2024 年 21 巻 1 号 p. R001-
多原子分子の光化学反応では,ほとんどの場合,様々な核配置でポテンシャル曲面の交差(円錐交差)と非断熱遷移が起こるため,その反応経路や分岐比を理論研究だけで予測することは困難である.したがって反応過程の全貌を実験的に観測することは,光反応機構の解明において非常に重要である.我々は極端紫外光(21.7 eV)をプローブ光として応用した時間分解光電子分光実験(EUV-TRPES)を実施し,気相有機分子における光反応ダイナミクスの全容解明に取り組んだ.EUV-TRPESでは,電子励起された分子が円錐交差に到達して電子基底状態へ内部転換し生成物を形成する,一連の光反応過程をリアルタイムに観測することが可能である.