2011 年 16 巻 1 号 p. 62-70
高次脳機能障害者のグループで展望記憶訓練を実施した。参加者を展望記憶能力Prospective Memory Ability(以下PMA)の観点から3群に分類した。PMA重度障害をⅠ群,中等度障害をⅡ群,軽度障害をⅢ群とし,認知機能,ADL,メモリーノート活用度を3群で比較した。Ⅰ群は,MMSE,BADS「修正6要素」,FAM,メモリーノートの活用度がⅡ群に比べ有意に低く,Ⅱ群は,RBMT,RBMT「持ち物」,BADS「修正6要素」,FIM認知,FAMの成績がⅢ群よりも有意に低かった。RCPMとRBMT「用件」は,3群間で有意差がなかった。展望記憶課題の誤反応では,Ⅰ群は内容想起,Ⅱ群は存在想起の誤りが多かった。以上よりⅠ群は事象ベース課題からはじめ記銘を強化すること,Ⅱ,Ⅲ群は時間ベース課題で訓練し,自己洞察を高めメモリーノートや補助器具の活用を促すことなどが重要であると考えた。