抄録
プレテンション方式による, プレストレストコンクリート部材は一般に蒸気養生を行うことが多い。この場合, 養生中に緊張端部でPC鋼材が破断したり, 導入プレストレスの損失が生ずることがある。しかしながら, これらに関しての研究や検討は数少なく, 製作計画の段階で十分考慮されていないのが現状である。
著者らは, 蒸気養生を行った工場生産のプレテンション方式によるプレストレストコンクリート部材を製作するに際して部材製作時, 養生中のPC鋼材緊張力と導入プレストレスを測定した。測定結果より, 緊張端露出部のPC鋼材緊張力は養生温度の降下に伴い増大し, プレストレス導入前では初期緊張力に対して約12%増加した。また, 導入プレストレスは蒸気養生の影響により, 8℃の温度上昇で1%程度の損失量が生じた。これらについては, 蒸気養生条件, PC鋼材とコンクリートとの付着時期等を考慮した推定式による解析でも, 測定値と同様な結果が得られた。
この結果, プレテンション方式によって, プレストレストコンクリート部材を製作する場合, 養生条件によってはPC鋼材の初期緊張力を鋼材許容引張力より多少低減して設定するか, あるいは経済的な範囲で露出部のPC鋼材長さのコンクリート部材長さに対する比 (l/L) を大きくするような製作計画をたてる必要があることが明らかとなった。