近年,公共による自然災害の被災者への個人的補助の拡充と,災害保険の機能の向上が同時に進行している.本研究では災害リスク下の家計の動学的消費モデルを定式化して,代表的な住宅再建支援制度の下で家主が災害保険に加入する誘因や,被災後の居住地選択,持家・借家選択について分析した.分析の結果,住宅再建補助は低年齢の家主によって利用され,家賃補助は高齢の家計に適用されることがわかった.また家賃補助の一部は最終的に借家の家主に帰着することがわかった.よって賃貸住宅を再建する最も低い年齢層の家主は,住宅再建補助と家賃補助の双方の利益を得る可能性がある.また,住宅支援制度は被災地からの人口流出を抑止する効果をもつ.その一方,住宅再建補助は災害保険行動に負の影響を与えることが確認された.