻痺肢を視覚的に確認した上で麻痺肢の動きを促す方法は,片麻痺に対する病態失認を改善する可能性がある。