イオンビームの軌道を静電場のみで制御して周回・蓄積する静電型イオン蓄積リング(ここではE-ring と略記する)の出現から約15年が経過した.既に世界で5台のE-ringが稼働しており,さらにいくつかの新規E-ringの製作が進んでいる.本稿では着実な広がりを見せているE-ring実験について,その概要を解説するとともに,首都大においてリング製作から現在に至った経緯を振り返る.ただし後者には多分に個人的な感想が含まれていることをご了承いただきたい.なお続編では,現在首都大はリングで中心的な課題となっている,分子イオンのレーザー合流実験の解釈について詳しく紹介する予定である.