トリウムの同位体トリウム229には,エネルギーがわずか8.4 eV(波長に換算すると148 nm)の原子核励起状態(アイソマー)が存在する.トリウム229の原子核は,基底状態とアイソマーの間の原子核遷移を使い,直接レーザー分光できる.その応用の1つとして注目されているのが,この原子核遷移の共鳴周波数を基準とする原子核時計である.原子核遷移の共鳴周波数は環境の影響を受けにくいため,原子核時計は既存の原子時計を上回る正確さ(確度)を実現できると期待されている.本稿では,トリウム229を使った原子核時計研究の現状を概観し,理化学研究所で行っているイオントラップ型原子核時計の開発について紹介する.